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神様の我儘と現状の確認

乙女ゲームの世界で無事エンディングを迎えたら、心臓を奪われて剣と魔法のファンタジー世界に強制召喚された。


今は、『魔王退治の勇者』という言葉に浮かれて世界を救うと息巻いたバカ女とその取り巻きについていかず、この世界に俺たちを呼んだ神様と対峙している。


「さぁ、何を聞く?何を知りたい?」


油断させるためか子供の姿だった神様は、今は俺と同じぐらいの十代半ばの姿になっている。


「まずどうでもいいことだけど、なんで今姿変えた?」

「正直大した意味はなかったんだけど……気になるなら戻そうか?」

「いや、別にどうでもいいな。それより聞きたい。……もう、帰れないのか?」


脳裏に浮かぶのは、血塗れの婚約者の泣き顔。逆ハーレムなんてくだらないものに、強制参加させられたせいで辛い思いをさせてしまった愛しい少女の姿。

ゲームがエンディングを迎えたら、今までの分を取り返すために思い切り愛するつもりだったのに。

そんな思いを、神様は軽く手を振って笑う。


「無理無理。あっちの世界じゃもう死んでるしね~体も魂もこっち持ってきちゃったしぃ」


まぁ、彼女の目の前で心臓を抉られたのだ。あれで平然と生き返ったら奇跡を信じるより先に怖すぎる。

死んでしまったなら仕方がない。そう思って深々と溜息を吐いて、寂しさを紛らわせた。


「……あれ?怒らないの?」

「……怒っても、しょうがない。できないことをネチネチ言うより、やることがある」


愚痴りそうになるが、不思議そうにしているお元凶にはあまりそういうのは見せたくない。それでも、分かっているのか笑みを深める。


「うんうん、いいねいいね。それで?他には?」

「……あの球、どれくらいで壊れる?」

「うーん…物理攻撃なら、どれだけやっても壊れないけど、魔法なら真中級魔法で壊れちゃう♪」

「真中級…ちなみに、この世界の魔法のランクは?」

「初級、中級、上級、(しん)の初級、中級、上級、(てい)の初級、中級、上級」


物理はともかく、魔法的にはそこそこの強度しかないらしい。恐ろしい事実を聞いてしまった。

重要なことだけど。


「この世界、長命種族とかいるか?」

「長命って言っても、200年ぐらいのエルフやドワーフ、500年ぐらいのドラゴンがいるだけだよ。これ、必要な疑問?」


神様は首を傾げて聞いてきたが答える気はない。

不老不死、ということは、心臓が壊れない限り、老いず死なずだ。度が過ぎれば迫害されるかもしれない。死なないと分かれば心臓を捜されるかもしれない。自分たちの弱点を、逆ハーレム連中(あのバカども)がベラベラ話されたらそれもあり得るのだ。

心臓なしで動き回って何度でも復活する、強大な力を持ったバケモノ。

そう認識されてしまえば、魔王退治の勇者なんて紙屑みたいな肩書きだ。


…そこで、はたと疑問がわいた。胸が空っぽの俺たちは、生きているって言うんだろうか。

自らの身に体温はあるし、血の巡りも感じる。


「なぁ、不老不死って、餓死とかするのか?」

「死んだら、死に戻りだね!!」


何故かサムズアップでいい笑顔で言われた。

……よく考えればそうだった。不老不死(・・・・)って言っても、死んだら教会で蘇生されるって言ってんだから、厳密には不死じゃない。何回でも死ねる(・・・・・・・)だけだ。


「きみたちの身体について以外に、聞きたいことはある?」

「……魔王に、何やらせてんだ?」


魔界(笑)から来た魔王が現れたとしか聞いてないからな。この神様の自作自演の魔王と勇者だが、魔王の方は何をしているのだろう。


「んー魔王もね、適当な世界から引っ張ってきたんだけど~…今のところ、存在するだけで人々の負の感情を固めて、魔物を際限なく一定数湧かせる設定。一応、魔物と意思疎通可能っていうチート能力あげてるから、その気になれば世界征服とかやってくれるんじゃない?」


こっちもこの胡散臭い神様の犠牲者だと知り、見たことない魔王に心の中で合掌しておく。


「じゃぁ、魔王がいるから魔物が生まれる?」

「自然発生の魔物もいるよ?魔力溜まりの影響を受けてい生まれた生き物と、魔力溜まりそのものが固まって生まれた生き物。あと、魔王が倒れて負の感情でできた魔物が消えれば、世界に負の感情が漂って災害が起こり易くなるね」


聞けば聞くほどやる気をなくすような話だ。

何故か。神様が「次は次は?」と言わんばかりの顔で周りをうろちょろしてるのは、指摘するべきだろうか。


「えぇっと…魔王って俺たちとは」

「全然違う世界の人かな、きっと!」


自信満々に定かでないと言われた。適当にやってるから把握してないんだろうな。


「元の世界でも魔法ってあったけど、こっちの世界でも法則として同じ?」

「そーだねー。魔力と、イメージで世界の理に触れる。そんな感じ?」

「ゲームの定番、アイテムボックスない?」

「あるある!無属性魔法だよ。転移魔法も無属性。一般的じゃないけどね、無属性」


正直、聞くことが底を尽きつつある。


「どうして俺にそんなに教えてくれるんだ?」

「きみって面白そうだから。この世界に降り立っても、ずっとボクを楽しませてくれそう♪」


神様はどれだけ暇なのか。退屈していたらしい神様の暇つぶしは、世界規模の災害とか迷惑過ぎる。


「世界のどこかに自分の心臓があるんなら、出会ったらどうしたらいい?出会ったら最後、不老不死じゃなくなるとか?」

「まっさかー。さすがに見つけただけなら、そんなことにならないよ。ちゃんと隠しておこうね!」

「……それじゃ、最後に。心臓を身体に戻すにはどうしたらしい」


その質問に、神様はすっと表情を消した。途端に、威圧するように空気が重みを増す。


「……そんなことしたら、不老不死じゃなくなるよ?死んでも復活できなくなるよ?」

「方法は、あるんだな」

「何が不満なの?心臓はちゃんと見つけて隠したらいいじゃないか!年は取れないけど死なないし、死体とは違って、普通に子供も作れるよ!ずっとボクを楽しませてよ!!」


最後が、本音だな。途中で死んで見るものがなくなるのが嫌らしい。というか、ここまで必死ってことは、あまり干渉力はない神様なのかもしれない。前の世界みたいに、頭痛でもなんでも起こさせて行動を縛ることはできないらしい。


「でも」

「やだ」

「戻し方だけでも教えてくれ」

「教えたらやるんだろ!」


ずいぶんと人間臭い。こっちが素かもしれない。


「うっかりでやっちゃったらどうすんだよ」

「………ほんとに、やらない?」


今更、あざとい仕草で懇願されても何とも感じないが。てゆーか、最初からこいつのあざとい仕草は胡散臭い。


「やらない。心臓もどこにあるかもわかんないのに」

「んー……じゃあ」


渋々と教えてもらったのは、色んな意味で難しい。


一、心臓の宝石を左胸に押し当てる。

二、魔力の90%を心臓に込める。

三、力一杯心臓を胸に入れる。


うっかりやらないかもしれないけど、自分の意思でやるとした結構な決意が必要になる。

大体、魔力の90%を使うとかなりの眩暈と頭痛で立つのも辛い。

力一杯入れるって、要は石で胸を突き破れってんだろ?かなり、怖い。


「気になることは終わった?」

「そうだな。あとは、自分で調べるよ。色々ありがとう、神様」


この、何故か俺にご執心の神様は、心臓を戻す方法を吐かされてちょっと不満そうな顔をしていたが、軽く微笑んで礼を言えばニヤニヤとした笑みが復活した。


「ずいぶん時間経ったな。大丈夫か?」

「うん。他の4人より数秒遅いくらいに出ていけるよ。いってらっしゃーい」


大きく手を振ってくる神様に苦笑して、扉を潜った。







一瞬、眩い光に目を細めると、すぐに光は消え失せる。

目を開けると、そこにはちょっと想定外の光景が広がっていた。

召喚陣の上に立っているのはいいとして、勇者を出迎えるのがお姫様ではなく王子様なのはどうでもいいとして。周囲に居並ぶ魔法使いっぽいローブ姿や騎士らしき全身鎧はいいとして。




……なんで、王子様が、うちの毒花に求婚してんだよ。

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