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冒涜的で神話的な  作者: 瀬川ほむ
1/1

プロローグ

夢をみた。

君が泣いている。俺はもうダメなんだ。

見たらわかるだろ、もう血だらけなんだ。

もう助けなくていい。逃げろ、俺は


君には生きていて欲しいから。




「っ…!」

目が覚めた。とっさに自分の身体が無事か確認する。とても嫌な夢だった。

周りは火に囲まれ、今にも崩れ出しそうな建物の中。俺は女の子の腕の中にいた。

肩まで伸びた綺麗な黒い髪。整った顔立ちも涙と煤で乱れている。

体を動かそうにも力が入らず、ただ彼女の泣き顔を見つめていた。

声を出そうとしても、俺の体はどうしようもないくらいに動かなかった。

自分の身体を見ると、真っ赤に染まっていて血だらけだった。

彼女は俺を抱きしめ、ただ泣き叫んでいた。

本当に嫌な目覚めだ。自分が死にそうになる夢を見て起きるっていうのは心臓に悪い。

ドクンドクン音を立てる心臓を落ち着けるように深呼吸をする。


なんとか人心地ついた。

携帯で時間を確認する。時刻は7時20分、普段より10分ほど早く起きてしまった。

アラームが鳴るより早く目覚めると、少しだけ損した気持ちになる。

そう考えながらベッドの中でうだうだしていたくなるが、今日は用事がある。

まずは目を覚まさねば。

ベッドから出て洗面台に向かう。この呆けた頭を起こさねばどうにもなるまい。

冷たい水に身を震わせながら、朝の身支度をした。


--------------------------------------------------------------



コーヒーの匂いと、パンの焼けた香りが部屋に広がる。

『それでは、本日の天気予報ーー』

テレビを横目で眺めながら、トーストにバターを塗る。残念ながら今日の予報は雨だ。今日は一件依頼が入っている。雨の日なのに仕事をしなきゃいけないのは少し憂鬱な気持ちになる。はずだが、今日の俺は依頼が楽しみだった。

ひと月前に独立して探偵事務所を開いたものの、なかなか目ぼしい依頼は訪れていなかった。しかし、今日の依頼はどうだろうか。

世田谷の高級住宅街に依頼人がいる。ということは、報酬もそれなりに弾んでくれるに違いない。例えそれが、猫探しや浮気調査だったとしても、それなりの期待ができるのである。後者に至っては数十万の儲けが期待できるかもしれない。

そう考えるだけで自然と笑みがこぼれていく。

気分がいいと、いつものトーストもどこか美味しく感じられた。


朝食を終えて片づけをする。もう4月になったとはいえ、肌寒い日が続いている。水道の水も刺すような冷たさで一瞬びくっとしてしまう。

早くもう少し暖かくなってくれないものだろうか。俺は寒いのは苦手なんだ。

片づけを終えて、時間を確認する。

時刻はもう9:00になろうとしていた。依頼人との待ち合わせは10:00。事務所から依頼人の家までならまだ余裕はある。しかし、遅刻をして依頼キャンセルになんてなったら目も当てられない。

そう思うと、急いで準備をして早めに出なければいけない気がした。スーツにコートを羽織り、携帯とサイフと仕事道具の入ったカバンと傘を持って家を出た。


外に出ると思ってた通りの気温だった。コートを羽織っていてもまだ若干肌寒いくらいの寒さ。雨はポツポツと降りしきり、人々の傘や足元を濡らしてゆく。辺りには雨音とピチャピチャ水溜りの跳ねる音が静かに響く。街行く人はコートやマフラーに身を包み傘を片手に小走りで地下鉄に向かっている。

寒さにこの雨だ、無理もない。

俺はそれに習うように地下鉄に向かった。

地下鉄の中はいつもより人が多かった。大体2割増しというところだろうか。雨の影響で電車を利用する人が増えていたらしい。やはり早めに出て正解だった。

傘をビニールの傘入れに入れ、人込みを器用に抜けながら世田谷方面の地下鉄に乗る。

とりあえず目当ての車両に乗れた。この分なら何事もなければ、まず遅れることはなさそうだ。



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