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吁、無情  作者: 調彩雨
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第三話 皆死ねば良いのに

卑屈主人公vs春田二佐

対面の会話ばっかで申し訳無いです




「世界とか、救ってみない?」


 とか、突然言われてもね…


「は?何でわたしが?」


 としか答え様が無いだろうが歯牙しが無い一般ピープルにはよぉぉうぅぅ!!


 何で、と言うか、如何やって!?

 自慢じゃないが取り柄無いぞ、わたしは!!


 思わぬ事態に内心エマージェンシー。でも、ちゃっかり外面ではトンデモ発言をした相手を睨むと言う。


 トンデモ発言の主は、鉄面皮だった。


「平たく言っちゃうと、いけにえ、なんだけどね」


 わぁ、ぶっちゃけたよコノヒト。


「何でわたしなんですか?」


 日本役立たずランキングに、上位ランクインでもしたと言うのか。


 胡乱な視線にも屈しない、鉄面皮。


「否、敵さんが、君を寄越せば平和協定結んでも良いって言って来たんだよね」

「はぁ?何でわたし?」


 目立たない事、路傍ろぼうの石の如しだぞ、わたしは。


「萩沙ちゃん、言葉(はし)は変わっても、先刻さっきから言ってる事変わんないよね、其」


 悪かったな。此方こっちは内心混乱してるんだ。


 だって訳がわからない。女優やモデルばりの美女なら兎も角、わたしなんて褒められる所と言ったら髪位、しかも其の髪だって中の上程度の域を抜け出ない、十人並以下のブスで性格悪くてしかもデブ…


 はっ、デブっ!?もしや、


「もしかして、肉っ!?肉狙い!?極上霜降和人(しもふりわじん)だと思われてる!?そりゃ、丸々えて美味しそうかも知れないけど、贅肉質で柔かそうかも知れないけど、和牛やイベリコ豚には負けるでしょ!?人肉って不味いって聞くし。あぁ、でも、其意外にわたしが選ばれる理由なんて…。まさかそんなぁ…」


 そんな事ならもう少しダイエットしとけば良かった。

 がっくりとうなだれたわたしに混乱の元凶はぽかんとして、直後吹き出した。


「っくく、自分否定し過ぎじゃないの?其。少なくとも、僕は結構可愛いと思うけど、萩沙ちゃん」


 チャラいチャラ過ぎる十○石まんじゅう。

 爽やか笑顔がとっても素敵です。が、アンタ会う女全員に言ってるだろソレ。

 はぁ…と溜め息が漏れた。


「ミニブタかトド的な感じで?」


 チャラ男と女と美容師が口にする、カワイイは信じません。


 先刻迄の鉄面皮が、嘘みたいに笑ってやがるしね。誰が信じるか。


「ぷっ、否、そんな事…」

「カピバラって言ってくれたら喜びますよ。パンダは食肉目なので却下です。小動物って言うのは御世辞丸出しなので信じません」


 わたしに向かって小動物とか、厭味だろ。はっきりミニブタそっくりだと言えば良いさ!!


 やぐされて来たわたしに、未だ笑いが収まらない失礼な男が目を向ける。


「あー…、好きなの?カピバラ」

「はい。可愛いですよねー、一匹欲しい位ですよ」


 否マジで。リアルに一匹欲しい。養える度量が無いから、無理だけど。


「確に、似てるかも。一匹欲しい」


 漸く笑いを噛み殺した男がわたしの頭を撫でた。

 大きい手だ。羨ましい。


「ああでも、カピバラはこんなに撫で心地良くないよね?萩沙ちゃんの方が可愛いかな、やっぱり。僕、女の子は抱き心地と撫で心地重視だから、ツボだなぁ、萩沙ちゃん」


 髪の手触りは昔から褒められますからね。贅肉質な身体も揉む分には最高でしょう。


 で、結論から言うと、


「やっぱり肉目当てじゃないですか。そうですよ、抱き枕には最適ですよ此の素敵なマシュマロボディ。彼女にはしたくないけど触る分には気安くて和む。珍獣的な」


 折角噛み殺したと言うのにまた笑う。良く笑う人だ。


「だから何で自己評価そんなに低いの。可愛いなぁ、もう」


 殺したくなくなっちゃうじゃん。


 良く笑う男はわたしの頭を撫でながら物騒な事を呟いた。


 犠って、やっぱり死ぬのか。


「えぇ、是非。わたし、死ぬつもり無いので。良いですか?ブスでもデブでも生存権は保証されて居るんですよー。あー、日本が功利主義社会じゃなくて本っ当に良かった。ブスは目障りだから死ねとか言ったら人権団体から苦情来ますもんねー。貴方達は何か其成の事情作んないとわたしを殺せない。ですよね?」


 事情なんて簡単に造れるだろう。

 そう思いながら私は笑った。美女なら兎も角ブス一人死んで世界が救われるなら安いものだ。…皆死ねば良いのに。


「犠って言っても、死ぬかはわからないんだけどね。彼方さんは、君を寄越せとしか言わないし。案外、妻に、とかかもよ?」

「其こそ、何で私ですか」


 脅すんだ。選び放題じゃないか。

 選り取り見取りの中選ぶには、趣味の悪い物件だぞ。


 何だ。相手は三十路マニアの処女厨か。

 なら母数が減って確率が高まるが、にしたって、其の中でもわたしより増しな奴は五万と居るだろう。

 美人の三十路ヴァージンとか、都市伝説級かも知れないけど。わたしより美人にランクを下げれば、幾らでも見付かるはず。未婚化晩婚化、進んでるし。


「其がわかったら苦労しないよ。彼方さんの望みがわからないから、此方は交渉に苦労してるんだ」


 其で良いのか、日本代表。


「向こうの思惑が読めないとか、下手したらわたし犠になったとしても無駄死にかも知れないじゃないですか」

「まあね」


 あ、アッサリ肯定しやがったぁぁぁぁ!


 何なんだ。何なんだ此の男は!わたしの命を何だと思ってるんだ!!


 言葉を失い、はくはくと口を戦慄わななかせるわたしに、目の前の男は軽く問い掛けて来た。

 お茶のおかわり要らない?位の、軽ーい口調で。


「で、萩沙ちゃん、世界を救う気無いの?」

「有る訳無いじゃないですか」


 馬鹿か?馬鹿なのか!?ねぇ、馬鹿なの?


 救える保証も無しに、誰が命を散らすって言うんだ。


「と言うか、ですね」


 わたしは溜め息を吐いて首を振った。無駄に爽やかに笑って青空背負(しょ)ってる鉄面皮、滅茶苦茶むかつくんだが、如何すれば良いんだろう。


「其方が世界の為ならわたし如きの命なんて塵ほども重要視して居ないのと同じ様に、わたしもわたしの世界の其の他大勢なんて、どーでも良いんですよ」


 わたしが死んでも何も改善されなかったなら、別の方法を探すのだろう。


 目の前の男、いーや、日本政府にとって、わたしは数多在る捨て駒のひとつに過ぎないんだ。

 まあ、存在の無価値さについては、否定する言葉も無いけれど。


 わたしは微笑んで、ひととして間違っているで在ろう言葉を吐き出した。


「わたしと関わりの無い所で誰が死のうが何が消えようが関係在りません。わたしは自分が生きてれば其で良いですよ」


 世界なんて知った事か。自分以外の為に犠牲になるなんて、馬鹿気ている。そんな奴はアホだ。ボケナスだ。


「世界の平和を守るのは、わたしの役目じゃないでしょう。交渉役って言いました?高い給料貰ってるんでしょう?エリートなんだから、わたし如きの手なんか借りずに平和位勝ち取って下さいよ」


 彼に逆らう事は、職を失う可能性をはらんでいるけれど。


 死ねと、言われたんだ。


 自分の命を天秤に掛けて、重さで勝るものが果たして在るだろうか?


 少なくとも、わたしは、持っていない。

 寂しい人間だと笑うなら、笑えば良い。


「如何しでもって言うのなら、交渉人らしく、わたしが死ぬに足る理由を用意して来て下さい」


 内面は兎も角、外面は平静を装って、わたしはきっぱりと言った。






拙いお話をお読み頂き有難うございます


ちょっと書いてても苛っとする位の卑屈主人公ですが

温かい心で見届けて頂けると嬉しいです

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