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吁、無情  作者: 調彩雨
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第二話 世界とか、救ってみない?




「萩沙ちゃんって、現状についてどれ位理解してる?」

「知らない人に脅されてます」


 わたしに抵抗の意志を失わせてから、知らない人は手を離した。

 …暫く知らない人扱いしてやる。


「脅してないよ…じゃなくて、世界情勢と日本の現状についてさ」

「ウチ、テレビ無いんですよねー。新聞もとってないし」


 此の前ふと気付いたら首相が変わって居て驚いた。役職変わると引っ越しとか、大変だよねー。政権交代後とか、ちょっと荒らして引っ越したりしないのかな。地味に、こう、多分入るで在ろう清掃員さんとかに気付かれない程度に何か。コンセントの穴にガム詰めとくとか。


 テレビ無いよ宣言に、心底驚いた顔をされた。否々、本当に無いし。此のテレビっ子め。


「えっと…、地球外生命体からの侵略を受けてるってのは、知ってるよね?」

「えぇー?そうなんですかぁ?こわぁい」


 其処は彼と無く、阿呆っぽく。


 にこにこ。


 ええ。もの問いた気に見詰められても、気にしませんとも。


「…萩沙ちゃん、怒ってる?」

「えぇー?何でですかぁ?何かぁ、わたしが怒る様な事ぉ、したんですかぁ?」


 にこにこ。


 知らない人が、額を押さえた。


「脅してごめんなさい…」

「えぇー?脅しぃ?何の事ですかぁ?わたしぃ、わかぁんなぁい」


 にこにこ。


 因みに、口調は妹の真似っこ。我が妹ながら、もう少し頭良さ気に喋れないのか。まぁ、阿呆の子の方が可愛くてモテるのかも知れないけど。身内ながら、妹はまあまあ可愛い見た目してるし。わたしと違って体重軽いからね。


 知らない人が、困って居る。


 潮時かな。


「で、地球外生命体の侵略が如何かしましたか」


 笑顔を消して溜め息一つと共に問い掛ける。


「あ、普通に対応してくれるんだ」

「下手に反抗して仕事干されても困りますから。此方、人生掛かって居るもので」


 にっこり。


 怒ってるかって?当たり前じゃないですか。

 目の前の男は軽々しくわたしの人権に抵触したんだ。


「逆らいませんよ。脅して其を求めたのは其方でしょう。仕事よりも大事なものを差し出せと言われない限りは逆らいません。脅されて、泣き寝入りです」


 笑やかーに、平坦な声で。

 此で激昂されてクビルートも有り得ると言う事には、目を瞑った。せめて少しの、意趣返しはしたい。


 知らない人は、眉尻を下げて苦笑した。


「ごめん。迂闊だった。話さえ聞いてくれれば、後の判断は君に委ねるから。受けようと、受けまいと、其で萩沙ちゃんが不利益を被る形にはさせない。軽々しく君の尊厳を損なう様な事をして、申しわk」

「謝罪なら、お断りします」


 知らない人の言葉を遮り、頭を下げるのを留めた。


 無意味な謝罪は、わたしにとって、意味が無い。


「聞かない、と言う選択肢を与えない時点で、わたしの自由は奪われて居るんです。謝罪するならば態度で。其が出来ないならば、自己満足の免罪符を与えるつもりは在りません。不快です」


 わーお、我ながら、性格悪いな。

 彼は単純に、申し訳無く思っただけかも知れないじゃないか。


 苛立つと、深く考えもせず無意味にひとを傷付ける。悪い癖だ。直らないし、直そうともして居ない。


「其とも、聞かずに戻って、良いんですか?」


 ほら、性格悪いとか思いながら、言葉を心に留めないのが、良い証拠だ。

 根っからの、悪人なんだろうな。


 しかも、臆病者なのだ。目の前の人間がわたしに対して怒らないで在ろう事を見越して、こんな態度を取って居る。

 何とも、卑怯な、子悪党。


 案の定、目の前の男は困った様に頬を掻くだけ、だ。


「聞いて貰わないと、僕が困るんだよね」

「なら、とっとと済ませて下さい。此方だって、仕事の合間なんです」


 わたしが居なくても研究は回る。

 席を外して居る現状への、恐怖。

 戻った時に、わたしの役目は残って居る?


「うん、ご…じゃなくて。さっさと話すね」


 知らない人のくせに、気を遣って謝罪を留めた。

 考える様に右手の人差し指を顎に触れる。


「僕は、地球防衛軍日本支部本部の春田章彦で、階級は二佐だって名乗ったけど、地球防衛軍で二佐ってのは、まあまあ上の役職でね、特に僕は本部所属なだけ在って、重要な職務なんかも回って来る」


 …いきなり何だ。自慢か。其ともわたしが頑なに知らない人扱いしてるのに気付いたのか。


「自慢ではないよ。まあ、エリートなのは否定しないけどね。うん、萩沙ちゃんには気軽に、あっきーって呼んで欲しいかな」


 エスパーか。そうか、エスパーなのか。


 ちょっと、ドン引いたじゃないか。


「…ハルタニサの職務とか、興味無いんですけど」

「萩沙ちゃんって毒舌だよね!」

「無駄話するなら他当たって欲しいんですけど」


 苛立って来ましたけど、何か。

 と言う目を向けたら、ハルタニサは苦笑を浮かべた。何て言うか、大人が、ちっちゃい子を見る様な?

 悪かったな、程度が低くて。


「此からの話が、僕の職務に関係するんだよ。今の仕事ね、日本の代表として、侵略者さん達と交渉する事なんだ」


 そーゆー機密事項的なヤツを、聞きたくなかったんだよぉぉぉぉおっ。


 思わず、全力で頭を抱えたね。うん。


 笑うな。其処の知らない人っ。


「…あれぇー?おっかしいなぁー、とつぜん、みみがきこえなくなったわぁー」


 頭を抱えつつ、空しい抵抗をば。


 無駄だけどね!!


「聞こえないなら、筆談する?」


 お前絶対今、草生やしてるだろ。正確に書いたら、聞こえwwwないならwwww筆wwwww談wwwwwwするwwwwww?wwwwwwwwだろ。

 むっちゃ草生えてるじゃんか!!馬鹿にしてるんだろ!!!


「否、ちょっと、病院行きたいんで、お暇しても?」

「うん。聞こえてるね!」


 やばいわー。お前等の草で前が見えない。一人しか居ないけど。


「…話、進めて貰えます?」


 駄目だ、余計な事してると時間が浪費されてくわ。大人しく聞いてから華麗にスルーしないと。

 誰が脱線させてるかって言う突っ込みは受け付けない。受け付けないからねっ。


「あー、うん。兎に角、僕と後何人かが、日本からの交渉役を受け持ってるんだよね。んで、彼方さんから、ちょっとした提案が在りまして」


 目の前の男は、不意にわたしの顔を上げさせた。両頬に添えられた手が、抵抗を抑え込む。


「其に関する事で、僕から萩沙ちゃんに、一つ提案が在るんだ」


 にっこりと、白々しい位爽やかな笑顔で。


 彼の背後に見える空も、嘘臭い位爽やかに晴れ渡って居て。


 わたしの前に突然現れた其の人は、極々軽い口調で言った。現実味なんて、少しも感じなかった。


「ねぇ、萩沙ちゃん。君、世界とか、救ってみない?」






拙いお話をお読み頂き有難うございます


今の所恋愛要素皆無ですが

今後ちゃんと入りますので

続きも読んで頂けると嬉しいです

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