第十六話 あー、うん、知ってた。
自傷よる負傷描写が有ります
苦手な方、嫌悪を覚える方はご注意下さい
あー、うん、知ってた。
近い将来此の日が来るって。
護衛が増えてから初めての休日。
明日も休みなのを良い事に、だらだらと昼近くまで惰眠を貪ってから起き出したわたしは、寝起きから不快な顔を目に入れて、最悪な休日を確信した。
「白波瀬さん、お早うございます。本日護衛を勤めます、佐原一生曹長です」
「お早うございます。同じく、椎垣結那一曹です」
「えっと、お早う、萩沙ちゃん。同じく、夏川晴史二曹です」
「…オハヨーゴザイマス。新木デス」
「新木二曹、フルネームを名乗りなさい」
「…新木、伶デス」
新人ふたり、態度悪いなぁ!!
上官かどうかは知らないけど、階級上のひとが敬語で丁寧に喋ってんのに、其の喋りや態度は、如何言う了見だ。
まあ、別に良いけどね。
「おはよーございます」
佐原さんと椎垣さんにだけ、へらりと笑い掛けて、ぽてぽてとトイレに向かう。
トイレを済ませて洗面所で鏡とご対面。
「うわー…酷い寝癖。どした、此」
右から風を受けて居るとしか思えない頭に、顔をしかめた。
昨日乾かさないで寝たからな…。
面倒だし、しばるか。
手に水を付けて撫でつけつつ、ゴムでひとつに束ねる。まとまりきらずに跳ねる髪は、黒ピンで留めた。
もう少し長かったら、濡れたまま寝てもほぼ跳ねなくなるんだけどな。
短い方が好きなんだから、仕方無い。
顔を洗って化粧水を叩く。眠い。寝過ぎて、眠い。
「で」
鏡越しに目が合った人物に、不機嫌な顔を取り繕いもせずに訊ねた。
先程態度の悪い隊員に注意したのは、背後に立つ彼だ。
「なんで春田さんが居るんですか」
「お早う。萩沙ちゃん」
「…おはよーございます。で、なんで居るんですか」
朝から、否、もう昼だけど、変わらぬ爽やか笑顔だ。
寝ぼけ眼に寝癖頭のわたしとは、大違い。
ミントガムのCMにでも出てれば良いと思う。
「少し、お出掛けに付き合って欲しくてね」
「嫌です」
「良い天気だよ?部屋に籠もってるなんて勿体無い」
其の台詞は選ばれしリア充達の為のものだ。
わたしの様なきのこ系女子(そんなジャンルが在るかは知らない)には、死刑宣告の様な発言だと思う。哀れなきのこに日光消毒を掛けようと言うのか。干からびるぞ。
「…わたし、嫌いなんですよね」
「何が?」
「うるとらばいおれっと」
ほら、略さないととっても悪役な感じ。戦隊ものやライダーものの敵キャラで出て来そうだ。
生きるのに必要なものなのは、理解して居る。しかし、適度で良いのだ。適度で。
真夏の日射しなんて明らかに、紫外線も赤外線も過剰じゃないか。焦げるぞ。
「心配しなくても、UVカットガラスの車で現地迄送迎するし、行く先も屋内だよ」
「なら天気関係無いじゃないですか」
すっぴんの顔を大いに顰めて春田さんの横を通り抜ける。
否、雨の日の外出は濡れるし靴が汚れるから好きじゃない。曇りの日の外出は気が滅入るし、晴れの日の日射しはほんともう、やめて欲しい。
結局外出が嫌いなんじゃないかと言われると其迄だが、別に外に出るのが嫌いな訳じゃない。自分から、能動的に、目的や意欲を持って外出するなら良いんだ。
買い物は趣味だし、旅行も好きだ。オタクと名乗れるレベルじゃないけど、暇な時は無駄に遠回りする路線選ぶ位には乗り鉄だし。どんな天気だろうと、通勤其のものを苦に思った事は無い。
つまり、何が言いたいかと言うと、外出が嫌いなんじゃなくて、誰かに強制されて外出させられるのが嫌いなんだ。
所員旅行とかね。否、普通に猫被って大人しく参加するけどさ。其処等辺は割り切るよ。円満に生きたいからね。
でも、春田さんとのお出掛けに難色を示すの位は、許されると思うんだ。結局逆らえないって結果は見えて居るけど、其でもわたしと言う存在の意思を、示して置きたい。
下手に地球防衛軍関連施設にでも連れてかれて、情報流出されたら堪ったもんじゃないしね。
免責事項的な、狡い保険だ。自分から進んで受け入れたんじゃなければ、何か在った時不満を述べる事が出来る。
うん。我ながら汚い。
「まあ、そうなんだけど、気分的な問題でね。大荒れの天気とかで外出するよりも、からっと晴れた天気の方が、気持ちが良いじゃないか」
「からっと晴れた空から降り注ぐ紫外線が、敵なんですよ!」
ああもう髪纏めちゃったから、髪弄って苛立ちを紛らわす事も出来ない。
頭を掻き毟るって、憤りをぶつけるには平和的で良い手なのに。
春田さんに粗雑に言い返しつつ居間に戻ったわたしへ、敵意の籠もった視線が向けられる。
「何様だよ」
小さな呟きは残念ながらわたしの耳に入った。後ろに続く、春田さんにも。
傷付くより、呆れが勝った。同時に、傷付く自分に自嘲も覚えたが。
「…」
口を噤んで言葉の主、えーっと、名前何だっけ?を、見遣った。
…馬鹿じゃないか?
わたしの内心に気付いたか気付かないか、言葉の主は険を含んだ眼差しで見返して来る。
椎垣さんと佐原さんが、ぎょっとした顔で言葉の主を見た。
夏川晴史が困った顔をして居る。
ふーっと、息を吐いて額に手を当てた。あー…眠い。
其の体勢の儘、ぼそりと呟く。
「…謝罪は要りません」
「あ?謝罪が必要かよ」
誰も見ずに言った言葉を、其奴は自分に言われたと思ったらしい。
…馬鹿だ。間違い無く。
「別に今更地球防衛軍の程度の低さを知らされても、元々評価は底辺ですから。まあ、多少春田さんへの認識が変わる程度ですね。エリート面してるくせに、大した事無いなぁって。謝罪を貰った所で其の認識も評価も変わりませんから、わざわざ無駄な事をする必要は在りませんよ、春田さん」
勘違い男を黙殺して、春田さんに目を向ける。
謝罪を封じられた春田さんが、其でも何か言おうと口を開いた。
「否、」
「言い訳する余地は与えませんと、言って居るんです。ああ、そうですね、春田さんの能力がアレな訳じゃなく、春田さんにとってわたしの重要度が低いだけと言う可能性も在りましたね。済みません春田さん、誤解しました。失礼致しました。にしても、対して価値も無い相手に春田さん自ら時間を割くなんて、暇なんですか。ああ、いえ、暇な訳が無いですね、春田さんは勤勉ですから、些事にも気を配る細やかさがお有りなんですね。流石です。心底尊敬しますよ。ははっ」
ああ。最後の笑いに明らかな侮蔑が含まれてしまった。駄目だな。もっと演技力を磨かないと。
にこにこと形だけ笑みを浮かべるわたしに、春田さんは顔を引き攣らせ、視線を戻した先では佐原さんが頭を抱えて居た。
其の儘場を放り出して、寝室に向かおうとしたわたしを、春田さんが追う。
「萩沙ちゃ、」
「着替えるんですけど。覗きますか」
「あ、否、ごめん。…結那ちゃん」
「はい」
後藤さん、椎垣さん、佐原さん。此の三人は護衛の中でも比較的、春田さんと親しいと言うか、直属に近い部下の位置付けなんだと思う。春田さんから階級無しで呼ばれて居るし、椎垣さんに至ってはちゃん付けだ。
わたしに付いて寝室に送り込まれた椎垣さんが、扉を閉める。
悲しき話ながら最早慣れた状況なので、気にせず着替えを始めた。
「あの…白波瀬さん」
着替えるわたしから視線を逸らしてくれながら、椎垣さんが控え目に呼び掛ける。
「はいはい、何でしょう」
「新木二曹は春田二佐を尊敬して居るらしくて…だから、あの…済みません」
尊敬するハルタニサを扱き下ろし、ぞんざいな態度を取るわたしを見て、腹に据えかねたと言う訳か。
…益々もって、馬鹿じゃないのか。
「そんけーするハルタニサの顔に、泥塗りたくってるじゃないですか」
仮にも護衛対象に、暴言だ。しかも、ハルタニサの前で。
公私も分けられない馬鹿だと、公言して居る様なものじゃないか。
アホらしいので離脱してしまったが、今頃隣の部屋は説教大会になってるんじゃないだろうか。扉の向こうから明らかに、穏やかでない会話が聞こえて来るし。
「済みません。本当に、あの、私達で厳重注意して置けば良かったんですけど」
「…否、何処の園児ですか其」
社会人なんだからTPO位自分で判断しろと言いたい。
着替えを済ませて、適当に化粧もしてしまう。
自分を嫌いな人間とお出掛けなんて御免被りたいけれど、春田さんが強行するならどうせ行く羽目になるのだ。
突っ跳ねられるなら、突っ跳ねて買い物にでも行っても良い。
お弁当を断って、外食しても良いかも知れない。本当に久し振りになるけれど、お菓子でも作るのも悪くない。
…良いな、お菓子作り。クッキー作りたいクッキー。
料理は面倒だけれど、簡単なお菓子作り位なら気分転換になるからたまにやる。
本当に簡単な、クッキーとかチーズケーキとかだけだし、数カ月にいっぺん位の頻度だけど。
何クッキーにしようかな。どうせ材料は全部一から揃えないとなんだから、変わった材料のクッキーでも構わない。アーモンドプードルを買って、スノーボールクッキーを作ろうか。
材料、何が要る?調べないとわからないな。レシピをネットで落として、折角だからカクテルの方のスノーボールも作るかな。アドヴォカート、見付かると良いけど。
まあ、先ずは洗濯、かな。
寝間着を拾って寝室の扉を開ける。
「…」
おお、そう言えばこう言う空気だったね。
殺伐とした空気と向けられる視線を無視して、洗濯機に向かう。
状況を華麗にスルーするわたしに、佐原さんも椎垣さんも何も言わない。うん。慣れって怖いね。
洗濯機が回り始めるのを確認して、パソコンを取り出す。
スノーボール、アーモンドプードル使うレシピ。
ふむふむ。薄力粉150g…あ、卵要らないんだ。バターに、砂糖、仕上げに粉砂糖。
レシピをメモるわたしに、佐原さんが声を掛けて来た。
「白波瀬さん?何やってんですか」
「今日、クッキー作ろうかなぁって」
ふいと顔を上げれば、呆れた様な諦めた様な顔で此方を見て居た佐原さんが、ぽかんと目を見開いた。
「え゛。料理出来たんですか!?」
「…クッキーすら作れない程壊滅的じゃないですよ。此でも飲食店でバイト経験有りますし」
作ってたのは、ひたすらサワーとカクテルだったけどな!
料理だって、レシピを見れば一応或程度のものは作れる。慣れてないからかセンスが無いからか、時間も掛かれば出来もそこそこ以上にならないから、やらないけど。
と言うか佐原さん、其の反応はわたしに失礼過ぎやしないかい。え、じゃなくて、え゛、だったよね?
壊滅的な腕でないだけなので、別に怒りはしないけども。化学実験は問題無く出来るんだから、お菓子だって作れるさ。大事なのは、計量とレシピの遵守だ。
「あ、済みません。料理してる所見た事無かったので、つい」
「レトルトカレー温める位はしてましたよ?」
曖昧に笑う佐原さん。そうだね。レトルトカレー温める、は料理と言わないね、大抵のひとは。
「梨の皮剥きは上手かったですもんね。ナイフで、くるくるって」
「まな板使わないのは、冷や冷やしましたけど」
気を取り直して言う佐原さんに、椎垣さんが同調した。
まな板使わないのは家系。だって、梨一個にまな板出して使って洗うの面倒だし。
皮剥きはまともに出来るのは、皿洗い中の母に代わってデザートの果物を任せられるのが姉の宿命だったからだ。
米すら買わない家に梨が有ったのは、わたしの食生活を心配する父母祖父母が、せめて果物を食えと何かと送り付けてくれるから。
「食卓に良く乗る様な果物の扱いは慣れてるんです。メロンとかパイナップルの解体も出来ますよ」
…一人暮らしなのに大玉スイカ送り付けられたりね。どうしろと。
「パイナップルの解体は凄いですね。って、じゃなくて、なんで突然クッキーを作ろうと?」
「気分転換です」
「さいですか」
佐原さんの目は春田さんに向いて居た。
問い掛けの視線。
白波瀬さんは春田二佐の意向にそぐわず、自分のやりたい事をやるつもりの様だが、良いのか、と。
「萩沙ちゃん、クッキー作りは後日にして貰えるかな?」
「思い立ったが吉日ですよ」
「其は、そうなんだけどね」
困った顔。状況的に強要し辛い、と言った所だろうか。
前もって予定を伝えなかったのは、春田さんの落ち度だと思うし。
クッキーを作りたいのは、明日でも次の休日でもなく、今日なんだ。と、子供みたいな主張をするわたしに、次に声を掛けたのは名前のわからない彼だった。
先刻椎垣さんが言ってた気がするけど、何だっけ。
「春田二佐がご用事が有ると言ってるんだから、大人しく従えよ。ガキか」
「そう言うお前はチンピラか」
あ、やべ。
売り言葉に買い言葉、やっちった。
否、春田さん、そんな、頭が痛そうな顔しないで下さいよ。あ、わたしについてじゃなくて、此のチンピラについてかな?
殺伐とした空気だったから春田さんのお叱りが炸裂したのかと思ったんだけど、チンピラさん、理解出来なかったのかな?其とも、お叱りなんて無かったのかな?
「んだと!?」
「否、勝手にひとの部屋上がり込んで、言い掛かり付けて、893かと。わかる?アナタと違って、わたし、今日、休日なの。仕事じゃないの。脅しに屈してるとは言え、わたしの厚意でアナタ達は護衛と言う名のストーキングが許されてるんだって、理解した上での行動ですか其。わかるかな?アナタ、護衛。わたし、警護対象。護衛を行う上で必要な事以外、従う必要無いんです。もっと正確に言っちゃうと、護衛を行う上で必要な事すら、従う謂われは無いんです。アナタの上司が脅すから、仕方無ーく、従ってるだけでね」
他人に生活覗かれて、着替えすら見られて。不満が無いとでも思ってんのか。
犠に選ばれたなら、受け入れて当然か?春田さんの方がエリートだから、従って当然か?
犠に選ばれた、わたしが悪いか?犠に選ばれただけでわたしが悪者だって言うんなら、犠の選抜基準教えろっつうんだよ!!
「てめぇさっきから何様だよ!!」
「立派なニート予備軍様だよ!!」
「おいっ!?」
チンピラさんの焦った声。視線の先は、腕?
あ。
…否、うん。
あはは。
「ちょっ、何やってんすか白波瀬さんっ!?」
「あー…うっかり?」
「うっかりで自分の腕ぶっ刺さないで下さい!!」
凄い形相で詰め寄る佐原さん。
視線の先、わたしの左前腕、肘近くに、刺さる、シャーペン。
あー、気に入ってたんだけどな、此。
苛立ち紛れに自分の左腕を殴った迄は良い。悪いのは、拳の小指側側面で殴った上に、握り締めたシャーペンのペン先が其処から突き出て居た事だ。
なんで机じゃなくて自分殴った。
うん。こんなの初めて!
どんだけ我を忘れて苛立ってたんだ。鬱屈し過ぎだろ。
「…いたい」
「そりゃ痛いですよ!!ああ、触らないで。兎に角其の儘、抜かないで病院に。春田二佐、車出して!!椎垣、応急セット!大丈夫ですから、ゆっくり深く呼吸して。夏川、近隣の救急病院調べて連絡!」
佐原さんが背中をさすってくれる。
否、自業自得なだけに、申し訳無いよ。
「夏川二曹、妹さんの病院に連絡しろ」
「え」
「…行く事を伝えて有る。今なら院長に対応して貰えるはずだ。場所も近い」
「、わかりました」
行く事を伝えて有る?つまり、今日の行き先は夏川晴史の妹が居る病院だった?
なんで?
と言うか、マジ申し訳無いな。
此の前の脱走も佐原さんと椎垣さんの時だったし、どんだけ迷惑掛けんだ。
「…済みません。なんか、否、自傷とかする気、無かったんですけどね」
何か考えたり、話したりしてないと、ぶっ倒れそうだ。
最悪な休日とは思ったけど、こんな事になるとはね。
こんな怪我は、腹ぶっ刺した時以来だな。
わたしの顔色に気付いたか、応急手当てを施す佐原さんが引き攣った顔で微笑んだ。
「ほんとですよ。殺気とか感じなかったから、止める間も無かったじゃないですか」
「はは。済みません。ストレス貯まると突拍子も無い事するんですよね」
「後藤さんにぶん殴られますよ。此の前、脱走された時だって、実は後で滅茶苦茶怒られたんですからね」
後藤さん。後藤さんが居たら、こうはなって無かっただろうな。
まあ、居なかったんだから、考えても仕方無いけど。
手早く手当てした佐原さんが、そっとわたしの肩を掴む。
「立てますか?病院、行きましょう」
「はい」
其処は気合いだ。
立てなきゃ運ばれる訳で、此の重たい身体を、誰かに運ばせたくはない。
左に佐原さん、右に椎垣さんが付いて、支えてくれる。情け無い。
玄関に出て居た一番履き易そうな靴を、適当に突っ掛ける。
気持ち悪い。眩暈が、する。
腕が熱い。歩く振動が、響く。
痛みを紛らわせる為に、口を開いた。
「腹ぶっ刺した事は、有っても、リスカはした事、無かったんだけどなぁ」
「普通、腹ぶっ刺す前にリスカだと思うんですけどね」
「否、腹ぶっ刺したのは、アレです、知的好奇心」
わたしを支えながら、佐原さんが話し相手をしてくれる。
其成に高さの有るマンションで良かった。エレベーターが有る。
「其の知的好奇心、危な過ぎですから。アレでしょ、白波瀬さん、回ってる扇風機に指突っ込むタイプ」
「否、其処は、ちーかまに、しましたって」
「やったんですか!?つか、食べ物粗末にしちゃ駄目ですよ」
「実験に、使用したちーかまは、白波瀬が、美味しく、頂きました」
マンションの入り口には、既に春田さんの運転する車が待機して居た。
十人乗りのワゴン車だ。テレビのロケとかで良く見る様な、椅子を倒さなくてもどの列も乗れるやつ。
最後尾の四人席に、佐原さんと椎垣さんに挟まれて座った。
続いて、夏川晴史がひとつ前の二人席、チンピラさんがふたつ前の二人席に乗り込んで、車が発進した。
チンピラさん、付いて来るんだ。まあ、そうか。護衛だもんね。
「あー…洗濯物、と、鍵…」
「鍵は閉めて来たよ」
ぼけーっと呟いた言葉に夏川晴史が振り向き、鍵を見せて来た。
護衛が付いた時に作られた、合い鍵だ。
「そりゃ、どー、も…」
あー…眠い。
血とか怪我とか、特に自分から出てるのは、得意じゃないんだよな…。
「白波瀬さん、辛かったら、俺にもたれても、白波瀬さん?」
わたしを呼ぶ佐原さんの声を最後に、わたしは意識を手放した。
拙いお話をお読み頂き有難うございます
タブレットで文章打ってメール投稿して居るのですが
此の話の作成中にタブレットの充電切れで電源が落ちて
作成中文章が一部消えると言う残念な事故が有りました orz
こまめな保存、大事ですね
もし途中で文章が消えてなかったら
萩沙ちゃんは腕ぶっ刺してなかったかも知れないです
うっかり腕ぶっ刺す様な主人公ですが
続きも読んで頂けると嬉しいです