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吁、無情  作者: 調彩雨
12/43

第十一話 守りますよ、絶対に

更新が遅れて申し訳無いです

上手い区切りが無くて長めになってます


プロローグ、侵略者さんの要求を“無血開星”から“無血開星及び隷属”に変更しました

また

第七話、夏川晴史の一人称を“俺”から“おれ”に変更しました



「護衛、増やすそうです」


 ストレス発散のはずが逆にストレス蓄積になった逃避行の次の日、朝っぱらから後藤さんにそう宣言された。


 は、何で?と言いかけて、自業自得と納得した。

 逃がさない為の囲い込みだろう、多分。首輪迄付けたくせに、ご苦労な事だ。


「三人ですか?」

「いえ、四人に」


 いきなり倍か!徹底してるな。


「護衛する人間も増えるので、今日時間が取れるなら顔合わせをしたいと、春田二佐から」

「はいはい。定時付近で帰れたらで良いですかー?」

「じゃあそう伝えて置きますね」


 後藤さんはわたしより年上。態度も比較的フレンドリー。でも敬語。彼はプロだ。

 彼が護衛の中で最も信頼出来、かつ最も恐れるべき相手だろう。春田さん(じょうし)がわたしの死守を命じる限り後藤さんは必ずわたしを守るけれど、捕縛や抹殺を命じられれば躊躇い無く決行するはずだ。拷問だって、慈悲無く決行するんじゃないだろうか?短い付き合いでの印象だけれど、仕事の為なら個人的な感情等無視出来る、そう言うひとだと思って居る。


 化粧の片手間に朝食のゼリー飲料を胃に流し込みながら、後藤さんを見上げた。


 朝食は常にゼリー飲料とカフェオレ。カフェオレの作り方は牛乳にインスタントコーヒーの粉をぶち込んでレンジにインだ。砂糖は無し。枯れてると言うツッコミは受け付けない。そんな事知ってる!


 因みに、昼食は主に職場近くの学食に潜入、夕食は基本コンビニとかスーパーの出来合いや冷食なんかを適当に食べる。冷蔵庫の常在メンは冷食と牛乳とゼリー飲料だ。上司に晩ご飯シリアルって言って絶句された事が有る。以来時たま外食に連れてって貰える様になった。…哀れんで。

 …食育ちゃんとしないとこうなるって言う悪い見本だ。良い子のみんな!食育は大事だよ!!


 ただし、護衛が付いてからは危険回避の名目で昼夜は護衛の方々と同じ(で量が少なめの)お弁当を渡されてる。朝はまともな食事すると吐くと言って断った。管理栄養士監修だからとってもヘルスィ。食事代が浮いて助かる。

 まあ、混雑した学食で護衛とか、普通に嫌だよね。


「新しいひとって、何人位増えるんですか?」

「確か、十人だったはず」

「わたしだけにそんな人数割いて、良いんですか?」


 計十六人。ひとり頭月収二十万として全員分のお給料がひと月で三百二十万…三百二十万!?

 わたしひとりになんっつう金額掛けてるんだ!?やっべ計算するんじゃなかった…。


「そんなお金掛けても自発的に犠になったりしませんよ!?」

「いきなり、金勘定て…」


 ぶはっと吹き出した後藤さんが笑い出す。否々、お金は大事ですよ!?

 暫く笑った後で後藤さんが顔を上げた。深呼吸して、表情を立て直す。


「国の防衛費から見たら安いものでしょう。あなたは、唯一なんですから。守りますよ、絶対に」


 思わぬ真剣な表情と言葉にどきりとしたのは、ときめきか嫌な予感か。

 折角ナイスガイの良い台詞なのに、相手がわたしなのが残念過ぎる。


 誰か、誰か美少女ヒロインを連れて来い…!!

 ああもう!!敵さんはセオリーやロマンを理解して無さ過ぎる!!


 馬鹿なツッコミを入れて居たわたしの心臓の動悸が、ときめきでなく悪い予感の所為だと気付くのは、暫く後の事だった。




「…オハヨーゴザイマス」


 わたしが一歩踏み入れるなり天使が通り過ぎた研究室に、わたしの挨拶だけが虚しく響く。

 全員がわたしに注目しつつ返事は無く、目が合いそうになった瞬間一斉に視線を逸らされた。


 なんだなんだ。新手の虐めか!?

 朝日奈にタイムカード代押し頼んだのがバレたか!?


 昨日実験室に置き去りにした携帯と所員証は椎垣さんが回収してくれて居た。

 荷物は実験室に全部持って行って在ったので、朝日奈が黙って居ればバレない…否、椎垣さん達が騒いで居ればバレるか。


 びくびくしつつも自分の机に向かうわたしに、ちらちらと投げられる視線と、ひそひそと交わされる会話。

 こう言うの、苦手だ。どうしても、被害妄想に陥っちゃって。


 頭を抱えたい気持ちを抑えつつ机に着き、仕事を進める。

 が、落ち着かない。

 被害妄想かも知れないが、視線がちらちら、ちらちら、ちらちらちらちら、あーっ、うざったい!!

 なんなんだ!なんなんだ一体!!

 もうっ、本当にこう言う所、日本人嫌い!!何か有るなら面と向かってはっきりきっぱり言え!!

 言われたら言われたできついけど!


 代押し程度で此処迄ならないだろう。

 なら、昨日の逃亡でわたしの正体がバレたか!?

 あーもう!本っ当に思い立って勢いで逃亡とかするんじゃなかったよ!!


 ぶち切れ掛けたわたしの肩を叩、こうとした誰かの手が、後藤さんに掴まれた。


「何か?」

「や、あの」


 後藤さんと会話する声で接近者に気付いて振り向く。

 後藤さんに手を掴まれた朝日奈が立って居た。


「朝日奈?どうかした…って実験の続きか。ちょっと待って、直ぐ準備する。後藤さん、手を離して下さい」


 肩叩く位で警戒しないで欲しい。そりゃ、若い子にやったらセクハラかも知れないけど、こちとら同期のアラサー女だ。否、うん、29歳て博士としてはまだ若手に分類されるけどさ。

 って、昨日の逃亡の協力者なんだから、警戒されても仕方無い、のかな?


 書きかけの表計算ファイルを保存してPCを閉じる。ばさばさと書類を纏めてしまい、白衣を引っ掴んで立ちあがった。荷物も抱えて持つ。今回は忘れず、携帯の電源を落とした。


「おっけー。行けるよ。…朝日奈?」


 無言の儘、何だか複雑そうな顔で見詰められて首を傾げる。

 朝日奈は、はっとして笑顔を造った。


「おー、うん。行くか」

「?」


 やはり不自然な態度に眉が寄る。

 誤魔化す様に踵を返して歩き出す朝日奈。


 …バレた、のか。


 残念な様な、安堵した様な、恐怖した様な。


 昨日は横に並んで話しながら歩いた廊下を、今日は前後に並んで無言で歩いた。




 廊下でも、視線が凄かった。

 わたしを見て、ひそひそと会話が交わされる。


 …流石に、おかしくないか。

 今迄だって護衛の所為で注目はされたし、疑惑の目線を向けて来るひとも居た。

 けれど、今日は全体的に確信混じりの疑惑だ。敵意すら感じる。


 昨日の逃亡で確信に至られる。幾ら対象に逃げられたとは言えそんなミスを、仮にもプロの軍人が犯すのか?


 わたしの疑問は、朝日奈の手で解かれた。


「白波瀬さん、何か有ったら必ず呼んで下さい」


 さり気無く襟元に触れて、後藤さんが言う。

 釘刺し兼、助言なのだろう。後藤さんはどうやら、朝日奈をかなり警戒して居る。

 上までボタンを留めたワイシャツのお陰で隠れて居るが、わたしには首輪が有る。

 逃げればバレるし、困れば助けを呼べる。


 本当は実験室にさえ入りたいで在ろう後藤さんの、最大限の譲歩だ。


「…起こりませんよ、何かなんて」


 希望的観測を述べて誤魔化す。

 流石に、同僚に殺されるとか思いたくない。


 実験室の鍵は閉めなかった。

 締めなくても何か無い限り後藤さんは扉を開けないだろう。

 後藤さんが外に待機して居る以上、誰かに進入を許す事も無い。


「…昨日、あの後大変だったりした?」


 扉から離れつつ、朝日奈に問い掛ける。

 窓の無い実験室。もう慣れたけれど、最初は少し息が詰まった。

 ダストシュートからの出入りは、辟易して居たわたしにとある先輩が教えてくれた気晴らしへの近道だ。


「ごめんね。迷惑掛けて」

「否、お前が携帯と所員証忘れて帰ったって、護衛のひとに伝えただけ。何処行くのかとか、知らなかったしな」


 …聞くより探す方が早いと思ったのか。

 ん?なら、バレる要素なんて無いんじゃ…。


 うーん。と考え込むわたしに今度は朝日奈が問うて来た。


「お前さ、所内の雰囲気、気付いてる?」

「やたらわたしに注目してる事?朝日奈に代押し頼んだのバレた?」

「其だけであんな雰囲気になるかよ」


 朝日奈が溜め息と共に呆れた苦笑を浮かべた。


「お前さ、もう少し世間の情報に興味持てよな」

「え?」


 何か、世間を揺るがすニュースでも在ったのか?


 朝日奈が自前のPCを立ち上げて、何やらサイトを開く。

 所内は無線LAN装備で快適インターネットだ。


「昨日夜のニュース。新聞にも取り上げられてネットで大騒ぎになってんのに、知らないとかな」


 促される儘PCの前に座り、動画サイトに上げられたらしいニュース映像を見る。


 …地球防衛軍日本支部所属らしい人物が呟きサイトに上げた呟きが、世界中で問題になって居ると言うニュースだった。

 ご丁寧に日本語アカと英語アカで呟かれた其の内容は、


『侵略者は友好条約と引き換えにある日本人女性を要求して居る』

『あの女を差し出さなけりゃ世界中が犠牲になるのに、あのクソ女は自分の命が大事らしい』

『三ヶ月以上説得を続けているが、断固拒否』

『自己中女。全人類と心中する気か』


 明らかに、わたしの事だな、此。

 凄まじい勢いで拡散されて居るそうだ。ははは。笑えない。


 護衛増加も後藤さんの言葉も、此の所為か。

 でもって、研究所の面々は、わたしが此の女じゃないかと疑って居る、と。護衛の付いた時期的に、合致するもんな。そもそも稀病の貴重なサンプルだからって護衛とか、おかしいし。


 …誰だよ軍事機密ぽろっと漏らした奴。


 ニュースが終わると朝日奈が、此の話題のまとめサイトにページを移した。


 問題の呟きは一昨日上げられたもので、軍部が気付いて対策を取る前にかなり拡散してしまって収拾が付かなくなって居るとか。


 此の情報に対する世間の反応は様々らしい。

 案外、血祭り以外の意見が出て居て驚きだ。

 地球防衛軍日本支部には日本のみならず各国から問い合わせが殺到して居る様だ。


「へー…」


 こんな中でわたしに人員割いたのか春田さん。あの人渉外担当だよね?

 忙しい時に問題行動をしたらしくて、ちょっと申し訳無い気持ちになった。

 そりゃ、首輪も付けたくなるって話か。


 で。


「確かに知らなかったけど、此がどうかしたの?」


 朝日奈がわたしに此を見せた理由は何だ。

 動揺も無く振り向いて問い掛けたわたしを、朝日奈が言葉に迷う様子で見返した。


「どうかしたのって…。…お前、此の女について如何思う?」

「此の女って…居るかもわかんないじゃん?呟いた奴が本当に地球防衛軍所属かもわからないんだし。第一今迄知られてなかった情報なんだよね?つまり呟きの中身が本当なら、呟いた奴(こ い つ)は地球防衛軍が機密にして居た情報を流した事になるよね?軍人がそんな事して、許されんの?」


 言いつつ少し、春田さんが故意に流した可能性も疑う。

 わたしが勧めた方法だ。世論を味方に付け、数の暴力でわたしを無理矢理従わせる。

 春田さんみたいなイケメンが矢面に立ってわたしを犠にする事を勧めれば、世論なんて簡単に操れるだろう。


「ま、本当ならさっさと差し出されて世界平和の礎になってくれたら、助かるけどね。どっちにしろ此の呟きぬしが本当に地球防衛軍所属なら、軍人として終わってる気がするけど。此の女が軍人とかなら兎も角、例えば普通のOLとかだったらさ、民間人に責任押し付ける軍人って如何よ?」


 春田さんは多少なりとも民間人の犠牲に呵責を覚えて居る様だった。

 だから強制じゃなく説得を選んでるんだろうし。


 此の女が実在してわたしじゃないなら、思うのはそんな所だろう。

 わたしの知らない所でひとが死んで、わたしの平和を守ってくれるなら、大歓迎だ。自己中?知ってる。

 でも、実際そう考えるひとだって結構居るんじゃないか?


 喩え無理矢理犠牲者にしたとしても、巧く政府が情報操作してくれるはずだ。

 太平洋戦争で亡くなった多くの若者が、栄誉有る軍神として讃えられた様に。

 わたしは大人しく嘘を真実と聞き入れて、不都合な事実なんて、知らん振りすれば良い。歴史上多くの民衆が、そうやって来た様に。

 史実は真実とされるが事実とは限らない。


「可哀想、とかじゃなく、犠牲になれば良い、って思うのか?」


 朝日奈はわたしに何を言わせたいんだろう。

 言質を取って、なら死ねよって?


 災難だなとか運が無いなとかは思うけど、可哀想、可哀想ねぇ…。

 三ヶ月抵抗し続けてる猛者を、可哀想って、ねぇ?


 思わないな。


「積極的に犠牲になれとは言わないけど、誰かの手で犠牲にされるのを止める気は無いかな。容認する。で、救われた世界を喜ぶ。可哀想とは、思わない」


 直接の加害者にはなりたくないけど、利益は享受する。クズ代表みたいな意見だ。


「ひとひとりで世界が助かるなら安いもんでしょ。ま、わたしが犠牲になれって言われたら、ぴら御免ってお断りするだろうけどね」


 現に、断ってるしね。


 堂々と宣言したわたしを、朝日奈は微かに眉を寄せて見返した。


「…白波瀬に護衛が付き始めたのって、三ヶ月ちょい前だよな?」

「そうだっけ?まぁ、そんなもんか。早いね?」


 気付けよ。軍事機密なんだ。

 其をわたしに問うちゃいけない。


 口に出さない警告には気付かず、朝日奈は言葉を続けた。


「普通さ、珍しい病気ってだけで護衛なんか付くのか?」

「さぁ。わたしには付いたけど?」

「地球防衛軍の人間がか?」


 護衛の彼等はスーツ着用だ。真夏にスーツ。辛いね。

 階級章は省略だ。身分を、バラさない為に。


「否、何処の人間とか知らんけど。一般のSP派遣会社のひととかじゃん?」


 何処の、基地の、所属のひとかは知らない。

 春田さんは本部所属らしいけど、護衛候補だったらしい夏川晴史は第八基地で訓練してたし、他のひとの所属とか訊いてない。海自とかだと所属艦は機密らしいし、訊かない方が良いかと思ったからだ。

 …常識は無いくせに雑学は知ってるのかとか、突っ込まないで欲しい。テレビは見ないけど読書とゲームは趣味なんだ。


 嘘は吐いて居ない。

 後半だって、一般論だ。民間人に軍人が護衛とか、謎過ぎる。警官の監視ならまだわかるけど。


「しらばっくれる、か?」

「否、本当に知らないって。知り合いの頼みで遺伝子提供したら、思わぬ伏兵が発見されただけなんだからさ。もうびっくり。何がびっくりって、知り合いが民間人に監視役を付けられる位の権力者に、コネ持ってた事にだよ。知り合いのおど…頼みだから受け入れたけど、無期限監視とか、本当困る」


 今度は殆ど嘘だ。

 しつこい朝日奈を振り切る為に、わたしは立ち上がった。


「そんな事より結果確認しようよ。此の結果が次第で次の実験が、」

「白波瀬」


 朝日奈から目を離し、白衣を羽織ろうとした腕を掴まれる。


 強い力。自分の手がガキみたいにちまいから、大きい手は男女問わず憧れる。

 振り向けば、普段からは想像も付かない強い眼差しで見返された。


「実験なんて、意味あんのか?お前が犠牲になんなきゃ、世界は後三ヶ月足らずで滅びんだろ?」


 …朝日奈に、此処迄言われるとは思わなかったな。

 護衛が付いても態度を変えないでくれた、唯一の同僚なのに。

 相談しろと迄言って居たのに、真実に勘付いたら此か。


 怪訝気な顔を造って朝日奈を見上げる。


「ナニソレ、どんな言い掛かりだよ?」

「此の呟きの女って、お前なんじゃないのか?」

「其訊いて、どうするよ?」


 朝日奈は馬鹿じゃない。んで、わたしだって朝日奈程じゃないにしろ、馬鹿ではないんだ。


「どっちにしろわたしの答えが変わんない事位わかんないの?それとも馬鹿にしてる?喩えどちらの立場だったとしても、わたしの答えは“そんな訳無い”だ。でも、わたしがそう言ったってあんた信じやしないでしょうよ」


 わたしが呟きの女でも、そうじゃなくても、結局わたしは否定する。

 どっかの馬鹿みたく軍事機密を漏らしたりしない。

 しかも、三ヶ月拒否し続けた奴が今更頷くとも思えない以上、其奴は自分の立場がバレない様にするはずだ。奇跡でも起きて地球が無事に済んだなら、或いは彼等へ完璧な隷属を認めたら、彼女の人生は其の先も続くのだから。


「其は、」

「言ったじゃんか、軍事機密なんじゃないかって。わたしが万一其の女だとして、守秘義務が課せられてないなんて、如何して思えるの?」


 実際、春田さんから情報の秘匿を求められて居る。

 わたしは兎も角其の親類知人迄庇護下に入れる事は不可能だから、と。

 つまり、下手にバレれば友人知人及び親類縁者盾に取られて、身柄引き渡しや犠の承諾、自殺やなんかを求められるかも知れないと言う訳だ。

 人間追い詰められると、ってヤツだね。


「第一もしもわたしが其の女だったら、朝日奈は如何すんのさ?死ねって言う?世界オレの為に犠になれよって、わたしを説得する?其とも何?大変だね可哀想だねって、同情して慰めてくれんの?」


 掌を反されるのが怖いから、必死に隠して。反されそうになったなら、其の前に其の手を叩き落とす。

 弱いわたしの、醜い処世術だ。

 嫌われるのが怖いなら、いっそ嫌われてしまえば良い。


「…下らない」


 腕を掴む朝日奈の手を掴まれて居ない手で腕からもぎ取る。


「侵略者が如何とか言わなくても、世界なんか何時滅びたっておかしくないよ。瞬く間に、太陽が超新星爆発起こして地球なんか一瞬で消し飛ぶかも知れない。滅びを恐れて研究なんて出来るもんか。ほら、研究者は黙って研究」


 最近、研究所内に味方は朝日奈だけだった。

 今日から、ひとりも味方は居なくなるだろう。


 朝日奈が味方になった可能性は、考えない。

 其処迄大事にされる様な友情を育んで来なかったのは、わたし自身なのだから。


 もう其以上何も語りたくないとばかりに、わたしは黙って昨日の実験結果を解析し始めた。

 慣れたはずの窓の無い部屋が、今日はやけに息苦しかった。






拙いお話をお読み頂き有難うございます


展開を迷って更新が遅くなりました


耳を塞いで自ら孤立の道に進んだ萩沙ちゃん

功利主義っぽく見える発言もして居ますが基本的に利己主義者です


不定期更新で申し訳無いのですが

続きも読んで頂けると嬉しいです

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