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Infiorarsi  作者: 影都 千虎
少女
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05

 酔っ払い達の飲むスピードが落ち着いてくると、ネロはカウンターに寄りかかりながらアドルフォと雑談をかわしていた。実はアドルフォは、幼い頃に両親を亡くしたネロの面倒を見てきた育ての親のような存在である。

「ハハハ、息子と飲んでる気分だ。俺に息子がいたらこんな感じなのかねぇ」

 カウンターに脚を組んで座り、ネロがサービスで出したアーティーチョークをちびちびと舐めるように飲みながらアドルフォは言った。アーティーチョークは胃もたれや二日酔いを防ぐハーブティーで、今日の昼間ネロが買ったものである。あの時、ブランテの質問にネロは答えなかったが、もしかしたら客を気遣っていると思われるのが恥ずかしくて答えなかったのかもしれない。何も言わずとも、既にネロの優しさは伝わっているのだが。

「……息子がいたらも何も、アドルフォ息子いるじゃん…………そこに」

 呆れ顔でネロが指差した先には、周りが殆ど飲むのをやめているにも関わらず、未だに飲み比べをしているアホな男のグループがあった。つまり、アドルフォの息子は騎士団に所属しているということである。

 アホな男たちの中に入っている息子の姿を見て、アドルフォは豪快に笑った。流石俺の息子だと言わんばかりに。

「ハハッ……あのアホ共、調子に乗って飲み過ぎないといいがな」

「そう思うなら止めてください騎士団長様」

「あー、そりゃあ無理な頼み事だな。なんせ俺は止めるよりも止められる側の人間だからな」

「駄目騎士団長め……」

 そしてまた、アドルフォは豪快に笑った。猫舌なのかアーティーチョークを飲むのは諦めたらしい。相当温くなるまで放置されそうだ。

 そんなアドルフォから目を離し、ネロは再び飲み続ける男たちに視線をやった。その中には、店を手伝っていたはずのブランテが混ざっている。かなり飲んだのか、顔には赤みがさし常に爆笑していた。ネロはそんな親友を見てため息しか出てこない。

「そんなにため息つくくらいなら、お前も飲んだらどうだ?」

「俺、一応仕事中なんだけど」

「気にしなーい、気にしなーい。ほれ、俺も付き合うからちょっとぐらい飲もうぜ」

 断る理由を探すネロをアドルフォは誘い続ける。ネロに止められて飲むのを止めたが、本人はまだまだ飲み足りていなかったようだ。

 しつこいくらいに誘われて、ネロは渋々アドルフォと飲むことにした。「……ちょっとだけだから」

 ため息混じりに言うが、ちょっと嬉しそうなのが顔に出てしまっているネロである。



「そんじゃ、今日はありがとうなー」

 足元がおぼつかない騎士団員に肩を貸し、手を振りながらアドルフォはバーを後にした。その背中を見送ってから、ブランテは振り返ってカウンターで潰れているネロに目をやった。

 ちょっとだけと言って飲み始めたはいいが、実はお酒に弱いネロは酔いつぶれてしまったのであった。

「あーあ」と苦笑しながら、ネロに近付きその頬をぷにぷにとつつく。ネロは「うぅ……」と少し唸っただけで後は何も言わなかった。当然手が飛んでくることもない。

「こりゃあ、完全にダウンだな」

 ブランテは騎士団員と飲み比べをしていたはずなのだが、酔った様子は全く無い。普段から飲んでいるだけあって、肝機能が素晴らしいようだ。


「あたま……痛い…………」

 少しすると、カウンターに突っ伏したまま呟くようにネロが言った。

「酒弱いのに無理して飲むからだ。ほれ、水」

「いらない…………」

 とても眠そうな様子のネロに、ブランテは思わず笑みを零した。出来ることならこのままネロを観察して遊びたいところなのだが、放置して突然吐かれても困る。もらいゲロをしてしまうタイプであるブランテは、ネロの嘔吐に細心の注意を払いながら、ネロの体を起こして水を飲ませると、気合いでネロをお姫様抱っこしてベッドまで運んだ。気合いで運んだため、下ろすときがかなり雑だったのは言うまでもない。


「…………なあ、ネロ」

 どうせ今なら何を言っても殆ど覚えていないだろうし殴られることもないから問題あるまい、とブランテは昼間から思っていたことを口に出すことにした。一応ネロが「んー……?」と返事をしたのを確認してからブランテは言葉を続ける。

「奥手なのはいいけどよ、せっかく好きな人が出来たんだ。自分から行動しろよな」

 ブランテは昔からネロを知っている。だから、ネロが恋をする事が珍しいを通り越してしまっている事も知っている。知っているからこそ、本気で応援してやろうとブランテは思っていた。それと同時に昼間はやりすぎたと反省していた。

 そんなブランテの気持ちを知ってか知らないでか、ネロは一言「うるせえよ……ばか……」と呟くように言って、意識を手放した。

「……おやすみ」

 ネロが寝てしまったので、これ以上ここにいても仕方ないと判断したブランテは、そう言って帰路についた。


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