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Infiorarsi  作者: 影都 千虎
少女
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「あたしたちは店を開かないと生活出来ないんだし、まーいいんじゃない?」

 ロドルフォの言葉に真っ先に答えたのはナディアだった。全体的に暗い顔をしている中、ナディアだけ花が咲いたような笑顔だっため、つられて店にいる面々の表情は次第に明るくなっていく。結果的に「サボリ娘にそんな事を言われちゃあ仕方ない」と、いつの間にか笑いあっていた。



 誰の合図も無しに、店に集まった面々が三々五々になると、ロドルフォはネロとブランテとクリムに「話がある」と言って店の奥へ行った。ついてこい、という意味だと受け取りネロとブランテも店の奥へ行く。クリムだけがどうしたらいいか分からずにその場に留まっていた。

「んあ? あの綺麗な嬢ちゃんは?」

「あれ? 本当だ。クリム?」

「ちょっと俺呼んでくるわ」

「おお、頼んだ。ブランテ」

 ブランテがクリムを呼びに行くと、ロドルフォはネロと向かい合い目を合わせた。

「……それで、あの嬢ちゃんは?」

「クリム・ブルジェオン。俺の店に最近よく来るんだ」

「そうかそうか。それで?」

 少しだけロドルフォの口角があがったが、ネロはそれに気付かず「それでって?」と聞き返す。

 そんなネロの反応を見てから、ロドルフォは焦らすのが目的か、「紅茶と酒どっちがいい?」と、全く関係のないことを尋ねた。

「どっちもいらない。ジンジャーエールがいい」

「そんなもんねえよ」

「ソフトドリンクくらい置いといてよ」

「無理な話だ。おら、子供は水でも飲んでろ」

 ネロは、そう言ってロドルフォが差し出したコップに入れただけのただの水道水を受け取った。勿論、口は付けない。

 ロドルフォは自分が淹れた紅茶を一口飲むと、満足そうに頷いた。そして、ゆっくり味わうようにまた一口飲む。

「…………で?」

 自分の声が、普段よりも低くドスのきいたものになっているとネロは気付いているだろうか。

 どうやらイライラしてしまっているらしいネロに、ロドルフォは仕方なく続きを聞くことにした。質問する立場であるというのに、この態度とはどういうことかよく分からなくなる。彼は聞きたいのか、それとも聞きたくないのか。謎だ。

「あーっと……俺、何を聞こうとしてたっけ?」

「いや、知らないよ」

「そうか……まあいいや、おーいブランテ、入ってきていいぞ」

「結局聞かないのかよ! しかもブランテ達いたんだ!?」

「そりゃあ紅茶淹れてたらな。ああ、ところでネロ。この嬢ちゃんはお前のコレか?」

「うおわぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」

 ロドルフォが紅茶を淹れている間に、部屋の前に来ていたらしいブランテとクリムが部屋に入ってくると、ロドルフォはわざとらしく小指を立ててネロに尋ねた。ネロは顔を真っ赤にしながら、立てられた小指がクリムに見えないようロドルフォに飛びかかりつつ、二度と小指が立てられないよう小指の関節をおかしな方向へ曲げてしまおうとした。

「あっぶねえなこの野郎……」

 しかしそこは元騎士団。バーテンダーの握力及び腕力如きではびくともしなかった。引きこもり生活というハンデがあってもこの強さだと、現役時代はどうだったのだろうか。考えてみると少し恐ろしい話である。

 攻撃を阻まれたネロは、赤くなってしまった顔をなんとか戻そうとしつつロドルフォを睨む。

「いきなり何を……そしてなんでいきなり彼女……」

「だってよ? 最近店によく来る女の子と行動を一緒にしてたらそう思うだろ? 俺の店にまできたってことはうっかり婚約でも……」

 ネロがロドルフォの顔面を思い切り殴ったのは言うまでもない。そんな二人のやり取りを困ったように眺めているクリムを見て、ブランテは助け船を出してやることにした。

「クリムちゃんは今、ネロの家に住んでるんだよ」

「!?」

 言葉が少し足りないせいで誤解を生んでいた。ロドルフォは冗談のつもりでネロをからかっていたため、ブランテの言葉に目が飛び出そうなくらい驚いた。あるいは、髪の毛が全て抜け落ちてしまいそうなくらい驚いた。既にハゲているが。

「住んでるっつーか、部屋を貸してるって感じか。色々事情があってさ」

 面白そうに笑いながら、ブランテは五日前の話を始めた。五日前、つまり戦争の前日のことである。

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