人魚の話
掲載日:2012/07/26
昔々、海の底を魚のように泳いで暮らす女の人魚がいた。
人魚なんてものは魚と同じようなものですから、普通に考えると息の出来ない海面にはあまり行くことはないのですが、少年少女の人魚は好奇心が強く、つい海面に上がり息が出来なくなり死んでしまうことがよくあるのです。
この女の人魚も少女でした。
海面から太陽や月の光を見上げると泡や波に反射してきらきらと美しく輝くのを眺めるのが好きでした。
その日も彼女は海面を眺めていたのですが、ふと気が付くと見慣れない影が見えます。
彼女は興味を惹かれてたまらなくなり、海面へと上がるとぐったりとした人間の王子が流木と共に漂っていたのです。
王子の顔立ちはたいへん美しく彼女はどうにかして王子を助けようと思いました。
人間のことをよく知らないエラ呼吸の人魚は王子が水の外は苦しいだろうと水の中に沈めます。浮いても浮いても必死で沈めます。
そうしてる内に王子は息が出来なくなり死んでしまいました。
彼女は悲しみ、次こそは苦しい海面を漂う人間を救おうと決意するのです。
それから暫くして、この美しい海には漂流者を海の底へ沈めて殺す人魚が住むと人間の中で言われるようになったのです。
「私はただ救いたいだけなのに…」




