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第一話・姉について

姉についての話です。

我が家の長女について、ちょっとした話をしたい。

今年で専門学校へ通う彼女は、私より二つも年が上である。

本来なら、ここでイニシャル表記をしたいところなのだが、私たち3姉妹は、両親が面白がってつけたせいでイニシャルが同じW・Yなのである。

しかも、名字も名もかなりありふれているもので、同姓同名をよく見かけたりすることがある。

我が家の大黒柱はなんと、最近作品が映画化されたある人物と字が違うものの、同姓同名だ。例えペンネームだとしても、これには家族揃って驚いた。

私は自分の通う高校の図書室で、今は亡き父方の祖父と同姓同名の作家の本を見かけたこともある。


と、話がだいぶそれてしまったが、我が家の長女の名は男の子とよく間違えられる漢字が使われている。

なので、よく『君』をつけられてしまう事があった。

その上、同年代の女の子よりも背が高い彼女は、その外見からでもよく男に間違われることがあった。

(これは、本人が男ものの服を好んで来ていた事にもよる)

そのため、病院などで呼び出される時は君付け、本屋に行けばその背の高さで店員と間違えられる、妹と遊びに行けば母親に間違えられた事がある姉が、自分でも笑ってしまったある事件があった。



姉にもようやく洒落っ気が出て、服装にも髪型にも女らしさが漂い始めた頃の話である。

ある日、家族揃って出かけた私たちはある温泉に寄った。

その温泉は、海沿いに建っているという事で眺めが綺麗だと聞いていた私たちは、早速その温泉に入る事にしたのだ。

しかし、その時私は、いくら眺めが良くても、どれだけ言われても、あらがいがたい睡魔に、車の中で眠っていることにした。

自分も温泉に入らない事にした父も、母と姉と妹が戻ってくるまで、車で一緒に待っていた。

初め、喜びいさんで温泉に出かけた彼女達三人は、数分後妙な笑みを浮かべて車へと戻ってきた。

その時には、眠ることで睡魔に打ち勝った(負けたともいう)私は、車の中で温泉の出口から出てくる彼女達をぼんやり眺めながら待っていた。


「いやー、すごかったよ」

ぎぃ、という古い車が発する音をたてながら、母が車の後部座席のドアを開いた。

その顔は、今にも笑いだしそうに歪んでいた。


「何?お風呂入れなかったの?」


運転席でマンガを読みながら母達の帰りを待っていた父は、不思議そうに母に尋ねた。

しかし、母は笑いだしそうなのを堪えるので精一杯のように、ただ首を横に振るだけ。


「男に間違えられた」


姉が、いつも座っている助手席のドアを開けて、やや不服そうながらも笑った顔で父に応えた。


「そうだよ!姉ちゃん男に間違えられたの」


母の手を借りて車に乗り込む妹は、けらけらと笑い声を洩らしていた。

姉が男に間違えられるのという事は、我が家では日常茶飯事となっていた時なので、普段の私ならどうとも思わなかっただろう。

だがしかし、その時姉が着ていたのは胸元が強調された婦人服で、しかもフリルがついていたのだ。

まさか、そんな格好で男と間違えられる事などあるわけがない。

私はそう信じて疑わなかった。


「うそだー。だって姉ちゃん、今日は女らしい服着てるじゃない」


母達が嘘を吐いてからかっているものと思った私は、姉の服装を確認するように見た。

しかし、母はそこで弾かれたように笑いだしたのだ。


「本当なんだって!男に間違えられたの!」


堪えきれない、と笑い続ける母に、私は首を傾げた。

そんな日常茶飯事の事で笑えるなど。

私はただ不思議でならなかった。


「男に間違えられるなんていつもの事じゃん」


「だから、今度は本当に間違えられたんだって!」


助手席でシートベルトをしめながら、姉が私の方を向いた。

その顔は、どこか怒っているようにも見えた。


姉の話によると、姉は『本当に』男と間違えられたのだそうだ。

それは、男として名前を呼ばれたり、話掛けられたりとはまったく違うものだったという。

温泉のフロントで、入浴手続きをしていた母と姉と妹は、使うバスタオルとロッカーの鍵を一人ずつ受け取った。

だが、何故か母と妹の鍵の色と、姉の色は全く違う色をしていた。

母と妹の鍵は、よく女風呂だと強調するための桃色をしていたのだが、何故か姉のは緑色。

姉のは、新しい鍵なのかも知れない。そう三人は考えたそうだ。

しかし、いざロッカールームに行くと鍵の番号が合わない。

その上、ロッカールームにいる女性が持っている鍵は全て桃色。



その時、ようやく彼女達はその緑色の鍵がこのロッカールームで使える鍵ではないと気が付いたそうだ。



車でその話を聞いた私と父は、それは爆笑してしまった。

その場に居合わせられなかった事を、今でも悔やんでいる。



その鍵をフロントに交換しに行った時、ボーイさんは焦りながら、今度こそ女風呂の桃色の鍵を渡してくれたという。

面白かったでしょうか?これからもこんな感じで綴っていきたいと思います。これからもよろしくお願いいたします。

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