プロポーズ
男は恋をしていた。
ほとんど一目惚れだった。
レジの後ろから、いつもにっこり笑いかけてくれるその娘の事を思うと、せつなくて夜も眠れなかった。
が、男はどうしようもなくウブで不器用だった。
その娘と視線が合うだけで、かあっと頭に血がのぼせてどうしてもうまく話しかけることが出来なかった。
それでも男は心を決め、ある晩、長い間店の外で待ち続けた。
そして最後の客が出ていってから、その店に入っていった。
その娘は、いつものようにカウンターの後ろに一人佇んでいた。
が、いつものように笑いかけてはくれなかったし、どこか身を硬くしたようだった。
それでも男は、陳列棚には目もくれず、娘の前まで一直線に歩み寄った。
そして、無言でジーンズの後ろポケットをまさぐった。
と同時に、銃声が店内に轟いた。
男は血飛沫をあげて後ろに吹き飛んだ。
そして、倒れかかった陳列棚の下で動かなくなった。
それでも娘は、ショットガンの震える銃口を男に向けたままだった。
片手にピンク色の封筒を握りしめた、その覆面男に・・・
半年後、世界一不運な男は無事退院し、程なく世界一幸せな結婚式を挙げた。
あの時手渡しそびれたラブレターと、献身的な見舞い通いが、ついに娘の心にも愛を芽生えさせたのだ。
・・・これは、アメリカ・ペンシルベニア州ハリスバーグのドラッグストアで1997年に起こった実話である。
ウソだよ。