表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

3話 悪友

 白瀬は新幹線を降りると、地方都市のハブ駅で、とある人物を待つ。


「おうぃ!」


 サングラスをかけ、短パンを吐いた男性が近づいてくる。彼の名は、船見ふなみ、小学校からの友人で、いわゆる腐れ縁というやつだ。


 K市への電車は一時間に数本しかない。なので、隣接するS市に住んでいる船見から車で送ってもらうことにした。それは久しぶりに会う口実でもあった。


 白瀬は、船見の車に荷物をつめ、助手席に乗り込む。車の中は、わずかに電子煙草の臭いがした。


「さて、出発しますか」


 電子煙草を片手に持ち、船見が言う。この男は、元々問題児で、中学の頃、補導されたこともあると聞く。部活が同じだったことから、話したが、そうでなければ話すことはなかっただろう。


「いやぁ~久しぶり」


 飄々(ひょうひょう)とした掴みどころのない男だが、仕事はしっかりとしているようで、社員証のカードが後部席に見えた。


「全く、K市は、夏は蒸し暑くて嫌になるね」


 船見は、電子煙草をふぅと吐き出した。


「そりゃ……帰ってきたくなんてなかったさ」


 幻聴による、軽度のうつ状態に入ってから数日、医師は薬を出すと同時に、食生活を含めた生活改善を言い渡してきた。腸内細菌が、うつ症状に影響を与えるという研究結果もある。確かに食生活は荒れ、それと相関するように便の状態は悪化していた。


 白瀬は、自分の見る幻覚や幻聴、ツイートの話を話した。


「いもち病を予測……ねぇ」


 船見は、信号待ちをしながら、電子煙草の吸殻を捨てる。その細く、骨ばった腕や、指が見えた。その腕に着いたブレスレッドが揺れる。


「病院は行ったの?」


「行ったけど……異常はないって」


「ふぅん、脳の異常ではないわけね。精神的なものってわけ」


 白瀬の話を、船見は笑うことなく聞いてくれる。


 そう言えば、駅前に新しいラーメン屋ができたの、知ってる? いや、知らない


 そんな無為むいな会話を交わしながら、県道を進む。ふと、信号で車が停まる。


 船見がハンドルを指でたたきながら、


「まだ引き返せる」


「行ってくれないか」


「良いのか」


 一瞬、船見が心配そうな視線を送ってくる。小さい村だとしても、名家と言われた実家から逃げたのだ。簡単に受け入れられる訳がない。どんな目に合うか分からない。


「まず、叔父さんに挨拶に行くつもり。あの人なら受け入れてくれる」


「そうか」


「いい加減、自分も折り合いを付けたいし」


「分かった」


 船見はルートを変えずに、K市へ進む。


 車を走らせて40分、コンビニエンスストアで停車し、休憩をしていた。


 白瀬は、流動食を飲み、ため息をついた。最近は食事を美味しく感じなかった。何を食べても味がしないのだ。無味の粘土を噛んでいるような―


「美味しくないのは分かるが、しっかりと栄養はとった方が良いんじゃないのか」


 船見は、そう言い、携帯食料を手に握らせる。


「ありがと……」


 銀色の包装を解き、もそもそと食べる。


「神のお告げか……だが、お前がいもち病の発生を予測できたなら、それは神託になるのかな」


「はぁ?」


「いやいや、何となくそう思っただけ」


 そう言い、船見は車を発進させた。

 読んで頂きありがとうございます。感想、評価、レビュー、ブックマーク、お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ