14話 浸食
どこにも行く当てがなく、仕方なく自分のマンションへ戻る。新幹線に乗り、自由席に座る。
船見の通夜に出る為のスーツを持ってこないと、スーツを持ってこないと、スーツを持って、スーツ―
「大丈夫ですか……?」
隣に座る老人が声をかけてきた。気が付くと、嗚咽していたのだ。
あいつが死ぬわけない。堪えても、堪えても、涙が止まらなかった。
「すみません……すみません」
私が、呪いを持ち込んだのか?
久しぶりに、帰った家は、寒々しい印象を受けた。
乱雑な書類の山、コードが絡まったデスク。
パソコンを起動し、メールをチェックする。船見とのクラウドを確認するためだ。だが、何回か、メールが来ているので、それを先に開く。
あて先は、会社だった。
「え」
同僚が自殺していた。休職していたという、あの男だ。
自分の体調や心理状態を心配したメールだった。確認が取れ次第、会社に連絡しろ、とのことだった。メールが来たのは、丁度、浩二の家に行った日。
誰かの声が聞きたくて、仕事用のスマートフォンを使い、会社に電話をかける。しかし、一向に電話はかからない。
まさか―
嫌な汗が、脇を伝う。
気が付くと、船見のクラウドが開いていた。そこには、自分に電話がつながらないことを、確認するメール。
やはり、何かあったんだ。
もう一度、あの場所に行くしかない。白瀬はスーツを出し、家を出た。通夜と葬式が終わり次第、すぐにK市に戻る。
呪いを終わりにするのだ。
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