13話 喪失
【1】
和子と忠人には、必ず関りがある。そして、その前後に●●●祭の儀式の一部が変更された。
「それが最初の呪いだった、そんな気がしてならない」
「どういうこと?」
「思い出せ、山の神とは伝承上の姿でしかない。本当の姿は何だった?」
「山賊……」
「そうだ。具体的に言えば、山に住み着いた、ならず者だ。彼らに対し、うら若き乙女を差し出したのが人身御供の始まりなのではないか、と考察する資料はいくつもある」
船見は、ビールを飲み、唇を吊り上げると、
「これは仮説にすぎない。俺の妄想だ。和子はある日、忠人に襲われた。そして、性的暴行を受けた。だが、それは何らかの形で隠ぺいされた」
白瀬は、ハッとする。
「伝承である山の神が、里に下りて乙女を襲ったように見えたという事?」
「そうだ。もしかすると、それは儀式を変えたことによる影響なのかもしれない。つまり、和子が暴行を受けたのは少なくとも、40年以上前だ。そこから呪いの影が見え始め、そして、ここで花開いた」
「つまり、こういう事?」
白瀬は、メモに書いていく。
●●●祭の儀式の方法を変える → 山の神が怒る → 和子にその呪いが、性的暴行と言う形で降り注ぐ → それが巡って、さらに自分や父、コメにまで影響を与えている。
船見は頷き、
「だからこそ、●●●祭を本当のやり方で行う、それが解呪の方法なんじゃないだろうか。K市へ向かおう。そこで和子の話を聞くんだ」
「分かった」
「何かあった時の為に、調べた資料や、気づいたメモを共有しよう」
そう言い、船見は、パソコンにクラウド上の共有フォルダを表示した。
「了解」
【2】
船見から会社で泊まる旨の連絡を受けてから3日。船見を待っているが帰ってこなかった。連絡も繋がらない。そうしているうちに、1週間が過ぎた。
船見への通話記録で記録がいっぱいになった。
不安が募り、食事も喉を通らなかった。行方不明の通報をするべきか悩んだが、出来なかった。
体調も悪化し、起き上がれない時間も増えた。白い靄が視界を覆い、何も見えず、聞こえない時さえあった。
私は、死ぬのか―
インターフォンが押され、立ち上がると、
ドアを開けて現れたのは、老人と一人の中年男性だった。
老人が、口をパクパクとさせ、
「あ……の、船見さんのご友人か何かですか?」
「そうです……一週間も連絡してこない物ですから、合鍵を貰って、待っていたのですが」
嘘がスラスラと出てきて、自分でも驚く。
「船見さんとは一緒ではないのですね?」老人が聞いてくる。中年男性が、白瀬を睨みつける。
「あの……船見さんが、どうかされましたか?」
男は、わずかに興奮した口調で、
「彼、無断欠勤しているから。何か知りませんか」
詰問調で言われた。
「いえ……知りません」
「試しに電話してみてくださいよ」
白瀬は、再度、電話をかけたが、電話に出ない。
「ったく……船見の野郎、どうしたんだ」
中年の男が頭を抱え、ため息をつく。
それから数時間後だった。船見が遺体で発見されたのは。
見つかったのは、会社近くの大きな橋の下。転落による外傷が直接的な死因だとされた。形跡はなく、遺書もあったことから自殺だと断定された。
それを聞いてからの事は、よく覚えていない。
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