10話 退避
「血相を変えてたから、本当にびっくりしたよ」
片手にハンバーガーを持ち、船見が言った。
白瀬は、船見の家のなか、窓の外を何度も確かめる。
「セキュリティー付きのマンションだよ。大丈夫だ」
ハンバーガーをパクつきながら、船見が言う。ポテトを口に詰め込み、喉を鳴らし、コーラーを飲む。食べないのか、と言う目で、白瀬を見つめてくるが、食欲はなかった。
「呪いは、ヒト用のセキュリティーなんて突き破るはずだ」
恐怖に震える白瀬の口に、ハンバーガーが押し込まれる。とりあえず喰え、と言われ、白瀬は咀嚼する。
船見は食事を終え、キッチンに向かう。そして、換気扇を付け、煙草に火をつける。煙を吐き出し、虚空を見て、
「幻覚を見たのは事実だとすれば……解呪の方法を探さないといけない訳だ」
「どうしよう……神職にでも頼めばいいのかな?」
「そうさねぇ……神社でお祓いくらいはしてくれそうだが、幻覚に関しては、十中八九、病院を進められるか……もしくは胡散臭い連中から金を巻き上げられるだけだと思うがね」
「じゃあ……どうにもならないのか……」
「呪いの元を見つけるんだ。お前の呪いがどこから来たものか、それを見つける」
「何かあてが?」
「ない……まぁ気長に考えよう」
船見は、吸い殻を捨て、テーブルに肘をつく。
「お前の幻覚は、何かしらの原因によって引き起こされているとしよう。そして、その原因を呪い、と呼ぶ」
「それで?」
「じゃあ、まずは呪いがどうやって生まれたかを考えてみるか」
そう言って、船見は、メモ帳に、書いていく。
「まずは、山の神の呪い説。もう一つが人身御供にされた巫女の呪い説」
「なるほど」
「おしら様、と呼ばれる東北地方に伝わる神は、供え物を怠ると、祟ってくると言われている。神の呪いも同じようなものかもしれない」
白瀬は唸り、
「じゃあ、私のような症状の発生は定期的にあった可能性があるってこと?」
「そうだな、お前の親戚の泰正、そして父親、それ以外にも祟られた者はいるかもしれない」
「じゃ……じゃあ、私も」
「一部地域で幻覚症状が多発していたら、流石に誰かが気づく。そこまでの件数ではないと思う。それに、山の神が怒った理由なら、他の民俗伝承からも推測可能だと思う……例えば祠が壊されたとか儀式に変更が加えられたとかがないか調べてみよう」
ありがとう、と白瀬は首を垂れる。
「こういう時の友達だろ。さ、今日は休むんだ」
そう言って、船見は、布団の準備を始めた。
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