1話 人身御供の神事
これが呪いであったならば、どれだけ良かったことだろうか
薄闇の中、巫女が籠を抱えているのが見えた。これは、●県K市で行われている神事である。その原型は、人身御供の儀式だったと言われている。
山奥の神社へと進んでいた巫女は、神主に招かれ、本殿の中へ入っていく。その横顔が、ちらりと見える。透き通る白肌に、血のような紅をさしていた。
提灯の灯りのなか、厳かな空気が満ちていた。白瀬は、思わず生唾を飲み込む。
地元の者たちが、正装に着替え、顔を強張らせて巫女に追従するその姿を見て、白瀬はあるものを思い浮かべる。
葬式―
濃厚な死の匂いが、この神事に貼りついている。それは、みなの正装が、どこか色彩を欠いているからではない。
白瀬の地元―K市は、山に囲まれ、自然の恵みも災いも同時に受けてきた。災いの中で最も被害が大きかったのは、飢饉だ。村人は、飢饉が起こるたび、山の神への生贄として、巫女と神饌(神に捧げる食事)を捧げてきたのだ。
今、巫女が手に抱えている籠は、その名残だ。かつては、籠の中に未婚の少女を閉じ込め、山に捧げたと言われている。
白瀬は、身震いする。夏だというのに、空気が冷えている気がした。わずかに吐き気がする。
大丈夫だ。ここで必ず解呪に至る情報を掴んでやるのだ―白瀬は、口元を抑え、巫女の背中を睨みつける。
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