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第8話 第一回負けない幼馴染み会議 その2

「彼氏作れとかほんと何考えてるの?」


琴平舞衣はそう言うと腰に手を当ててジト目で俺の事を見てくる。どうやら俺の案に対してそこそこご立腹のようだ。

まじかぁ結構いい案だと思ったんだけどなぁ。

仕方がないので俺はご立腹な彼女にきちんと説明をする事にした。


「別に何も考えてない訳じゃないぞ!一応ちゃんとした理由もあるから」

「その理由は?」

「さっきも言ったけど大屋冨が告白して来るのが一番避けたい状況なんだったら、告白出来なくすれば良いんだよ」

「それと彼氏を作る事に何の関係があるの?」


琴平舞衣はだいぶ態度を軟化させて聞く姿勢になっている。


「一般的に彼氏がいる女子に告白しようとは思わないだろ?それに琴平さんに彼氏がいると知って諦めた大屋冨が坂出さんに目を向けるかもしれないしな」

「思いのほかちゃんとした理由だった。確かに私に彼氏が出来たら告白はしてこないかも」


少し不服そうではあるが俺の話を聞いて納得はしたようだ。ジト目で見られることもなくなったので俺がホッとしていると


「でも彼氏作るとか無理だよ?だって私好きな人とかいないもん!」


お前も知ってるだろ?なんて言わんばかりの目をしながら琴平舞衣は正論を突き付けてきた。

もちろんそれは俺も分かっている。だからこそ昨日読んだラノベが活きてくるのだ。


「それは知ってるよ。だから本当の彼氏じゃなくて偽彼氏を作るのはどうだ?」

「偽彼氏?」

「そう!ラノベとか漫画だとよくあるんだよ。告白されるのに困ってる女子が彼氏が出来たフリをして告白されないようにする話がさ」

「確かに漫画とかで見たことはあるけど」


どうやら琴平舞衣も偽彼氏が出てくる漫画を見たことがあるようだ。それなら話は早い!

俺は昨日読んだラノベの『偽物カップル始めました!』を読んで思い付いたのだ。


「それって好きでもない人と付き合わないといけないってことだよね?」

「あくまで付き合ってるフリだよ。相手にもちゃんと説明して偽彼氏である事を理解してもらうんだ。そのうえで好意がない事も伝えておけば安心だろ?」

「そんな都合のいい人見つけるなんて、普通に付き合うより難しくない?」


俺は黙ってしまった。そんな俺を見て琴平舞衣は呆れた顔をしている。確かにそんな都合のいい奴が簡単に見つかるわけないよな。


「というわけでこの案は却下です!」

「結構いい案だと思ったんだけどな」

「なら善通寺くんが偽彼氏してくれるの?」


却下されたと思ったら琴平舞衣が突然ぶっ込んできた。しかし俺は慌てる事はなかった。

何故なら当然そう言われる事を予想していたからである。チラチラと伺うようにこっちを見てくる琴平舞衣に俺は前もって用意していた回答を伝えることにした。


「無理だな」

「断るの早くない!」


琴平舞衣は俺が断った事が信じられないようで何やら喚きだす。


「そんなあっさり断る?話の流れ的には善通寺くんが引き受けてくれるやつじゃん!なのに何で断るのさ?」


何だよ却下したんじゃ無かったのかよ?

若干むくれている琴平舞衣に、俺はため息が出そうになるのを我慢して理由を教える。


「仮に俺なんかが琴平さんの彼氏だと知ったら大屋冨はどう思う?」

「諦めるんじゃないの?」

「そんなわけあるか。俺なんかよりも自分の方が相応しいと思うに決まってるだろ」


もしくは善通寺ごときが付き合えるんなら自分にもワンチャンあるんじゃないかと今より積極的になる可能性まであるはずだ。


「別にそんな事無いと思うけど」


しかし琴平舞衣は頬を膨らませて不満アピールをしてくる。何がそんなに不満なんだよ。

もしかしてそういうことか?


「まぁ悪かったよ。友達の事を悪く言われるのはあんまり気分が良くないよな。大屋冨がどういう奴か知らないけどそういう可能性もあるって話だから怒らないでくれ」

「そういう理由で怒ってる訳じゃないんですけど!てか別に怒ってないし!」


どうやら俺が思った理由では無かったようだ。

でも怒って無いのは嘘だろ?明らかに機嫌が悪くなってるじゃないか。困惑する俺を見て琴平舞衣はため息をついた。


「でも偽彼氏はやっぱり私にはムリかな。そもそも付き合った事がないから絶対にどっかでボロが出そうだし」

「あぁ確かにボロ出しそうだよな」

「何か言った?」

「何も言ってません」


今のは完全に俺が悪かった。ついポロッと言ってしまったのだ。睨まれた俺は目をそらしながら素直に謝っておいた。このまま睨まれ続けるのも精神的に堪えるので俺は話題を変える。


「偽彼氏は置いとくにしても、こういう方向で行くのはどうだ?」

「まぁ確かに悪くは無いかな。姫華をどうにかするより自分の方がやりやすいしね」


どうやら琴平舞衣もこの方向性で行くとに異論は無いようである。


「なら取り敢えずそっち方面で何か良い方法がないか考えてみるよ」

「ありがと!私も考えてみるから」

「じゃあ今日はここまでだな」

「だね!では第一回負けない幼馴染み会議は終了とします!」


琴平舞衣が会議の終了を高らかに宣言する。

第一回ってことは第二回もあるんだろうか?

てか絶対あるだろうな。だって結局何にも決まってないんだもの。


俺は満足そうにしている琴平舞衣を見ながら先が思いやられるのだった。

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