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第6話 実はポンコツで食いしん坊?

『今日はあんまり話せなかったから明日も同じ場所で話をしようね』


琴平舞衣からそんなメッセージが届いたのは昨日の夜の事である。可愛らしいスタンプも添えらているので、ここだけ見ると何とも甘酸っぱい男女のやり取りに見えなくもないが実際はそんな事は全くない。

だってこの話ってのは三角関係をどうやって阻止しようかという話なのだ。甘酸っぱいどころか酸っぱすぎて顔を顰めたくなる。


そんな俺とは対照的に琴平舞衣はイケてるグループの面々と楽しそうに話をしている。

最近はおかしな言動ばかり目にしていたので忘れそうになるが彼女はクラスで1番イケてる女子でとんでもない美少女なのだ。今も友人と話しているだけなのに何だかキラキラしている。ほんと教室にいるだけで住んでいる世界が違うことをまざまざと見せつけられてしまう。


「え〜!今日は舞衣とお昼食べれないの?」

「ごめんね!今日も先生に呼ばれちゃってさ。いつ終わるか分かんないから先に食べてて」


琴平舞衣はそう言いながら両手を合わせてウィンクをする。その辺の女子がやればただのあざとい仕草なのに琴平舞衣ほどの美少女がやると何とも絵になるものなんだな。俺が感心しているとポケットの中のスマホが振動した。


『お昼休みいつもの場所で待ってるから』

『お弁当は持ってきてね』


送り主はもちろん琴平舞衣である。思わず彼女の方に目をやると腰の辺りで小さく手をふりながらほほ笑んでくる。周りにバレないようになんだろうけど余りにもぎこち無くて


「舞衣どうしたの?」

「何だ手でも痛いのか?」


なんて言われながら近くにいた友達に心配されてしまっているじゃないか。

ちょっと顔を赤くしながら弁明している彼女を見ていると俺は思わず吹き出しそうになってしまう。ほんと何やってんだか。ここまでのポンコツっぷりを見せつけられるとさっきまでのイケてる女子とほんとに同一人物かと疑いたくなってくる。


そして迎えた昼休み、俺は1人で旧校舎の非常階段に向けて歩いていた。事前に待ち合わせ場所を決めているので琴平舞衣は昨日みたいなよく分からん誘い方をしてくることはなかった。ほんとあの下手くそなお誘いがないだけで一安心である。


「じゃあ私行ってくるから!」

「いってら〜」

「頑張ってね!」


そう言いながら琴平舞衣はイケてるグループの輪から抜けて教室を出ていった。それを見届けた俺も弁当を持って教室を出る。友人には昨日と同じく先生に呼ばれていると伝えているので俺が教室から出ていっても気にされることはなかった。


こうして何の問題もなく旧校舎に到着した俺は非常階段の扉を開ける。


「おっ!来たねぇ!こっちこっち!」


扉を開けたのが俺だと分かると階段に腰掛けている琴平舞衣は嬉しそうに手招きをしてくる。


「すまんね。待たせたか?」

「全然だよ。私もさっき来たとこだし」

「そりゃ良かったよ」


そう言いながら俺は彼女より一段上に腰掛けることにした。同じ段だと狭くて座りづらそうだったし、下の段にしなかったのはスカートの中が見えるかもしれなかったからだ。前にデリカシーが無いと言われたので多少は意識するようにしたのである。


「さてさて!じゃあ時間もないしお弁当食べながらになるけど話しようか」

「今日はちゃんと目的を忘れてないんだな」

「そうやってまた茶化す!」


琴平舞衣は頬を膨らませて不機嫌アピールをしている。普段教室では見ることのない顔であるがここ数日で俺はよくこの顔を見ているのだ。ということはやっぱり俺にはデリカシーはないんだろうな。気を付けなければ。


「すまん。これで許してくれ」


そう言って俺は弁当に入っていた唐揚げを差し出した。昨日の晩御飯の残りではあるが冷えても美味しい善通寺家自慢の唐揚げである。


「善通寺くん私の事を食いしん坊キャラだと思ってない?違うからね!」


そう言いながら唐揚げを受け取る琴平舞衣を見ながら俺は思うのだ。絶対に食いしん坊キャラじゃないか!


「あっ!これ美味しい!」


受け取った唐揚げをさっそく頬張るとか食いしん坊キャラ以外の何物でもないな。俺は1人納得しながら同じく唐揚げを口に入れる。


「唐揚げで誤魔化さないでよ!」

「なんだよ?美味かっただろ?」

「美味しかったけど!そうじゃないじゃん!」

「もう1個いるか?」

「いいの?」


嬉しそうにしている琴平舞衣を見て俺は笑いを堪えることが出来なかった。


「もう!ほんとに何なの!善通寺くんて私の扱いひどくない?」


琴平舞衣はヘソを曲げながらもしかっりと唐揚げを俺から奪い取っていった。


さっきは余りにもキラキラとイケてる女子っぷりを目の当たりにして尻込みしてしまったが、

こうやって唐揚げでプリプリしている姿や教室で見たポンコツっぷりを見ていると尻込みしていたのがバカらしくなってくる。そして俺はそんな彼女の力になりたいなんて柄にもなく思ってしまうのだった。

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