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プロローグ

「明日どこ行く?」

「私、カラオケ行きたーい」

「この前行ったばっかりだろ?」

「えーもっかい行こうよ!」


昼休みの教室で昼食を食べながら数名の男女が楽しそうに明日の予定を立てている。そのグループは全員がクラスの中心的存在で、しかも全員がもれなく美男美女というオマケ付きなのである。神様にオマケ付け過ぎじゃないかと思わず文句を付けたくなるほどだ。


そんな彼らこそクラスで最もイケてるグループであることは誰の目からも見ても明らで、今も休日の予定を男女で立てるというまさに絵に描いたようなイケてるグループっぷりを発揮している最中だ。そんな彼らはさぞかしキラキラした青春を送っていることなのだろう。俺が1人自分の席に座って彼らを見ながらそんな事を考えているとグループの1人が断りを入れる声が聞こえてきた。


「ごめん!私この土日は無理なんだよね」

「えー!舞衣これないの!」

「ごめんね!家の用事があってさ」


そう言って断っているのはイケてるグループの中でも特にイケてる女子、琴平舞衣ことひらまいである。

すこし茶色がかったミディアムのボブヘアで、

長いまつ毛を装備した目は大きいうえにくっきり二重で多くの男子を虜にする顔立ちだ。さらに制服の上からでも分かる程のスタイルの良さを併せ持つ、まさに天が二物を与えた美少女である。彼女は入学して間もないのにすでに複数人から告白されたらしい。らしいというのは友人から聞いた話だからだ。しかし彼女はその話もあながち間違ってはいないんだろうなと、思わせるほどの美少女なのだ。グループどころかクラスの中でも1番イケてる女子である。


そんなイケてる彼女も土日は家の用事で遊びには行けないようだ。彼らが俺の席の近くで大声で話しをしていたことで、思いがけずクラスで1番イケてる女子の予定を把握してしまった。まぁ把握した所でそれを俺が活用出来るわけではないし、するつもりも無いから彼女には安心してもらいたい。イケてる彼女達と俺では住むステージが違い過ぎて関わる事などないのだ。そんな事を考えていると、購買に昼食を買いに行っていた友人が戻ってきた。


「悪い!購買思ってたより込んでたわ」


そう言って俺の前の席に座る。友人も帰ってきた事だしイケてるグループ観察もここまでだ。なんて思っていると友人が話しかけてきた。


「何だよ、琴平さんの事が気になるのか?」


どうやら俺が琴平舞衣を見ていたと勘違いした様でからかってきた。


「全然気になってない!そもそも俺とはステージが違いすぎるだろ」

「まぁその通りだよな。また告白されたみたいだし。琴平さんほんとモテるよな」


否定する俺に友人は何故かまた新しい情報を追加してくる。やっぱり告白されているのは本当だったようだ。それはそれとして友人にはちゃんと言っておかねばならない。


「俺の目標は平穏な学校生活を送ることだからな。あんなキラキラした青春なんて俺には無理なんだよ」

「それまだ言ってんのかよ。中学ん時からだろ?いい加減もういいよ」


俺の不変の目標をもういいと言われてしまうなんて悲しいものだが、すでにこの話題に興味が無くなった友人は次の話題を話し始める。


「それで今回の春一はるいちのオススメは?」


春一とは俺の名前である。因みにフルネームは善通寺春一ぜんつうじはるいち。俺の名前を聞いた人は大抵もう一度聞き直して、漢字を見た人は必ず読み方を聞いてくるそんな名前である。


「オススメは『おさこい』かな?」

「おさこい?」

「正式タイトルは『幼馴染に恋する私』だよ」

「幼馴染系かぁ」

「面白いぞ。素直になれない奥手な女子が主人公で、自分の気持ちに全然気付いてくれない鈍感系の幼馴染相手に振り向いて欲しくて頑張る話だ!」

「王道だな」

「確かに王道だが、負けない幼馴染の作り方が上手いんだよ!」

「幼馴染は負けちゃいけないのか?」

「そうだ!幼馴染は負けない!負けちゃいけないんだよ!それで皆が幸せになれる」

「流石オタク熱いな。じゃあそれにするわ」

「俺はオタクじゃないって言ってるだろ!」

「はいはい。それより聞いてくれよ!」


俺の主張など興味がないようで友人は自分の話をしだした。くそ!俺はオタクではないと何度言ったらわかるんだ。

しかし友人が話だしたので仕方なく俺はその話を聞くことにする。


こうして友人の話を聞くことに集中したため、俺の事をじっと見ている人物がいることになど気付きいていなかった。そしてこの時の発言が後になって自分の首を絞めるとは思いもしなかったのである。

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