番外:設定集『赫き未来に代償を』ワールドガイド
かつて、人はただ剣と魔法の物語に酔いしれた。
だが今、我々が紡ごうとする世界には「力」の裏に「代償」が刻まれている。
『赫き未来に代償を』は、十三の異形なる“柱”に支配された世界を舞台とする異世界叙事詩である。
本設定集は、物語の根幹を成すその世界の構造、文化、力の体系を網羅し、読者諸君がこの世界に深く入り込むための地図となることを目的とする。
単なる背景資料ではない。これは、代償を払いながらも未来を選び取る者たちの戦いを支える、もう一つの“語られざる物語”である。
いざ、十三柱の記録を開こう。
そこに綴られしは、希望か、絶望か。
それを選ぶのは、読者であるあなた自身だ。
■世界構造と基本設定
◇物語の舞台:「世界軸アーカーシャ」
本作の舞台は、“アーカーシャ”と呼ばれる多層構造の異世界。
この世界には、神々に等しい存在「十三柱」が封じられている。
それぞれの柱が眠る地域は“神骸領域”と呼ばれ、特殊な力場と空間歪曲が発生している。
◇選定者
未来の断片を視ることができる特異体質の者たち。
柱との接触により、“選ばれる”ことでその力を得るが、それには必ず代償が伴う。
代償は“身体の欠損”、“感情の消失”、“記憶の改変”など多岐にわたる。
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■主人公と主要人物
◇ナユタ
本作の主人公。元は日本の高校生だったが、事故死後この世界に召喚された。
死に戻り能力は持たないが、“未来の断片を一度だけ視る”赫光の紋章を受け継ぎ、“正しい未来”の選択を強いられる。
正義感が強く、罪のない者の犠牲を許さない性格。
•能力名:「赫光の視界」
•特徴:未来を選び取る力(視るだけでなく、代償を払うことで“上書き”も可能)
◇リヒト
ナユタの前に現れる謎の黒髪の少年。
かつて選定者でありながら、柱との契約を自ら破棄した過去を持つ“拒絶者”。
「未来は定まっている」と考えており、ナユタとは対照的な立場を取る。
•能力名:不明(契約破棄により消失)
•キーワード:「選べなかった者の後悔」
◇セド
元・聖騎士。柱によって滅ぼされた国の生き残り。
ナユタの導き手として行動を共にする。理知的で冷静だが、内に深い復讐心を秘める。
•武器:重装剣+封印術
•特徴:柱の性質に対する深い知識を持つ
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■十三柱(現在登場済みのみ抜粋)
①騎士王エルへイム(不滅の王)→亡霊の王。死しても滅びず、王国の亡霊を従える。
②灰燼の巨神(終焉の巨人)→神々の怒りを体現する災厄。大地を灰に変える。
③狂夢の織手(夢を喰らう蜘蛛)→夢を通じて現実を侵食する精神系の魔柱。
⑤千罪の剣鬼(血塗れの剣聖)→正義のために千人を斬った者。剣に封じられた魂を操る。
⑧屍花の乙女(腐敗の花嫁)→愛する者を失い、死を撒く花嫁となった存在。次回登場予定。
■代償と未来の視界
この世界において、“未来を見る力”は祝福ではなく呪い。
ナユタが視る未来は一つではなく、無数の可能性の“枝”であり、そのうち一つを選び取ることで他の可能性を“捨てる”。
選択には代償が伴い、それは肉体・精神・人間関係など様々なものを蝕む。
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■魔獣と存在の位階(五体紹介)
攻略対象となる五体の魔獣は、「柱の影」として生まれた疑似存在。
1.裂声竜ティアズル
鳴き声だけで都市を崩壊させる音属性の龍。
2.輪喰の大蛇イフルナス
自らの尾を喰らい永遠に生きる再生型蛇獣。
3.蒼骸猟虎ヴァルマルク
鋼の骨と魔晶筋を持つ、獣系最上級の知能型。
4.夢溶蝶フィオリーナ
狂夢の織手の“破片”から生まれた蝶型魔獣。眠る者の記憶を喰らう。
5.煌斧機獣ガルヴァイン
かつて神々が作った処刑用兵器。意思を持ち暴走中。
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■その他の種族
•アルミレア族:精霊に近い存在。自然と深く結びつく亜人種。
•デスレイン族:かつて柱に仕えた暗黒の一族。契約者の素質を持つが忌避されている。
•ヒュムニア族:人間に近いが、代償に強く耐性を持つ特異種。
■地域設定(主要エリア)
◇《蒼環の王都レルヴィア》
物語開始の地。現在は“七王連合”によって統治されているが、かつては「不滅の王」が治めていた王国の跡地に建てられている。
地下には〈赫き神骸〉と呼ばれる古代遺跡が封じられており、柱の影響が未だ残る。
•特徴:機械文明と魔術が融合した「魔機都市」
•重要施設:神骸塔、選定者の審問所、因果の石碑群
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◇《断罪の荒野ゼル=カリア》
「千罪の剣鬼」が封じられた、血塗れの戦場跡。
土地そのものが“罪”を記録しており、立ち入った者は過去の罪を幻視する。
選定者たちにとっては精神試練の場。
•特徴:常に紅霧が立ち込める荒廃地帯
•危険因子:残響剣(過去の剣士の幻影)
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◇《夢織の森フィル=アリア》
狂夢の織手の影響を強く受けた、常時“夢”と“現実”が重なり合う森。
昼と夜が存在せず、訪れた者は自分自身の深層意識と向き合うことになる。
•特徴:精神汚染、時間錯誤、記憶侵蝕
•キーワード:自己認識との戦い
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■武器と術式
◇契約武装
柱と一時的に“縁”を持った者に与えられる武具。
“記憶”や“未来”を代償とすることで、常識を超えた力を発揮する。
•例)
- 《ヘル=シギル》:罪を刻む大剣。切った者の罪を顕現させる。
- 《アルヴ=リィン》:夢蝶の短剣。敵の夢に干渉する。
- 《トリス=カノン》:三重術式を束ねる魔導杖。
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◇因果術式
この世界特有の魔術体系。未来・過去・現在を編み直し、“因果律”そのものに干渉する。
極めて危険な術式のため、国家ごとに制限されている。
•基本系統:
- 遡因系:過去を一時的に再現
- 断絶系:因果の一部を切り捨てる
- 投影系:可能性世界の一部を投影して顕現
•上級術例:
- 《未来焦土》:可能性の中の“最悪の未来”を現実に召喚
- 《残響収束》:死者の最期を束ねて爆発させる術
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■宗教・神話体系
◇世界観神話《十三契約録》
古代より伝わる神話文書。十三柱と人類が結んだ最初の“契約”が記されている。
現在は封印指定書物となっており、内容の大半は国家により伏せられている。
•契約の内容:人類が力を得る代わりに、“代償”という形で自己犠牲を強いられる
•禁忌:十三柱の力を完全に引き出すこと(世界の崩壊を招く)
◇主な信仰体系
セレス統一教 →太陽と因果の女神を崇拝。選定者の正統性を認める。
無相教会 →“形なき真理”を信奉。柱を神と崇めるカルトに近い存在。
転輪信仰 →生と死を輪廻と捉え、代償による成長を神聖視。
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
設定集は世界の「裏側」への扉であり、物語に登場する数々の謎の“意味”を補完するための鍵です。
代償とはなにか。柱とはなにか。未来とは選ぶものか、それとも抗うものか――
そうした問いへの一つの答えが、この設定の積み重ねにあります。
ただし、これらの情報は“完成された事実”ではありません。
物語が進むにつれ、事実と虚構は入れ替わり、真実は常に揺らぎます。
それもまた、この世界の“因果”に他なりません。
願わくばこの記録が、あなたにとっての「赫き物語」の道標となりますように。
そしてその旅路の先で、あなた自身の“選択”が世界を変える一撃となることを――