第二十四話『赫光、影を穿つ剣となれ』
かつて救われなかった者と、救おうとする者。
光と影、赦しと拒絶──二つの意志が、今、剣となって交差する。
これは、“過去に抗う戦い”ではない。
未来を諦めなかった者が、ただ今を貫くための戦いだ。
都市が、沈んでいた。
《トワイライト》の地盤は軋み、建造物の影は巨獣のように蠢いている。
闇の核──“拒絶された未来”そのものが暴れ出し、都市全体を飲み込もうとしていた。
その中心で、二人の剣士が対峙する。
ナユタ・クロイツ。
赫光を宿し、未来を選び続ける者。
トゥレイル・ノクト。
赫光を拒み、選ばれなかった影を背負い続けた者。
「最後に問う。ナユタ・クロイツ。お前の赫光に、誰かを救う資格があると──本気で信じるのか」
その問いに、ナユタは答えた。
「ないかもしれない。
誰かを選ぶってことは、誰かを見捨てることと、同義かもしれない」
赫光が、静かに、しかし確かに灯る。
「けど、それでも俺は選ぶ。
この手で、未来を掴みたいんだ。たとえ不完全でも、諦めたくないから!」
その叫びと共に、赫光が“変化”する。
赤ではない。銀でもない。
それは、影を内包した白金の赫光だった。
「赫光……変わった……?」
トゥレイルの瞳が揺れる。
その赫光は、かつて彼が拒絶したすべてを包み込む光だった。
「いくぞ、トゥレイル!」
ナユタが踏み込む。
赫光が“未来”を示さないまま、ただ“今”を切り裂くために、剣を振るった。
トゥレイルもまた、双剣を構える。
闇が彼の背から噴き出し、“赫光殺し”の刃が交差する。
──そして、剣がぶつかった。
光と影が交錯し、音もなく世界が割れた。
その瞬間、都市全体に“光”が差し込む。
夜が、裂けた。
空の一点、黒の帳が破れ、わずかながら“朝日”の色が流れ込んでくる。
「これは……光……?」
市民たちが目を覚まし、崩れかけた都市に顔を向ける。
それは、トワイライトにとって十三年ぶりの朝だった。
「……俺は……」
トゥレイルの双剣が砕ける。
赫光に“完全な破壊”はなかった。
それは“拒絶”ではなく、“受容の一撃”だった。
「ナユタ・クロイツ。お前の赫光には、俺が知らなかった“今を照らす力”がある」
トゥレイルは、仮面を外す。
その表情には、かつての“少年”の面影があった。
「……俺を、光の側に立たせてくれる未来が、あったのかもしれないな」
そして彼は、静かに目を閉じる。
その身体が光に包まれ、影となって消えていった。
赫光が、都市を照らす。
未来視ではない。“今ここにある意志”として、確かに灯る光だった。
──こうして、“夜の支配者”編、終幕。
だがそのとき、ナユタの視界に、かすかなノイズが走った。
《……視たな。赫光の“進化”を……》
《では──次の試練を与えよう》
不意に、赫光が警告のように脈動する。
その予兆は、まだ姿を見せぬ“新たな柱”の来訪を告げていた。
第二十四話、お読みいただきありがとうございました!
今回は、ナユタとトゥレイルの決着、そして赫光の“第三段階”への進化が描かれました。
赫光はもはや“未来視”に依存せず、「今を選ぶ剣」として真価を発揮し始めています。




