第十九話『夜の支配者、闇より来たる』
双面の処刑人との決着を経て、新たな舞台へ。
ナユタの前に現れるのは、「赫光を憎む者」。
次なる柱、“夜の支配者”──
それは、闇そのものとなった存在だった。
──夜が、消えなかった。
異常だった。
空が、日を拒むように黒く染まり、
星々すらも“沈黙”していた。
「太陽が、昇らない……?」
ナユタたちが足を踏み入れたのは、
“常夜の都”と呼ばれる封鎖区域。
そこは十年以上前から、“一切の光”を拒絶し続けていた都市だった。
「ここが、“夜の支配者”の領域……か」
リヒトが呟いた。
彼の赫光も、ここではかすかにしか灯らない。
──光を殺す空間。
そして、闇の中で“何か”が動いた。
「光が、嫌いだ」
「赫光など、滑稽だ」
低く、澄んだ声。
けれどその響きは、世界そのものに突き刺さるような冷たさを持っていた。
──闇夜の狩人
第十一柱にして、“赫光の正反対”に位置する柱。
「ナユタ・クロイツ。お前は、光の名の下に“多くを焼いた”」
「俺は、“見えなかった者”を守る者だ。──闇に還れ」
次の瞬間、ナユタの赫光が、かき消された。
「ッ……赫光が……!」
まるで世界がナユタの存在を拒絶するかのように、
彼の光が、“影”に呑まれていく。
「お前が照らした光の下で、どれだけの影が生まれたか。
──その影に、殺される覚悟はあるか?」
その言葉に、ナユタは思わず言葉を詰まらせる。
(俺が、選んだ未来……その裏には、照らされなかった人たちが──)
“赫光”は、希望であり、暴力でもあった。
その真逆の存在が、今、ナユタに牙を剥く。
「次の試練だ。“光の罪”を見せてやる」
ナユタの視界に、闇の記憶が流れ込んでくる。
かつて照らされなかった路地。
夜に消えた声。
“助けを叫んでいたのに、誰にも届かなかった者たち”。
それが、“闇夜の狩人”が守り続けてきた世界。
「俺は、光ではなく、“見捨てられた影”に立つ」
赫光の継承者と、光を憎む支配者──
相反する存在の、最初の衝突が始まった。
第十九話、お読みいただきありがとうございました!
ここから新章《夜の支配者》編に入ります。
今章は“光の正しさ”を真っ向から否定する存在──ナユタの力の“副作用”と対峙する内容になります。
感想・評価・お気に入り登録、引き続き応援よろしくお願いします!