第十八話『過去と対峙する未来の剣』
“双面の処刑人”が提示する最終審判──
それは、“ナユタ自身の過去”と向き合うこと。
逃げてきた選択と、失った記憶の本質が明かされる。
闇の中に、ただ一振りの剣が突き立っていた。
それはナユタがまだ名も赫光も持たなかった頃、
「未来を選ぶ資格を得る前」に、
ある決断を棄てた場所だった。
「ここは……」
空間は無音。感情のない黒の領域。
ナユタの赫光すら沈黙し、彼自身の存在が曖昧になる。
──そして、彼の“過去の姿”が現れる。
少年のナユタ。
怯え、迷い、泣きながら剣から目を背けていた。
『どうして“選んだ”んだ? あの時、お前は俺たちを見捨てたじゃないか』
彼の周囲に現れる、幾つもの自分。
未来を諦めた自分、
選べなかった自分、
怒りに飲まれた自分──
それらがすべて、ナユタ自身の“欠片”だった。
「……もう、見ないようにはできないんだな」
ナユタは剣に近づく。
赫光はここでは機能しない。
彼が手に取ろうとするその剣は、“赫光が宿る前の剣”。
けれど──
「選べなかった俺を、俺が赦さなきゃ。
これから誰かを救うってことは、“俺自身”も赦さなきゃいけないから……」
手を伸ばす。
握ったその瞬間、剣が紅く光を帯びる。
──赫光の変質。
それは過去と未来、どちらかを切るものではなく、
“交差させて進む”ための光だった。
双面の処刑人の声が、上空から響く。
『罪を認め、それでも前を向く覚悟──その剣に宿る資格を、確かに見た』
剣が収束する。
赫光が新たな姿、“白銀と赤の二重螺旋”となってナユタを包み込む。
「ありがとう、“俺”。これからは、お前の分まで選ぶよ」
過去の自分が微笑む。
──そして空間が解ける。
目を覚ましたナユタの前には、双面の処刑人が立っていた。
「お前は“裁かれるべき者”ではない。“裁きを引き受ける者”だ。
よって、この試練──完遂と見なす」
処刑人が剣を下げ、深く礼をする。
その瞬間、彼の顔の仮面が自然に砕けた。
「罪と罰の番人は、ここに退場する。
次なる舞台へ進むがいい、“赫光の継承者”よ──」
風が吹く。
新たな“赫光”を宿したナユタが、また一歩、未来へと歩み出す。
お読みいただきありがとうございました!
この回では、ナユタがついに“自分自身の罪”と対峙し、それを受け入れることで赫光が進化しました。
彼の剣は、もはや「選択の剣」ではなく、「赦しと歩みの剣」となりつつあります。
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