第十七話『未来に葬った死者たち』
“双面の処刑人”によって告げられた罪──
それはナユタ自身が「選ばなかった未来」によって生まれた“失われた命たち”。
彼は今、“過去を悼む”ことを強制される。
──空間が、変質した。
ナユタの足元が崩れ、世界がねじれる。
気づけばそこは、“死者たちが語られない世界”。
音のない灰の大地に、白い墓標が無数に立ち並んでいた。
「ここは……?」
『お前が選ばなかった未来の墓場だ』
声がした。
目の前に現れたのは、“仮面の裁き手”。
──第七柱・双面の処刑人。
その顔は右が無表情の仮面、左が涙を流す素顔。
「お前が“未来視”を使って選び取った救いの裏で、
どれだけの命が“棄てられた”と思っている?」
ナユタは言葉を失う。
赫光で“救った”人々の顔が、脳裏に浮かぶ。
そして──その裏にある、無数の“救えなかった存在”。
──災害で間に合わなかった村。
──誰も名を知らない孤児。
──見捨てた敵兵。
「見ろ。これがお前の罪だ。
“誰を救うか”という選択は、“誰を救わなかったか”という罪になる」
ナユタは叫ぶ。
「そんなの、わかってる!!
全部なんて、救えるわけがないって、そんなこと……最初から──」
だがそのとき。
一つの墓標から、声が聞こえた。
『ナユタくん……』
その声に、ナユタの瞳が見開かれる。
小さな影──かつて、助けられなかった少女が立っていた。
あの戦乱で、炎の中に消えた少女。
「君を、助けたかった……でも、できなかった……!」
少女は笑った。
『ううん、わたしは、助けてもらったよ。ナユタくんが別の人を助けたって、“悲しんでくれてる”なら──それで、いいよ』
それは赦しではない。
ただ、“受け止めてくれる未来”だった。
「ナユタ・クロイツ。
お前が罪を理解し、なお未来を選び続ける者ならば──」
双面の処刑人が、二振りの剣を突き立てる。
「次の審判に進むがいい。“お前自身の過去”が、次なる試練だ」
赫光が応える。
今はまだ震えている。けれど、確かに進もうとしている。
ナユタは歩く。
彼が“救えなかった者たち”に背を向けず、前を向くために──。




