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第十四話『選べ、怒りか赦しか』

“怒り”を選んだナユタと、“赦し”を口にするリヒト。

二人の赫光保持者が対峙する中、“血濡れの道化”の記憶が開かれていく。

救うとは何か。壊すとは何か──その境界線が試される。


血の匂いが、風に混じっていた。


 かつて美しかった石畳の劇場都市は、今や**紅い劇場カルミナ**と化していた。

 街そのものが舞台。市民は観客であり、演者でもある。

 この歪んだ世界で、ナユタとリヒトはついに、正面からぶつかる。


 


 「お前は……それでいいのかよ。代償を払って、記憶を失って……それでも“選んでよかった”なんて言えるのか」


 リヒトの声は怒気を含んでいた。


 彼は“赫光”を持ちながら、ナユタとは違う道を選んできた。


 


 「……彼女は、生きてる。俺のことなんて、どうでもいい」

 「それは“お前が諦めた”からだろう」


 


 ナユタが睨み返す。


 「お前は、選ばなかったのか? 誰かを助ける未来を!」

 「助けたさ。けど、それで“俺のすべて”を失った。だから俺は、“選ばない”ことを選んだ」


 


 リヒトは、赫光を宿しながら、それを“拒絶する者”だった。

 彼の赫光は黒く、まるで“焼け落ちた希望”の残骸のように歪んでいる。


 


 そのときだった。


 劇場の中心、音もなく“紅いカーテン”が裂けた。


 


 現れたのは、血濡れの道化──リコメディア。

 その仮面が、ひとりでに落ちる。


 


 「……ようやく、主役が出揃ったようですね」


 


 仮面の下から現れたのは、かつて“人間”だった男の顔。


 泣きながら、笑っていた。


 


 「私は、王に仕えた道化でした。戦争を止めようと、民を笑わせ、希望を歌った。

 ……けれど、王は笑わなかった。民は死んだ。私も、殺された」


 


 それが、“血濡れの道化”の過去。


 彼は誰よりも“赦したかった”。

 けれど誰にも“赦されなかった”。


 


 「だから私は、“人の死”を“喜劇”に変えた。

 そうでもしなければ、この世界の惨さに耐えられなかったからだ!!」


 


 リヒトが剣を抜く。


 「……哀れな奴だ。けど、赦しを履き違えた。お前のそれは、“逃げ”だ」


 ナユタもまた、剣を構える。


 


 「……あんたの気持ちは、わかる気がする。でも、それでも──

 誰かを笑わせるために、人を壊しちゃいけないんだよ」


 


 赫光が、二人から同時に放たれる。


 赤と黒の赫光が交差する。


 


 これは、“赦し”と“怒り”の最終審判。


 舞台の幕が、ゆっくりと下りていく──


 


 ──そして、その下で、ナユタは“道化を終わらせる方法”を見つけ出す。

第十四話、お読みいただきありがとうございました!


“血濡れの道化”の正体と、ナユタとリヒトの本質的な対立が描かれました。

「怒りに飲まれるか、赦す道を選ぶか」──どちらも正しくて、どちらも苦しい。その選択が今、問われています。


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