第十一話『笑う死神、泣けない道化』
「人を殺しながら、笑わせる」
第八柱『血濡れの道化』の道化劇が、静かに幕を上げる。
今回から始まる長編では、ナユタが“怒りと正義”の境界で揺れ動きます。
街は静かだった。
いや、違う──“不自然な静けさ”だった。
ナユタはその気配に気づいた瞬間、街の中心に足を止めた。
広場の石畳には、血の染みが広がっている。
けれど、死体はない。
その代わりに──
「……これ、笑ってる……?」
倒れている人々の顔には、“笑顔”が貼りついていた。
口元が裂け、目尻が吊り上がり、まるで狂った喜劇を見た後のように。
「おかえりなさい、“赫光の継承者”さん」
舞台のように飾られた噴水の上、赤と黒のピエロ服を着た存在が両腕を広げた。
顔には仮面。口元はゆがんだ笑みのまま凍りついている。
──第八柱、『血濡れの道化』。
「どうかお付き合いください。“笑い殺しの一幕”、開演ですッ☆」
次の瞬間、広場の四隅から“観客たち”が現れた。
皆、笑いながら、泣きながら、震えながら──演者となって踊っていた。
「ナユタ!」
クラリスの声。
彼女が見ていたのは──仲間のひとり、ミオルだった。
彼女もまた、笑っていた。
「ナユタぁ……たすけてぇ……たのしいのに、いたいよぉ……!」
赫光が震えた。
ナユタの胸の奥に、これまでになく強い“怒り”が燃え上がる。
だがその瞬間──未来が、見えなかった。
「……嘘だ。視えない……? これまで一度もなかったのに……!」
血濡れの道化は軽やかに舞う。
「“未来”を視る? それは退屈な舞台ですねぇ。
私の喜劇は、予測できないから楽しいんですよ!」
演者たちが舞う。
観客が血を流して笑う。
その中心で、“狂気のピエロ”が軽やかに踊っていた。
「……次は、あなたの番です。赫光の主人公さん♡」
ナユタは剣を構える。
赫光が警告のように明滅する。
この“道化劇”は、過去最悪の舞台となる。
ここから「血濡れの道化」編がスタートしました。
彼の道化劇は“未来視”を拒む、“予測不能な狂気”としてナユタの信念を揺さぶります。
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