表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/29

第八話『腐敗の花嫁と死の庭園』

“十三柱”──その一柱、“屍花の乙女”が目覚める。

彼女の庭は死に満ち、愛を語り、終焉を花開かせる。

ナユタは“愛するとは何か”を問われることになる。

森を抜けた先、空間そのものが腐敗していた。


 まるで世界の色彩が死に染まったような場所。

 そこは、“屍花の乙女”が咲く場所──《死の庭園》。


 ナユタとリヒトは、胸に息苦しさを覚えながら、花々に囲まれた古びた祭壇へと足を進めていた。


 「この空間……ただの魔力じゃない。感情が、染みついてる……」


 リヒトがそう呟いた瞬間、花弁のような霧が舞い、その中心に一人の女性が現れた。


 透き通るような肌、血のように紅い唇。

 そして、全身を包む白いウェディングドレスには、朽ちた蔓と骨の指輪が絡んでいた。


 「ようこそ、私の庭へ──赫光の継承者。あなたも“花婿”を求めに来たのかしら?」


 それが、“腐敗の花嫁”──屍花の乙女。


 彼女の声は甘く、死の匂いが混じっていた。


 「……違う。俺は、あんたの試練を終わらせに来た」


 「ふふ、強がり。愛を知らない者に、私を終わらせることなんてできるかしら?」


 乙女が手を振ると、死の庭に咲き誇る花が咲き乱れる。

 だがその花は、すべて“人の記憶”でできていた。


 ──かつて愛された人。

 ──決して届かなかった想い。

 ──見捨てられた誓い。


 「これは……過去の、恋人たち……?」


 「ええ、すべて“選ばれなかった私”が生み出した愛の亡霊。

 あなたが誰かを愛したことがあるなら──この庭は、あなたの命を咲かせてしまうわ」


 花嫁の瞳に、静かな怒りが宿る。


 「私は“愛されること”を望んだ。でも、誰にも選ばれなかった。

 だから、私はこの庭で永遠に待つの。私だけを見てくれる、“運命の人”を」


 ナユタは静かに剣を構える。


 「それは愛じゃない。選ばれなかった過去に縛られて、誰かを巻き込むのは、ただの執着だ」


 「……ならば証明して。あなたの“未来”には、誰かを愛す覚悟があるのかを!」


 その瞬間、死の庭園が咲き乱れる。


 蔓が蠢き、骨の花が咲き、記憶が具現化してナユタの心をえぐる。


 ──あの時、誰かを助けるために、誰かを見捨てた記憶。

 ──自分を想ってくれた者の存在に、気づけなかった未来。


 ナユタは一歩も引かずに叫ぶ。


 「俺はまだ、本当の“愛”を知らない。だけど、それでも──誰かを諦めたくないんだ!!」


 赫光が咆哮を上げる。

 そして、死の花園に、“赫き未来”が一輪、咲き誇る。


第八話、お読みいただきありがとうございました!


“屍花の乙女”編に突入しました。

今回は「愛されなかった者の復讐」そして「愛を知らない者の挑戦」がテーマです。


感想・評価・ブクマ等、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ