7話 カースソルジャーよりヤバいヤツ
後書き追加しました〜
「ただの『テンプレ』だ。気にするな。迷子か? 俺は怪しいものじゃない。俺はイーウ。反聖典主義組織の一員さ……」
「リフレクション……? なんだそれは? 聞かない名だな……」
ハルスは男と会話しつつ、脱出ルートを探る。
男は肩を竦め、
「まぁ、まだ知名度は低いな……反聖典主義組織ってのは、要するに、聖典なんて嘘っぱちで、この世でもっとも尊いとされる『命の王』なんてただの教団が作り出したプロパガンダ用の虚像でしかないっつーことを言い回る集まりだな」
(女神教の敵対組織か? 珍しいな)
「へぇ……それはなかなか反骨精神溢れるイカした組織じゃねぇか……確かに神はいねぇ。いるとしたら、そんなのクソッタレ女神だ」
ハルスたちがいた世界には『女神教』が広く信仰されていた。
もちろん『女神』や『従属神』や『使徒』の功績を綴った『聖典』も存在しており、かなりのボリュームになる。
『女神』の存在は空想の賜物ではなく、『万年序列一位精霊国フーマー』の神都《安楽の地》の上空に不可視の国が浮かんでおり、そここそが『女神』の住まう『天国』であるが、『地上世界』では『フーマー国』の一部の者しか知られていないが、時折、『地上の者では対処不可能』の『壊れ落ちたモンスター』を『討伐』するため『地上に降り立つ』こともあり(といっても、本体ではなくたいがいシャドーで片がつくが)、実質の『世界の守護者』であったりする。
このように実態のある存在のため、その存在を疑う者は少なく、ほとんどの国で国教としているため、それに疑義を申すなど、国に反逆することと同義なため、異を唱えること自体ハイリスクリとなるため、もしも疑義があるとしても地下組織でしかない。
そんなことを迷子の幼女たちに言うなど、かなり頭のぶっ飛んだ奴だと、ハルスの仲で、警戒心が何段階も上がる。
「女神……? いや、男神だな。俺たちがヘイトを向ける神は。『リーダー』曰く『あんなに美形じゃねぇ。もっとこう……なんつうか……俺みたいにへちゃむくれだな……自分で言って傷ついてきたぜ……』らしいが、『さすリー』何言ってるか分かんないぜ!そこにおれは痺れて、憧れるんだな!」
イーウという男は、反聖典主義組織の主義に共感して活動しているわけではなく、『リーダー』に憧れを抱いて行動をともにしているだけである。
しかし、そんなことをハルスは知る由もなく、
「そ、そうか……俺のツレにも、『神はなんか俺に似ていたかも』なんていうイカれた奴がいた。その『リーダー』さんと仲良くできそうだ」
『女神』以外の『従属神』をトップに据えたり、他の『神』を祀る『異端教』に異を唱えるなど、ハルスの中で目の前の男の『警戒度』がさらに増す。
宗教組織に良い思い出のないハルスは、セイラと逃げようとするが、あいにく、後ろは壁だった。
ハルスは油断なくイーウの一挙手一投足に注視するが、存在値『脅威の170』に汗がどっと吹きでて止まらない。
(まさか『カースソルジャー』よりヤバいヤツに出会うなんてな……)
魔王城で『カースソルジャー』に遭遇した時のハルスの存在値は、95〜96あたり。
一方、『一体目』の『カースソルジャー』の存在値は、105。
『5才』で『冒険者試験』に受かって『冒険者』になって敵なしのハルスにとって、『カースソルジャー』は久しぶりの好敵手だった。
かなり苦戦を強いられたが辛くも勝利できたのであるが……
それから『セイラ』に出会って『カースジェイル』が発動し、『変な方言の黑ギャル』と『そのヒモ』と『冒険者試験』で様々な敵の『経験値』を得て、ハルスの存在値は、前人未到の『110』にまで、上昇したのだが、それでも、目の前の男、『イーウ』にまだ全然届かないのだ。
ちなみに『存在値』というものは、『レベル』や、『魔法』、『グリムアーツ』、『スキル』など『ステータス』のもろもろの『総合評価値』であり、存在値が高いほど強いと考えて良い。
ハルスの持つ『サードアイ』では、他者の存在値をデジタル的に読み取ることは不可能であるが、自身のコアオーラと存在値の相関関係より、だいたいであるが、他者のコアオーラより存在値を類推できる。
『総合値』をスカ●ターのようにデジタル的にはっきりと読み取ることができるのは『セブンスアイ』からであるところを鑑みると、ハルスが如何に超人的で才能溢れる青年であるか、おわかりいただけだであろうか……(今は幼女だけどね)。
それほどのハルスをして、存在値『170』は、遥か彼方の高みにあった。
少しでも呑まれたら、
立ち直ることは永久に叶わぬ、
寄るべなき、絶対的な絶望であった。
(少し言い過ぎかもしれないが、ピ●ーとプ●の念に触れたノ●みたいな絶望的な状況である)
しかし、ハルスは諦めない。
右手をあげ、そっと呟く。
「サテライト・エクスカリバー二式」
すると、虚空より、二振りの聖剣が召喚され、ハルスとセイラを守るように展開した。
『念力』により、自由自在に動かせるオールレンジの『剣翼』兵器であり、ハルスが磨き上げた『グリムアーツ』。
とっておきの秘密の切り札の一つ。
これなら、縮んだ身体に影響されず、戦闘ができる。
「うわぁ……お嬢ちゃん、何者!? 滅茶苦茶警戒されてんなー。お兄さんは、怪しいものじゃないよー」
男は驚きつつ、両手を上げて、無害さをアピールする。
「怪しい人ほど怪しくないと言い張るんだって♥おじさぁん♥」
5才とは思えないほどの小悪魔的な毒のある妖艶さを醸し出す笑みを浮かべつつ、ハルスは虎視眈々と隙を伺う。
ハルスとイーウの存在値に絶望的な開きがあることを前述したが、こと戦闘において、他にも大きく影響を及ぼすものがある。
それが『戦闘力』である。
戦闘力は、存在値のように数値化されるものではなく、格闘センス、技の熟練度、判断力、動きの機微を捉える力など、ステータスに現れることのない指数。
実戦経験豊富、かつ、幼い頃からたゆまぬ努力をしてきたハルスの戦闘力は、齢17にして、老境、仙境の域に到達していた(今は可愛い幼女だけどね)。
存在値の優劣をひっくり返すのが、戦闘力である。
そのため、ハルスは自身の存在値を上回った『カースソルジャー』の討伐に成功したのだ(その『カースソルジャー』の戦闘力もなかなかのものだったというのがハルスの評価であり、悟●にとっての天●飯、ピッ●ロ、ベジ●タみたいなライバル的な存在といえようか……ん? 何か言いたそうですね……なになに? アイツは100体くらい敵の周りをウロチョロさせるデバフ要員であって、戦闘力なんて皆無ですって? またまたご冗談を…… 冗談はそのへちゃむくれ顔だけにしてくだちゃい)。
とはいえ……
(す、隙がねぇ…………ッ!!)
男は「お、おじさん……こう見えても俺はまだ若者でいるつもりだったんだが……」ガーン
と、_| ̄|○ il||li と一見隙だらけだが、ハルスの目は誤魔化せない。
さすが、勇者の『サードアイ』は、格が違った。
ここで、一つ、ガックシ男『イーウ』について、少し説明したい。
イーウは、第2〜第9アルファを統治する超々々々々法規的組織『ゼノリカ』が信奉する『センエース神帝陛下』の活躍を描いた『聖典』の内容に『イチャモン』をつける活動の反聖典主義組織の一員であるが、活動自体はそれほど熱心ではない。
その組織の『リーダー』の『ヒトカド・イッツガイ』に憧れて、入団して、リーダーがその活動に取り組んでいるので、自分も同じようにしているだけだ。
なので、ある日突然、リーダーが「リラ・リラ・ゼノリカ」と聖典教の熱心な信者になれば、イーウはなんの躊躇いもなく(一見して)熱心な聖典教信者になるし、同僚の『スール』を売ることもできてしまう。
ちなみにイーウが登場時に、名探偵コ●ンの常套句を口にしたのは、リーダーの口癖を真似ただけだったりする(イーウ『も』第一アルファ出身ということは、『原典』で明かされていないので、第2アルファの人物だと考えられる)。
実はイーウの存在値は、170もない。実際は134だった。
『リーダー』から渡された『存在値が170と誤認させる腕輪(存在値170のフェイクオーラを出すことで相手を騙す。生半可なプロパティアイでも看破できないかなりクオリティの高い一品)』により、『170の男』を演出しているのだ。
『リーダー』は、聖典教団から指名手配されており、それを誤魔化すためにそんな腕輪をイーウはつけているのである。
イーウの存在値が実は170もないことがわかったとしても、ハルスはただの数字だけで判断しているわけではない。
存在値がいかに高くなろうと、戦闘力がカスであれば、ハルスはそれを見抜くことは余裕でできる。
数値だけのハリボテであれば、ここまで、警戒されなかった。
警戒されるに値する戦闘力をイーウは、有しているのだ。
イーウは、たまに『リーダー』に戦闘の師事をしてもらっていた。
そもそもが『リーダー』の武の極地を目の当たりにしてにつきまとうようになったのが発端であったりする。
さらに反聖典主義組織のくせに聖典教団の『楽連』の教え子の『愚連』のA級武士が師範をつとめる道場に通っている運動家でもある。
イーウの武は、もはや、『B級武士』に到達しており、その実力は本物だった。
(今の俺ではどう足掻いても逃げるのは不可能!! 規格外の『化け物』め……!!)
ハルスはセイラだけでも安全な場所に避難させたかったが、それすらも困難だった。
ハルスは経験上、存在値が高いほど、どこか『バグ』っていることを知っていた。
それは残虐性や異常性癖などに顕著に現れていた。
しかも、マイナーな神の聖典に異を唱える狂信者とした。
もしも、セイラが捕まってしまったらどんな仕打ちを受けてしまうのかと発狂してしまいそうだった。
(イーウは迷子の幼子たちを保護しようとしただけなのであるが……)
さもなければ……
(いっそこの手で……)
と考えていると、
「ッ!? グボォォォォォォ!?」
イーウに一瞬で詰められ、鳩尾に一発。
大量に喀血する。
消える意識の中、「お前、あの娘を殺そうとしてたな……」とイーウの心の底から悲しそうな声がした。
どうして会ったばかりの他人にそんなに気にかけることができるのか、ハルスは疑問に尽きなかった……
作者「『イーウ』についてわかっていることは……」
作者「『リ ー ダ ー 』 大 好 き ! !」
作者「リフレクションなんか割りかしどうでもいいよ」
作者「くらいです……ガチで。わたしなんて、まだまだ初心者なので、『ガチ勢』ならもっと情報出てくるはず!」
作者「『イーウ』の情報求む!」