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6話 糞アマ奴隷からの開放! 忌まわしき汚物は消毒だ! ヒャッハー!

 


 ハルスはついに確信を得る。

 あの忌まわしき『呪い(カースジェイル)』が解けたことを。


 その瞬間、ハルスの頭にあるのは――――――――――





 ―――――――セイラの殺害だった。




 セイラは今はまだ10才だが類稀なる資質、才能を有しており、5年後は目を見張るものがある。

『黒騎士パール・クレオール』のように『付き合って損のない人間関係』を築けると予測していた。


 だが、まだ、5年もの歳月がかかるのだ。

 それまでに『どのような不幸』に見舞われるのか分かったものではないし、

 現在進行系で、『過去のトラウマ』に苦しみ続けている。


 ハルスはセイラのことを『知りすぎてしまった』。

『ただの一介の不幸な子供』として見ることはできなくなった。


 魔王城で『サリエリ』によって保護されていた『戦争孤児や奴隷の子供たち』を即座に広域殲滅魔法で殺害しようとしたのは、『一秒でも早くこのクソったれの世界から開放したかったから』という『狂おしいほどの本音』もあるが、『ほんの少しでも情が湧くのが怖ったから』というのもあったりする。


 そのため、『あの路地裏でセイラに出会ってから』、片時も忘れることなく、ハルスは『セイラの速やかな死』を願っていた。


 目の前の10才の不幸な少女は、苦しむこともなく、即刻、この世界から消えるべきなのだ。


 ハルスはそんな自身の心の動きに気づかないふりをする。


 奴隷から開放されて、

 この憎たらしい胸糞悪いアマをやっとブチ殺せる、

 ただそれだけ十分だった。


「糞アマ奴隷からの開放! 忌まわしき汚物は消毒だ! ヒャッハー!」


 吠える。

 あえて、口に出し、叫ぶ。

 己を鼓舞する。


 勇者?


 そんなもん、倫理・道徳的に優れる必要はねぇ。


 いや、そんな『糞の役にも立たない価値観』は置き去りにして、『どこまでも高く』、『だれよりも自由に』、『翔べる奴こそ』が――――――勇者なのだ。


「ぇ………………」


 ハルスの突然の豹変に硬直するセイラ。


 姿形は違うが、醸し出す雰囲気が、出会ったばかりの頃に戻ったようだった。


 その間も、ハルスの脳みそは、目まぐるしく動いていた。

 超人的な勢いで思考を加速していた。




 そして、ついに――――――――――『合理的な回答いいわけ』を得た。




(セイラの頬に傷をつけた段階でセイラとの『カースジェイル』による『縛り』の解除を確認した。つまり、『いつでも』、セイラをブチ殺せる。だが、それは、『今』じゃねぇ。幼女化したことで、『セイラ以外も』『カースジェイルの対象範囲外』になったとは『まだ確定』してねぇッ!! もしも『次に俺が殺意を向けた相手』が『幼女趣味のド変態野郎』だとたまったもんじゃねぇ!! それは困る!! 滅茶苦茶困る!! 『とにかく』『俺』が困る!!)



『カースジェイル』



 最強召喚士ラムド(実際はその『中の人』は違うが)によって与えられた、一部の行動を縛り、姿形さえも変貌せしめる、魂魄への状態異常――――――『呪い』。


 その『呪い』の発動条件は、ハルスが『自身に対する悪意なき者』に対して『殺意』を抱くことで発動する。



 呪い一覧

 ・殺意を向けた相手のドレイとなる

 ・魔人に変異する

 ・今後、一切、己に対する悪意なき者への暴行不可




 今はどういうわけかセイラに対して発動しなくなっていた。 


 そのため、『セイラ以外の誰か』に『カースジェイル』が発動してしまい、ハルスはその『誰か』の『奴隷』となってしまう。


 今の姿は『美幼女』以外の何者でもなく、『セア聖国代表プッチ』のような『幼女』に『悪意』ではなく『色欲』を抱く『ロリコン』の奴隷になる恐れがあるのだ。


 けれども、ハルスの自身でも認めない、『本当の胸の裡』は、違う。


 もしも『あの路地裏の状況』になったら、今度こそ、『セイラを救う手立て』がなくなる。


 そうであればこそ、今この瞬間、1秒でも早くセイラの息の根を止めるべきなのに、ハルスは、『綻びのある合理』に従うことにした。




 すなわち――――――





「はっ……! 本当、お前は役立ずだな。 お前のせいでこんなわけのわからねぇところに飛ばされて、冒険者試験に落ちるかもしねぇし! 正直、目障りで、お荷物なんだよ!」


「ハ、ハルス…………?」


「いつも泣きそうにしやがって、ウザくてウザくて、もう我慢の限界なんだよ! だから、もう、お前の奴隷のフリをするのはやめだ。 色々と鬱憤は溜まってるんだ。こんなナリだが、お前の身体を滅茶苦茶にして、色々と滅茶苦茶のズタボロに使い込んで、奴隷商に売り払ってやんよ! それか殺してくださいと懇願するまで痛めつけるのもたまらないなっ! あー! 殺してー!! すんげぇ、殺してー!! 殺したくて殺したくて頭がぶっ壊れそうなほど、殺してー!! 本気で殺したくて殺したくてうずうずして殺したくてたまらなくて、殺したくて殺したくて殺したいんだ……な、なぁ…………聞いてんだろ? おれはこんなにも『殺意』を抱いてるのに……なんで、セイラに発動しないんだ……? セイラが俺に悪意なんて抱くわけないだろ? 俺がこんなにもセイラに抱いているのに……な、なんで………どうして…………うぅ…………」


 ハルスは再び『カースジェイル』によりセイラの奴隷になるべく、セイラに殺意を抱こうとしたが、発動しなかった。


 それは、誰に対しても『カースジェイル』が解除された証とも言えなくもないが、ハルスはまだ確信が持てない。


 ハルスは弱々しく懇願するように言う。


「頼む……死んでくれ……」














「うん、分かった……」



 ――――――ハルスの苦しそうな顔は見たくないから



 セイラは何の躊躇もなく、『もしものため』に渡された『ナイフ』を己の首に突き立てようとし――――――



「光壁、ランク5!」


 光のバリアに弾かれる。


「な、なんで…………」


「違う……そうじゃねぇ……」


 ハルス自身もう何をどうすればいいのか分からなかった。

 頭の中がぐちゃぐちゃで支離滅裂な思考となっている。


 ハルスはセイラに殺意を何度も抱こうとしたが、発動しない。


 二度目はないということだろうか?


(まずい、まずい! このままだとまずい! とにかくまずい!)


 ハルスは焦る。

 ただひたすらに焦る。

 どうしようもなく焦る。


 このままでは――――――――





(セイラを殺してしまう――――――――!!)






 だから、早くセイラへの『殺意』を『カースジェイル』に届かせる必要がある。


 もっと直接的な『殺意』をみせる必要があるのではと閃く。



(みていろよ、カースジェイル! 俺は今からこのクソアマをぶち殺す!! マジで殺すぞッ!!)




「聖殺、ランク3!」



 叫ぶ。


 セイラにはじめてぶつけようとした魔法。

 ただし、ランクは5ではなく、3。


 それでも当たりどころが悪ければ、死ぬ。


 天から収束した光がセイラに襲いかかる。



 ジュ……



 一条の光線は、セイラのすぐそばに落ちた。


 かすりもしない。


「ちっ……動くんじゃねぇ! もっかいいくぞ、オラ!」


「…………」


 毒づき、唱える。


「聖殺、ランク3!」


 ジュ……


 またもや光線が落ちるがセイラにかすりもしない。


「ほんと、すばしっこいなぁっ! だから、動くんじゃねぇっていってんだろ!」


「…………」


「聖殺、ランク3!」


 ジュ……


「…………」


「聖殺、ランク3!」


 ジュ……


「…………」


「聖殺、ランク3!」


 ジュ……


「…………」


「聖殺、ランク3!」


 ジュ……


 セイラはその場から『身じろぎもしていなかった』。


 光線がセイラを避けて落ちていただけ。




 だから、セイラは…………




「聖殺、ランク3!」





 光線に貫かれようと、自らの身体を――――――――




「ッ!? 光壁、ランク5!」


 パシュ


「あ、『危ねえ』だろ…………! 気をつけろよなッ!」




 もうほんと滅茶苦茶のグチャグチャだった。



「呪いが解けたんだね……」


 セイラは口を開く。


「ハルスをわたしなんかに縛る呪いが解けたんだね……」


 頬につーと涙を流し、


「よかったね………」


 微笑む。


「ハルスが何をしたいのかいまいち分からないけれど、もしも、わたしのためにハルスが何かを犠牲にするのなら、そんなの、ごめんだよ」


「…………」


「『死ね』と言われれば『死ぬ』し、『大人しく殺されろ』と言われれば、『大人しく殺される』し、『身体を売れ』と言われれば、『身体を売る』し、『ハルスのためなら何だってしてあげる』。でも、死ぬのはまだちょっとまって。ハルスにもらったものを全部返せるかわからないけれどせめて『1/10でも返してから死なせて』…………」


「…………」


 セイラの姉はセイラのために『何でもした』。

 それこそ『身体も売った』。


 そのことを――――――――ハルスは知っている。


 セイラは『覚悟を決めた目』をしていた。


 だから、ハルスは、セイラに『カースジェイルが解除されたこと』に気づかれるわけにはいかなかった。



(マズイ! マズイ! とにかくマズイ! 考えろ!

 考えるんだ! セファイルメトス!)


 思考を高速回転させる。

 人類最高の頭脳は伊達じゃない。

 伊達じゃないが、考えついたのは、稚拙な穴あきだらけの結論だった。



「おい、抱き上げろと『言え』」


「え? え?」


「いいから早く言え」


「わ、わかったよ…………ハルス、わたしを抱き上げて……」


「はぁ…………やれやれ…………まったく、このゲロカスクソアマは、こんないたいけな幼女になんて『命令』をするんだか……脳味噌腐ってんじゃねぇか? とはいえ……従わないわけにはいかない。 『くそ』『身体が勝手に動きやがる』ぜ……」


 ハルスはセイラの両脚を抱えて持ち上げる。


「ふんぬぅ!」


 ちょうどタイタ●ックみたいな感じで。


「…………というわけで、こんな『ナリ』になっても、クソ忌まわしい『呪い』に『かかったまま』だ……ホント、反吐が出るぜぇ……」


「…………ハルス……」


 ホント。

 この二人はゲボがドベするくらい甘い。

 まったく見てられない。







 そんな二人だけの空間に――――――










「おいおい、こんなところに子供二人で危ないぞ。ソレなんの遊びだ?」






「ッ!?!?!?」


(全く気配を感じなかったッ!? 警戒してたのに――――――ッ!?)


 どこかも分からない土地に飛ばされ、ハルスは一瞬たりとも警戒を怠っていなかった。


 何故なら、ここは――――――――



 意外と汚れは少ないが――――――――



 どこからどう見ても――――――――



 ――――――――『路地裏』だからだ。





 薄暗い影から出てきたのは、ひょろっとしたような、そうでもないような、中肉中背の男。




 男はハルスとセイラをしばし見つめ、吐き捨てるように言った。


「存在値……たったの5か……ゴミめ……」



「? いや、そんな低くはないと思うが…………」


 冷静に突っ込むハルス。


 しかし、全身から汗がブワッと吹き出て、その鼓動は激烈に速く打っていた。


(あ、ありえねぇ……そ、存在値……推定……170……な、なんだこの化け物は…………)


 男は少し気まずそうに頭を掻きながら、


「ただの『テンプレ』だ。気にするな。迷子か? 俺は怪しいものじゃない。俺は●●●。反聖典主義組織リフレクションの一員さ……」


 無意味にカッコつける。



「「………………」」



((セイラ/ハルスを守護まもらなきゃ――――――!!))


 互いに「守らなきゃ」と思うハルスとセイラであった。







次回、いよいよ、『原作』でも長らく登場していなかった『あの男』が登場!!



舞散「おっ! 『やった』! ついに、俺の出番『か!?』」


殿下「それフラグでちゅ……」

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