5話 お前を『キズモノにしてしまった』……5才の幼女になったが『責任はきっちり取る』。それが『俺の流儀』
(『とある呪い』が解けたんじゃあ――――――!?)
もしも、それが正しければ、ハルスは晴れて『自由の身』となる。
性別や年齢が変わったが、そんなものどうとでもなる。
むしろ――――――
(幼児期の『能力の伸び率』は、半端ない。この俺なら前よりも効率的に能力をあげることもできる。性別もこの際、『勇者ハルス』と悟られないカムフラージュとなる。『あのラムド』に通じるか知らないが『俺様の器量を使って』『色仕掛』で『懐に入る』のも悪くない手だな……)
今の状況から最大限の利益を貪る方法を瞬時に読み解く。
さすがに伊達に勇者の称号を得ているわけではない。
(本当に『カースジェイル』が解除されているか試してみるか……)
「セイラ、いつもみたいにお前を抱き上げるよう、俺様に命令してくれ」
「ぇ…………」
ハルスの言葉に思考を停止するセイラ。
セイラは、一日に最低3回は『わたしを抱き上げて』、『頭をなでなでして』とハルスに命令して、額に青筋を浮かべるハルスに『くっ……またかよ……』、『何度すれば気がすむんだ……』、『か、体が勝手に……』、『ほんっっっっと、あまえんぼのクソアマだな』、『え?まだ、命令してない?先詠みしたんだよ……』、『よーしよしよしよしー』、『……今日は頑張ったからご褒美に撫でてやる』、『髪サラサラだな……』、『……すんすん。シャンプー変えたか?』などと悪態をつかれながらも、対面で抱き上げられ、頭をなでなでしてもらっていた。
そのため、ハルスの方からセイラを抱き上げると言ってきたことなどこれまで今まで一度もなかった。
固まったセイラの様子にハルスは、慌てて、
「そ、『そういう意味』じゃないぞ! 決して、『そんな目』で見ているわけないぞ! そろそろ言ってきそうだから『仕方なく』俺から言ってきただけだ。『俺の行動は俺自身の意志で決める』。つまり、『そういうこと』だ。だれが好き好んで、ちんちくりんのお前を『抱く』かってんだ。ま、『あと5年したらかなりマブい女になる』だろうが、そこんとこ『勘違いするな』よ……!」
誤解を解こうとするが、逆効果にしかならない。
(え? え? ハルスって、そんな目で見てたの!? ど、どうしよう!? やっぱり、男ハルスに『抱かれたい』! あ、『抱かれたい』ってのは、『そういう意味』じゃないからね!? 純粋にハルスに抱きついて、頭を撫で撫でしてもらうことだからね!? …………『あと5年』かぁ…………『ぐへへへへ』…………あ、でも、もしもこのままハルスが女の子だったら…………『その時は』『わたしが抱けば』『オッケーだね』。『目標』『あと5年で男になる』。そしたら、『美少女ハルスを……』いやいやいや、それはダメ。『とりあえず』『あと10年してから』にしようか……『冷静になれ』『わたし』……)
ころころと表情を変えるセイラは、ついポロッと『本音』が漏れてしまう。
「ハルス、抱ぃ……だっこしてあげるね」
「…………え?」
ハルスへの命令ではなく、セイラは自身の行動を宣言し、ハルスを正面から抱きついて、もちあげ、
「セイラお姉さんがなでなでしてあげますよー」
あろうことか、ハルスの頭を撫で始めた。
「な、なんで、お前の方が抱きつくんだよ……!」
ハルスの突っ込みは、『カワイイ』に支配された今のセイラには何も通用しない。
「照れなくてもいいでちゅよー」
赤ちゃん言葉まで使い始めた。
さらに……
「(*´Д`)ハァハァ♡ほっぺた柔らかーい♡」
頬同士をスリスリ合わせる始末。
「え?え?//////(っ//́Д/̀/))Д/̀/c)」
ハルスは突然の状況についていけない。
5才のハルスの頬はマシュマロみたいに柔らかいが、10才のセイラの頬も同様に柔らかいわけで、ちょっと、ほんのちょっとだけ、ドギマギしてしまう。
(も、もちつけ……相手は10才のお子様。何を動揺してやがる)
「や、やめろー……!」
セイラから離れようとぐいっとセイラの頬を手で押しのけるが、
「ハァハァ……ハルスたん♡お姉ちゃんともっとスリスリしましょうねー♡」
ちょっとそっとのことじゃ離れてくれない。
5才になったことで筋力も年相応に低下し、10才の興奮状態で色々と覚醒している少女に勝てるわけがない。
「ええいっ! たんをつけるな! たんをっ! わー!」
少しパニクったハルスは、しっちゃかめっちゃかに手を振り回して、抵抗する。
その様子にセイラは興奮してさらに混沌が増す。
そして……
ザシュッ……
「あ……」
セイラの頬をひっかき、傷をつけてしまった。
「ぎゃんっ! ふふっ、このお転婆さんめっ!」
セイラは少し叫ぶが傷に頓着せず、ハルスとのスキンシップを過激にしていく。
「…………」
ハルスはセイラの、女の子の頬に傷をつけてしまったことに動揺していた。
「……あれ?」
ハルスの反応がないことにセイラは訝しがり、手を止める。
「すまん……」
ハルスの謝りの言葉にセイラは頬のキズのことだとピンときた。
「このこと? 気にすることないよ。わたしの方こそハルスを困らせてごめんなさい……」
セイラも頭を深く下げて謝る。
ハルスはセイラをじっと見上げ、
「お前を『キズモノにしてしまった』……5才の幼女になったが『責任はきっちり取る』。それが『俺の流儀』」
「ハルス//////」
ハルスは幼い頃に『サナ姉』から『ハルスちゅわぁんっ♡女の顔は命そのものよ♡ もしも、傷つけたら、責任をとらなきゃダメよ♡ と……いうわけで……わ、わたしの顔を、ぶ、ぶ、ぶ、ぶひぃぃぃぃんっ! あーんっ! そんなこと言えないわー!』と教わっており、
(あれ? なんか変な情景が……気にするな……気にしたら負けだ……何がどう負けなのか知らんが、とにかく、セイラの顔を傷つけてしまった……)
女の顔=命、とハルスは捉えており、カースジェイルの呪いにより、セイラが死ぬとハルスも連動して死ぬ運命にある。
「治癒、ランク2」
セイラの頬に手を掲げ、傷を癒やす。
傷は跡形もなく消えていった。
「よし、傷は治った。責任とったぞ」
「え…………あ、ホントだ」ガーン
ぺたぺたと手で頬を触って引っかき傷がないことに酷くショックを受けるセイラ。
「…………ん?んん?」
ハルスは気づく。
無意識とはいえ、セイラに傷をつけることができたことを。
カースジェイルは無意識だろうとご主人様を害することは不可能なのだ。
つまり――――――
(『とある呪い』が解けたんじゃあ――――――!?)
魂を束縛するカースジェイルの解除を確信するハルスであった……
昨日
作者「『8』たのしみ!いいね、ぽちっとな。((o(´∀`)o))ワクワク」
翌日
作者「そんな馬鹿な……」
いいねが80なんて、ほんと愛されてますねっ!
『8』のイラスト楽しみにしてまーす! |д゜)チラッ