4話 その涙を拭け。たとえ5才の幼女になっても俺は俺、完璧超人史上最強勇者ハルス・レイアード・セファイルメトス、悪鬼羅刹を打ち払う『お前の剣』←あ、そうだ!ハルスがわたしのお嫁さんになればいいよね!?
「え……?」
ハルスの叫びに呆然とするセイラ。
「う……嘘でしょ……冗談だよね……?」
幼児化するのもありえないことだが、性別が変わるなどもっとありえない。
ハルスの見た目はもろに幼女だが、その年頃は男の子でも女の子に見えるものだ。
「ああ、冗談だったらどんなに良かったことか……ところがどっこい。現実はいつだって、非情だ。こちらの事情に一切合切頓着しねぇ……」
ハルスの鎮痛な声にセイラもいよいよ認めざるを得ない。
ハルスは女の子になったのだ、と。
その理解が脳内に浸透するとともに『とあること』にセイラは気づく。
その瞬間……
「……ぃ…ゃ…………」
「……セイラ?」
「……ぃ、ゃ……ぁぁぁ…」
まるでセイラの方がいやいや期の幼児返りしたかのように首を振ってその状況を否定する。
堰を切ったように涙がとめどなく頬を伝う。
正直、ハルスの方が泣きたい気分だったが、ほっとくわけにはいかない。
見知らぬ土地に飛ばされ、黒ギャルお姉さんとへちゃむくれお兄さんと別れ、唯一頼りにしていた魔人のお兄さんが5才の幼女になるなどセイラは不安よな……
ハルス動きます。
「その涙を拭け。俺を誰だと心得る。たとえ5才の幼女になっても俺は俺、完璧超人史上最強勇者ハルス・レイアード・セファイルメトス、悪鬼羅刹を打ち払う『お前の剣』」
「……うん……そうだね……ハルスはすごいね……!」
実はセイラが泣いていたのは、ハルスが幼女になって、自らの身が不安だ、などという陳腐なものではない。
もっと低俗。
ハルスに知られれば、ドン引き間違いなしの、そんなわがまま。
少し前のセイラの胸中はといえば……
(ハルスが女の子になっちゃったよぉぉぉぉ……! ということは、わたし、『ハルスのお嫁さんになれない』のぉ!? そ、そんなの……いやあぁぁぁぁぁ! えっぐ、えっぐ、ふぇぇぇぇぇん……)
というものだったりする。
ハルスの心配は全くのお門違いだ。
けれどもハルスの言葉にセイラは救われる。
いつだって、ハルスの言葉は、セイラを元気づかせる魔法の言葉。
(目を背けたくなる現実だけどしっかり見据えなきゃっ! うわぁぁぁ……! ハルスの髪の毛、柔らかくてきれい……瞳も透き通っていて、本当、どこかの国のお姫様みたい……)
「セイラ……?」
セイラか泣き止んだと思ったら、ハルスの髪の毛を触ったり、見つめてきてきた。
ハルスを見つめるその瞳に熱がこもるのは、気のせいだろうか?
きょとんと首を傾げるハルス。
(ふぉぉぉぉ……! 首を傾げるハルス、超絶にかわいいよ……! 髪の毛に顔をうずめてくんかくんかしたり、頭を撫で撫でしたいぃぃぃぃ……! 青年ハルスもいいけど、お姫様ハルスもたまらないよっ……! こんなの絶対にお邪魔虫がつく。わ、わたしがなんとかしなくちゃっ! あっ、そうだ! ハルスが女の子になっちゃったってことは、わたしも『男の子になれる』ってことだよね!? 今はどうすればいいのか分からないけど『【魔法を極めれば】、いつの日か【わたしが男の子になれる】よね!?』)
「わたしもお邪魔虫を打ち払う『ハルスの剣』になるねっ……!」
「お、おぅ……期待してるぜ……」
何だかよく分からないが、セイラが元気になったのでとりあえず頷いておくハルス。
南の大陸は鬱蒼とした森が多いため、羽虫を追い払うくらいは、セイラでもできるだろう。
(……っ!? ハルスに認められちゃった! え?なになに? これって、つまり、オッケーってこと!? 『ハルスの剣』=『ハルスの夫』! あ、そうだ! わたしがハルスのお嫁さんになれなくても、『ハルスがわたしのお嫁さんになればいい』よね!? ハルスがわたしのお嫁さん……ハルスがわたしのお嫁さん……ハルスがわたしとの子供を……ふおぉぉぉぉぉ!! ダメっ! これ以上はダメっ! わたし、おかしくなるっ!)
「だ、大丈夫か……? うう……何か寒気がするのは気のせいか……?」
突如、地面をぐるぐると回りだすセイラ。
困惑するハルス。
さっきまでハルスと結婚できなくなったことに泣きべそをかいてたのが嘘のようにセイラはハッスルしていた。
女の子の心は、いつだって、予測不可能の複雑怪奇。
しばらくして、正気に戻り、服についた埃をパンパンと叩き落とすセイラに安堵しつつ、ハルスは『とある違和感』を抱く。
(何か……何か……軽い気がする……何かを無くした、そんな気がするんだよな……もちろん『ナニ』じゃねぇ……そんな『チャチ』なもんじゃねぇ……いや、そんなに『平均より大きい』かどうか知らんが……とにかく、『どこまでも羽ばたける』ような『身軽になった』気がするんだよ……)
常人であれば見逃してしまうほどのかすかな『違和感』。
ハルスだからこそ気づいた『違和感』。
その『違和感』は、『魂魄』に関わるもの。
ハルスの姉、サーナ王女は、魂魄を判別する能力に秀でており、ハルスにもその素質があるに違いない。
否。
理由はそれだけじゃない。
ハルスはすでに『ソレ』を『経験済』だった。
(ま、まさか――――――)
『ソレ』は、ハルスの魂魄に纏わりついた『とある呪い』。
(無くなったのは――――――まさか―――――)
思えば、かの『とある呪い』がきっかけで、ハルスの『種族』が変わった。
今は見た目や性別が元と違うが、『種族』は戻った。
つまり――――――
(『とある呪い』が解けたんじゃあ――――――!?)
【本文より長くなりそうな座談会】
殿下「これはいいことをききまちた。深層界の究極超女神のオイちゃんからゲロカス三下弟子に告るなんて、ヘドがゲボする5秒前でちゅが、オイちゃんが『漢』で、お兄が『乙女』でちたら、滅茶苦茶ウザくて不本意ながらも『漢』らしくオイちゃんから告るのもありでちゅね」
狂信者「む……ひとくち噛ませてもらおうか……乙女の主上様……ハァハァ(;´Д`)……む……鼻から血が……」
舞散「うおっ……寒気がする……」
殿下「……お兄の貞操が心配でちゅ……まぁ、その時はオイちゃんも『混ざれば』いい話でちゅが……」
舞散「よかないわっ!何の話かさっぱり見当もつかんがよかないわっ!ほんっと、何の話が皆目見当もつかんが、どうやって、俺を乙女にするんだよ」
殿下「お兄をTSするなんて、オイちゃんとアーちゃんが力を合わせればゴリ押しでなんとかできまちゅ。引っこ抜いたりとか」
舞散「引っこ抜くのやめてっ! もっと魔法的な何かでやって! 抜くのは痛いからっ!そもそもお前らどうやって『漢』になるんだよ!」
狂信者「私の中には『漢』の『一部』も取り込んでいますので『付ければ』『何とかなる』と思います」
舞散「『一部』ってなんだよ! どこだよっ! 『エグゾギア』のアタッチメントみたく言うのやめてっ! シューリの方はどうなんだよ? 深層界究極超女神の称号は伊達じゃない。そうやすやすと『女神』の役割から降りることはできないはずだ」
殿下「オイちゃんは『姉想いの弟』から『どっこいせと』『引っこ抜いて』『うんしょと』『付けるから』全然ありまちぇん」
万年序列二位「全然問題大ありだ。姉貴。『男神』を譲る気はねぇ」
殿下「まさか弟が『ソッチ』もイケる口だなんて、オイちゃんショックでちゅ」
狂信者「ふ……『血は争えない』というわけか……」
万年序列二位「おいまて。『ソッチ』てなんだよ。『アイツ』が『例えTSしても』『ただただ気持ち悪い』だけだ……」
殿下「そんな弟ちゃんにこの娘を紹介しまちゅ。『どっかの世界線』のお姉兄様でちゅ」
月子「どーもー。お姉兄様のセンテラスでーす。って、どこのMA●E☆爆裂●空だよっ!」
万年序列二位「…………」わなわな
月子「あーあ。ブチ切れちゃったかな?ごめんね?やっぱ、『こっちの世界』の『シューリ』も『イカれ度』はぶっちぎりの一等賞だね……」
万年序列二位「つ…………」
月子「つ…………?」
万年序列二位「月が綺麗ですね……」
月子「そ、そうなの…………月は出てないかな…………新月だし…………」
39「おいおいおい。ザンクさんの一世一代のプロポーズの言葉をパクるなよ」
万年序列二位「『タイトル』はそうだったかもしれんが、お前の『台詞』はそうではなかったと記憶している。それに第一アルファのとある極東の島国の文豪の『逸話』から拝借した言葉だ。第一アルファの主神たる俺からすれば、もはや『俺の言葉』と言っても過言ではない……と思わんでもない今日このごろ」
39「あ、最後日和りやがった……! こんなみみっちい奴より俺の方がお前の隣を歩むに相応しい漢だ」
月子「ぇ…………ぃゃー…………まだ、孤高がいいっす……」
夕子「閃君が困ってるじゃないか……ガツガツする男子は嫌われるぞ。それにあんたらは、所詮、『草食系』。閃君みたいな『超草食系』には、俺様みたいな『超肉食系』がお似合いさ……」
月子「うう……確かに一度『ホントの意味』で『喰われた』けどさ……」
殿下・狂信者「な、なにこれぇぇぇぇぇ!! う、羨ましいぃぃぃぃぃぃ!!!! ( ゜∀゜)o彡TS!( ゜∀゜)o彡TS!」
舞散「…………(白目)」
作者「タイトルに気づいた人はいるかな……」ニチャぁ……
テンプレ悪役勇者(見た目美幼女)「うぜぇ……」
元奴隷美少女「ハルスちゃん、お口わるーい」
テンプレ悪役勇者(見た目美幼女)「ちゃんをつけるな!ちゃんを!」
ちゃんちゃーん☆