第18話 も、よもや、このわたしが家畜ごときに残機を減らされるとは……慚愧に堪えない……!! いや、なにかトリックがあるはず……!! そうだ!! 下等な家畜が卑劣で姑息なトリックを使ったんだぁぁあああ
「うーん、話が通じないみたいですね……チャチャッとお片付けして、ダキちゃん、ホルくん、サバくん、ササちゃん、ソロくんを助けなきゃですね」
なんの気負いもなくエレガはそう言うと……
武を構えたのだった。
一方、『ソレーユ』は、特に構えていない。
エレガは確かにこの『世界』では、武に関して、ぶっちぎりの一等賞であるが、あくまでそれは、中級世界でのこと。
また、中級世界にも序列があり、この世界の存在値からいって、『序列ど真ん中』の『中級世界』。
それに対して、『ソレーユ』の『中の人』は、最上級世界の『序列4位』の『不可説天使族』の『堕転生種』の『不可説転悪魔族』だ。
この『世界』では、精霊国フーマー(というか天国 (というかエレガ))の意向で、存在値25以上は、国家間の戦争に参加禁止と定められており、存在値25から武力として認められる。
第4アルファでは、第2アルファと同じく、存在値100から兵士として活動の許可が得られる。
この時点で4倍もの開きがあり、しかも、『ソレーユ』は『ソル』でもある。
世界の実務的な管理者は『天帝』であるが、その権限、場所、ルールを定めたのは、何を隠そう、『ソル』である。
世界に生きるものとしては、『天帝』こそが、裏番付であり、裏方であり、裏から世界を牛耳る真なる命の王であるが、本当の意味での裏には属さない。
『天帝』は、あくまで『ソル』の代行者であり、『ソル』の下位互換であり、『ソル』の手足であり、『ソル』の――――――『家畜』だ。
そう。
家畜。
愛玩動物ですらない、家畜。
それ以上でもそれ以下でもない。
だから、『ソレーユ』は、頬をエレガに差し出し、
「ほれ、一発殴らせてやる」
格の違いを見せつける。
たかが家畜の分際でこちらを出し抜いた気でいるエレガに、『ソレーユ』は、正直、苛ついていた。
マウントを取って、取って、取りまくって、溜飲を下げないとやってられないのだ。
家畜相手に大人気ない。
あの不可説転悪魔族様ともあろうものが情けない。
などと言うことなかれ。
例え元最上級世界の序列4位の伝説の種族『不可説天使族』の『堕転生種』の『不可説転悪魔族』様だって、度重なる転生の旅で魂はすっかり摩耗して、カルシウムが足りていない。
苛ついたって仕方ないもの。
「ほれ、ここにどデカイのたのまぁ」
『ソレーユ』は、頬をポンポンと軽く叩いて、エレガを徴発する。
「顔は女の命。そんなとこ叩けないですぅ」
しかし、エレガはそんな安い挑発にのらない。
それに……
「こんなに幼い子の顔をグーパンするのは気がひけますぅ」
確かに外見年齢7才の幼女の顔面を外見年齢17才ほどの少女がガチ殴りはみっともない。
例えその中身が7才どころか8000歳以上だとしても外面はよろしくない。
まぁ、エレガさんの中身も10000歳を軽く越えているので、ある意味、ロリババア同士の見目麗しい醜い闘いであるが…………
「悪い子へのお仕置きはもちろん――――――」
エレガは手を大きく振りかぶると――――――
「――――――これですぅ!!」
『ソレーユ』にお尻ペンペンをしたのであった。
「…………ぇ?」
エレガの接近に『ソレーユ』は、反応できなかった。
かろうじて、『目の前から消えて』、『後ろに気配を感じ』、『何かもの凄いスピードの何か圧倒的な衝撃がやってきそうな予感』を感じ、その一瞬後には、
ベベンッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!
「ッ!?」
パァアアアアアアアアアアンッッッッ!!!!
もはや、ペンペンが早すぎで『ペン』しか聞こえず、『ソレーユ』はその場にとどまることができず、エレガによって得た運動エネルギーにに従って、だだっ広い部屋の壁に激突――――――することなく、破裂する。
そう。
破裂だ。
まるで、風船が破裂したかのように膨張し、一瞬で、血を四方八方に撒き散らして、ただの細かな肉塊となった。
「ふぇ……?」
困惑したのはむしろ、エレガの方だった。
今回はかなりの激戦になると覚悟を決めていたのがまさかのお尻ペンペンで破裂するとは……
「……よ、弱すぎる……汗」
『ソレーユ』のあまりの弱さに狼狽えてしまう。
天下一武道会でパンチングマシーンを壊してしまう18●のような感じに……
もしくは、ダイナマイトキックを受けたセ●のような……
だが……
「きゅ〜〜〜〜」
足元には目を回した幼女がバタンと倒れ込んでいた。
「ッ!?」
目を見開くエレガ。
『ソレーユ』だ。
お尻ペンペンで細かな肉塊となったはずの『ソレーユ』だ。
それが全くの無傷で目を回していた。
実は何気に慎重派の『ソレーユ』さんは、街なかを歩いているときに隕石が頭に落ちてくる、予想もできない理不尽な破滅を回避するため、絶えず、パッシブスキル『逆転人形』を発動していた。
そのため、身代わりに破裂したのが、この人形というわけだ。
破裂した人形…………破烈の人形…………って、うっさいわっ!!
「……プハァッ!!」
と、意識を取り戻した『ソレーユ』は、
「も、よもや、このわたしが家畜ごときに残機を減らされるとは……慚愧に堪えない……!! いや、なにかトリックがあるはず……!! そうだ!! 下等な家畜が卑劣で姑息なトリックを使ったんだぁぁあああああああああ!!」
絶叫する。
「……いえ、何も……種も仕掛けもないですぅ…………」
目を血走らせるテンション高めの幼女に若干引きながらエレガが手を横に振ったのだった……
今回の二次創作要素(の一部)を紹介!
・パッシブスキル『逆転人形』
『原典』には、これっぽっちも登場しませ〜ん!
・ この『世界』では、精霊国フーマー(というか天国 (というかエレガ))の意向で、存在値25以上は、国家間の戦争に参加禁止と定められており、存在値25から武力として認められる。
25以上ルールを天国やエレガが決めたかどうか確か言及なかったような……
・第4アルファでは、第2アルファと同じく、存在値100から兵士として活動の許可が得られる。
第2アルファでいくらから(ゼノリカ関連の末端の)兵士に存在値ルールが適用されるのか、言及なかったはず。
もちろん、第4アルファの情報などナッシング!!
・外見年齢17才ほどの少女がガチ殴りはみっともない。
エレガさんがどのくらいの外見年齢でストップしてるのか、『原典』ではたしか言及なかったはずなので、センさんと同じ外見年齢にしました〜!!




