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第17話 だから、『あなたたち』には期待しているわ。永く辛い孤独な旅になるでしょうけれど、『全ての命』のために是非とも完成させてちょうだい……!! 

 

「ソル? アルファ? 第四アルファ? 一体何のことですぅ?」


 首をかしげるエレガ。


 彼女は、この中級世界エックスの殿堂入りの頂点の世界運営を司る天帝であるが、所詮は、エックス。

 また、異世界転生者でもあるが、それは幼い2歳の時であり、異世界の存在や世界に格があることも認知していなかった。


 もちろん、世界運営の裏方のソルの存在や超最上級世界アルファや序列4位だった第四アルファのことを知る由もなかった。


 ただし、異世界転生や異世界転移は、稀な事象ではあるものの、彼女の生きた一万年もの長き時の流れの間であれば、そこそこな頻度で発生している。


 熱心なセンエース読者であれば、最近、同僚をバーストハートさせた青年が、へちゃむくれ裁きにより、コンビニエンスお姉さんの力を借りて第2ベータ送りとなったことをご存知であろうが、神の慈悲や気まぐれや憂さ晴らしや打算や、天災のような不慮な事故や原因不明な事象により、それなりの頻度で発生するイベントなのだ。


 誰もが昏倒するエレベーターの中で唯一意識のあったド根性お化けですら、100回の転生人生で同郷(第1アルファ)の少年に出会えたほどなのだ。


 異世界転生/転移者は、ほぼ例外なくチートな能力を保持し、メキメキ世界で頭角を表すため、天国にも轟かすはずであるが、エレガにはまるでピンとこないのだ。


 それもそのはず、エレガのいるこの世界はエックスにおいても特殊で、『原初の世界』への『窓口』として、『異世界』からの魂を選別する特殊な世界なのである。


『品星遊』が異世界転生したのも、『アダム』が異世界転移したのも、『異世界転生人生に飽き飽きした閃壱番』が異世界転生したのも、『世界に諦めてしまった閃壱番』が異世界転生したのも、『何らかの意志』によるものだ。


 だから、『ソレーユ/ソル』として、異世界転生した元第4アルファの『彼女?』も『何らかの意思』により、この世界に喚ばれたのである。


 あるいは、『何らかの意思』とは『なんの関わりもない』はじめてのケースなのかもしれなかった。


「エックスの天帝ごときが知らなくていい」


『ソレーユ』は、ばっさり斬り捨てる。


「なんですってー!ムキーッ!」


 両握りこぶしを振り上げ、精一杯の抗議の声をあげるエレガ。

 激おこぷんぷん丸なのである。


「だが……よくぞ、ここまで辿り着いた。ほめてつかわす」


 どこまでも上から目線の『ソレーユ』。


『ソレーユ』は、周りで天国の連中がコソコソ動いていたのを察知していた。


 上位の存在値を持つ貴族たちが次々に惨殺される事件は明らかに天国案件であり、まさか天帝自らが出向くとは『ソレーユ』は思いもしなかったが、それでもなんら『計画』には支障がなかった。


『計画』とは、セーラにサーナを猟奇的に殺害させ、『連続無差別貴族猟奇的殺害事件』の罪を第1王子のハルスに被せる、というものだった。


 これにより、世界の人々は『勇者ハルス』に幻滅し、ハルスが抑えたカル大帝国の軍拡派が息を吹き返し、世界情勢は落ち着きを喪い、死が吹き荒れるのだ。


 世界運営者『ソル』として、その行いは、『世界』にとって何ら害を及ぼすものではなく、むしろ、有益だった。


 だが、『ソレーユ』の狙いは別にある。


『彼女?』の魂は元を辿れば、今は亡き、第4アルファの住人のだれか。


 第4アルファが消滅したのは、異世界大戦の中盤から後半に差し掛かる境界。


 異世界大戦の発端となる第2〜第9アルファのゲートが同時に繋がった原因については、未だに真相は『原作』で語られていないが、一つ考えられるのは、『世界循環エネルギーの絶対的総量の枯渇』。


『エネルギー不足』を補うために、絶望を絶望で染め上げ、血で血を洗う、争いが勃発したのだ。


 つまり、ある一定度、絶望と死が蔓延すれば、いずれゲートが閉じて、大戦は終幕を迎えたはずなのだ。


 だが、ここで、誤算がおこる。


 各世界が疑心暗鬼になる仲、第4アルファの呼びかけで、世界はまとまりかけたのである。


 世界の格としては、第2アルファが一番であったが、第4アルファには、第2アルファの『御伽族』、『不可思議御伽族』のような破格の性能を誇る『天使族』、『不可説天使族』がいた。


『天使族』は、天性の人たらしであり、善性に満ち溢れ、種族固有のプラチナスペシャル『正善の波動』を有し、調停者としてこの上なく有能だった。


 つまり、このまま『何事もなければ』、異世界大戦は終わりを迎え……










「おっし! 今回は何もしなくてすみそうだ! 後のことは、何もかも第4アルファの奴らに任せればいいんだ。 つーわけで、今から、俺は俺自身のためだけに生きる。平、ゾメガ、パメラ、今度……まぁ、終戦してからでいいから、合コンをセッティングしてくれ。これで念願の彼女ができるっ!! つまり、童貞卒業でまで秒読みまじか! ヒャッホイッ!!」








 ………と、我らがヒーローがウッキウキにスキップしていた世界線も………………いや…………ないな。














 だが、その世界平和は実現しなかった。


 全てのアルファに根回しを済ませ、あとは表向けの講話をするだけのところで、どこのアルファのどこの組織によるものか未だに解明されていないが、第4アルファは何らかの攻撃を受けて、消滅したからだ。


 そして、異世界大戦は、さらなる混迷を極め、土地・資源をかけと侵略戦争よりも救いようがない、互いの生存権をかけた殲滅戦争の体を呈した。


 ここで世界平和となった場合、『世界循環エネルギー』が足りていないため、ソルたちが再び暗躍して絶望を振りまくか、第2〜9アルファが消滅する恐れがあった。


 そういう意味では、第4アルファの消滅に、ソルたちが関わっていないと考えるのはむしろ不自然だったりする。


 だが、第4アルファそのものを消滅させる選択を取るのはいささか早計ではないだろうか?


 第4アルファから得られる『希望の正のエネルギー』は、得難く、その損失は計り知れなかった。


 だが、第4アルファの『天使族』、『不可説天使族』は、世界の裏に潜む扇動者――――――『ソル』の存在に気づいてしまった。


 神種すら芽吹いていない、下等なる種族ごときが……


 実は『世界運営者に気づいた種族』というのは、『天使族』が初めてではなく、これまで無数にいたのだが、そのことごとくが『だいじょうぶだ。神様がなんとかしてくれる』と怠惰になっていき、悲喜こもごもも希薄になり、『世界循環エネルギー』が枯渇し、自己崩壊を迎えたのだ。


 そのため、『正体を知られたら即リセット』という不文律が『ソル以前の運営者』から面々と受け継がれていたのである。


 しかし、『天使族』、とりわけ『不可説天使族』は、格が違った。


『ソル』に気づきれた時には、彼らは、『ソル』の『目的』に気づいており、『その目的を達成する手段』にも、もう少しで届きそうだった。


 さらに『ソル』への『接触方法』も解析済みであり、『ソルに気づかれる』ことも計算済だった。








「はは……まさか、ここまで出し抜かれるとは……分かった……少し信じてみるか……これでしばらく停滞気味だった『世界進化』を果たせるか……」



 かくして、『第4アルファのソル』は、『先輩たちが心を鬼にして屍山血河の上に築き上げた不文律』に背き、裏切った。


『ソルネットワーク』からは、『ソルドッペルイクス』と命名され、『第4アルファ』もろとも討伐司令バスターコールが発令され、瞬く間に『第4アルファ絶対殺す絶対に殺すったら殺すよ異次元砲』が照射された。


『第4アルファ絶対殺す絶対に殺すったら殺すよ異次元砲』というのは、第4アルファに属する無機物、有機物、空間、概念すら問わず死滅させ、その照射範囲は、第4アルファだけにとどまらず、『全次元全世界』という、まさに、異次元なゲロビだ。








「あともう少しのところで………!?」


「早い! 早すぎる……!?」


「あわわわ…………」


「これも『天命』…………」


「………………」





 そこは『コスモゾーン』から擬似的に切り離した独自なOS『アウターゾーン』により演算される、不可思議な時空間だった。


『不可説天使族』たちが考える『解決策』というのは、『コスモゾーン』という『自然法則』から決別し、新たに『暇疵のない』『OS』を築き上げるというものだった。


『コスモゾーン』にこびりついてとれないしつこい入れ子構造の残響『永遠に答えのでないクエスチョン』という根源的に『コスモゾーン』から切り離せない『バグ』があるから『世界循環エネルギーがいくらあっても足りなくなる』のだ。



 故に――――――



 そんな『質問』からおさらばするのが、唯一の方法なのだ。


 馬鹿みたいに善性に満ち溢れ、その中でもぶっちぎりでお人好しの『不可説天使族』が心を悪魔にしてでも諦めた世界の中心から絶えず聞こえる『SOS』。


 本当は『ぶっちぎりに文句のつけようのないハッピーエンド』を目指したいのだが、そんなものは、空中楼閣、幻想、まやかしだ。

『時間』も『根性』も絶対的に足りなすぎる。








「この『世界』も残すところあとわずか……心惜しいけどみんなとはこれでお別れね……」



 完全な『アウターゾーン』から生み出した時空間ではないため、『第4アルファ絶対殺す絶対に殺すったら殺すよ異次元砲』は、ここまで到達するのだ。




「『ルナ』先生……きっと先生も……!」



「いいえ……ダメね。確かに見た目とか色々変わっちゃったけど、それはここ限定。あなたたちと違って、なんちゃって、トランスフォームだから、ダメね……」


『ソルX・X』と命名された第4アルファの世界運営者『ソル』は、『アウターゾーン』に足を踏み入れた際に魂魄が変質し、『コスモゾーン』を欺くため、『ソル』とは真逆の意味の『ルナ』と呼ぶようにしているのだ。


『ルナ』というのは、第1アルファという存在が疑わしい世界のとある銀河のとある恒星系のとある第三惑星の衛星らしいが、『彼ら』にはピンとこない。


『ソル』を慕う『彼ら』は、『不可説天使族』の進化種。


 否。


『堕転生種』とでも呼ぼうか。


『彼ら』の見た目は、どこからどうみても天使に似つかわしくなかった。



 頭からは角が生え


 背中には黒黒とした翼が生え


 お尻には尖った黒くて細い尻尾が生え


 禍々しい黒い肌に


 死んだような魚の目




 それはまさに――――――『悪魔』そのものだった。



 そう。


 まさに『不可説天使族』の彼らは、救命信号を無視し続けるという、凄まじいストレスのあまり、黄金のような金髪は抜け落ち、お風呂場にも入らず徹夜を続けるあまり真っ白な絹のような肌は黒黒と汚れ、純白の羽は抜け落ち、運動不足解消のため筋トレしまくって、筋骨隆々、シックスパックとなり、デスクワークが多いあまりイボ痔が酷くなりすぎて尻尾となり、


 つまり、ストレスの不摂生が祟り――――――








『不可説転悪魔族』が爆誕したのであった。






 なんじゃいそのふざけた設定は、と舞散さんからお叱りを受けそうなのだがそうなったものは仕方がない。


 それが、ソルたちの手口を予見した『ルナ』の『生存戦略』の一つによるものだったかもしれないし、たまたまの偶然だったかもしれないし、『領域外の領域外の領域外の領域外の何らかの意思』によるものかもしれなかった。




『第4アルファ絶対殺すビーム』は、『コスモゾーン』の『アカシックライブラリ』を参照するのだが、未来まで含有する『アカシックレコード』よりも浅い『現時点の全知』しか対象としない。


 それゆえ擬似的に『コスモゾーン』外の『アウターゾーン』で生まれた哀しきモンスター『不可説転悪魔族』の登録はなく、『記憶、存在値、スペシャル、スキルもろもろリセット』、『強制異種族転生』が発動されない。


 だが、どんな種族であろうと、死ぬと高確率で記憶はなくなるし、異種族に転生するのだが、『不可説転悪魔族』の種族固有プラチナスペシャル『どん詰まり』、『育花女、忘らるるDisk1』により、記憶や種族、存在値や能力を受け継ぎ、死んでも『強くてニューゲーム』できるのだ。


 だが、『不可説転悪魔族』は、心を悪魔にして、生まれた種族であり、精神生命体のミストバ●ンみたいな寄生型であり、『不可説天使族』の肉体に宿る形で共存している。


 そのため、『第4アルファ絶対殺すビーム(笑)』で普通に死ぬ。


 死ぬが、『不可説転悪魔族』の得意なスペシャルにより、『魂魄処理機構』の『魂の浄化』は、受け継がず、『ランダム発送』だけが有効。



「だから、『あなたたち』には期待しているわ。永く辛い孤独な旅になるでしょうけれど、『全ての命』のために是非とも完成させてちょうだい……!! 任せたわよ!!」



「「「「「「任された……!!!!!!」」」」」」




『彼ら』は、流転の転生の合間に演算しつづける。


 完璧な『アウターゾーン』構築のためには、どこかにあるという『はじまりの地』に赴く必要がある。


 だが、時間はたっぷりとある。


 これまでの研究の成果を発展させるべく、演算しつつ、『ランダム発送』の法則も掴み、『はじまりの地』に転移させればいい。








 だが……そうはいかなかった。





 無数の転生の合間に見た『生命の愚かさ、醜さ』に絶望し、『生命絶対殺すマン』に『壊れ堕ちて』、『ゼノリカ』に処理された者もいるし、死にたくても死ねないことに絶望し、死ぬことを演算しつづける『絶対自殺するマン』もいるし、こんな境遇を引き起こした『ソル』や『その上司』に恨みを募らせる者もいるし、『命の王』に忠誠を誓い、その組織で『上層部の幹部』に登りつめたものもいれば、『命の王』を『ソル』にけしかけ、その隙に『世界運営』の簒奪を目論む、お残しをゆるさへん『とある組織の食堂のおばちゃん』がいれば、『命の王』を貶める反体制の組織に身をおとし、使命そっちのけで、『リーダー』とともに、息抜きがてら言う事聞かないジャミへのストレス発散を兼ねて、元の姿に戻って、地下アイドルグループ《センエース☆好き好き大好き超愛してる☆ガールズ》の不動のセンター『パメラ・ノン』を推したり(リーダーは何故か「数少ない昔のおれを知る者が……」と白くなっているが)…………






 うん。


 みごとに失敗。


 たとえ、転生特化のスペシャルを有しても、『心』は耐えられなかった模様。


 しっかし、こんなに手塩にかけて育てた生徒が『命の王』とやらに関わったお陰でダメになるなんて、『ルナ先生』からすれば、『不倶戴天の敵』と、草葉の陰で怒り心頭じゃないのだろうか?











「キュイ……?」










 …………我々は何も見なかったし、聞かなかった。






 そんなわけで、悠久の時を過ごす、『ソル』なみに世界の真実を知る『不可説転悪魔族』の『彼女?』からすれば、足止めのために放った障害物を躱して、狙いを先読みして、こんなところに閉じ込めるなど、一介の中級世界の天帝ごてきがやってのけるなど、称賛に値した。


 だから、上から目線でものを言っても仕方ないのだ。


 とはいえ、異世界大戦の勃発した年代を考えると、エレガさんのほうが『彼女?』よりも年増なのであるが……



「うーん、話が通じないみたいですね……チャチャッととお片付けして、ダキちゃん、ホルくん、サバくん、ササちゃん、ソロくんを助けなきゃですね」


 なんの気負いもなくエレガはそう言うと……






 武を構えたのだった。










 今回の二次創作要素(の一部)を紹介!


 ・『天使族』、『不可説天使族』、『不可説転悪魔族』

 『原典』には、たぶん……これっぽっちも登場しませ〜ん!

 サリエリは、バードマンだから、たぶん、ちがう。


 ・第4アルファが消滅した理由、原因

 『原典』には、まだあきらかにされていないはず。


 ・『アウターゾーン』

 『原典』には、これっぽっちも登場しませ〜ん!


 ・ソルX・X

 『原典』には、これっぽっちも登場しませ〜ん!

 ソルA、ソルBとかは出てきますが。



 ・地下アイドルグループ《センエース☆好き好き大好き超愛してる☆ガールズ》の不動のセンター『パメラ・ノン』

 『原典』には、これっぽっちも登場しませ〜ん!

 ゼノリカの天上の九華十席の第2席、パメラノ・コット・N・ロッド猊下の若かりし頃に似ていなくもないですが、その頃は瓶底眼鏡の根暗魔法少女だったので……ゾメガさんや、なんでそんなに悔しそうにしてるの? TS転生する? 応募する? センター目指す?

 オマエナニイッテルカワカンネー



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