11話 ハルスの魂はいつだって、『絶望に殺され』、いつだって、『こんなもの』と『世界』に『諦め』を抱き続ける
「『勇者』を知らない……? それは……本気でいってるのか?」
「マジ、マジ。大マジだ。お嬢ちゃんたちの世界だと信じられないが、ゼノリカのおかげで、俺たちの世界には、個人に世界の命運が委ねられる欠陥システムに頼らなくてよくなってるわけだ」
「…………」
典型的な魔王と勇者が盤面に居座るエックスの住人のハルスにとって、イーウのその言葉は信じがたいものだった。
魔王と勇者の不在がもたらす影響がどうなのかと試算していると―――――――
「あ、ちなみに、ゼノリカのおかげで、ここ数千年は戦争らしい戦争はないみたいだぜ? 頭のイカれた狂信者のテロとかは、たまにあるけどよ」
「…………」
「貧富の差も解消された、つーか、むしろ、富める者ほどどんどん寄付して、貧しくて餓死するような人もガチで数千年はでてないんじゃないか? ノブレス・オブリージュってやつだな。だれもが社会のだれかに貢献できるように無償の自立支援の教育プログラムもあるし、だれもが中層みたいな感じだな。あ、これもゼノリカのおかげな。『ゼノリカ』には『全てを包み込む光』、『尊き命の神の光』なんて意味もあるみたいだな。ここ、テストに出るからなー」
などとテンプレを混じえて話すイーウの言葉にハルスは、
「…………」
絶句していた。
イーウの言葉が本当であれば、ハルスがかつて夢見た理想郷を体現したのがその『ゼノリカ』ということになる。
ふと、ハルスは違和感を覚える。
「なんでそんな世界に安寧をもたらしたゼノリカにあんたらは異を唱えるんだ?」
やはり、瑕疵のない完璧な世界運営体系は存在しないということだろうか。
目の前の男が混沌を望む邪神教の徒でない限り、ゼノリカには決定的に相容れない『ナニカ』があるのだ。
おそらくその『ナニカ』こそが『ゼノリカ』の『歪み』に違いない。
ハルスはついに魂の終着点に辿りついたのかと安堵しかかったが、それが聖職者の面を被った変質者(セア聖国のプッチみたいな)である可能性に再び、『セカイ』に絶望したくなる。
例えば――――――アルファ世界を最上位として、ベータ以下の序列の世界を喰い物にしている、とか?
今は滅んでしまったカル大帝国みたいに信者たちに選民思想を植え付け、その下の犠牲を、当たり前のものとするとか?
そうであれば、アルファ世界に生まれた時点でどんな境遇であろうと勝ち組が確定しており、僻みが発生しづらい。
何故なら、文字通り、下には下が存在するから。
それはダメだ。
許容できない。
(はいはい、異世界だろうと、結局は、こんなものか…………)
ハルスは元の世界に戻って、アルファ世界への反撃どころか、『速やかに』『何もかも』『終わらせる』べきではないかと焦燥に駆られる。
『死』、こそが『遍く命』に適用される唯一無二の『救済』なのだから。
ハルスの魂はいつだって、『絶望に殺され』、いつだって、『こんなもの』と『世界』に『諦め』を抱き続ける。
イーウは、まってましたと言わんばかりに膝を叩く。
「ああ、それか。ゼノリカ神法には、『神を信奉しない自由』もあるが、俺たちリフレクションはゼノリカの組織そのものには、概ね賛同している。ただし、一点を除いて」
やはり、ゼノリカには『ナニカ』あるのだ。
それが『ユートピア』を『ディストピア』にさせる『歪み』なのだ。
「その一点とは?」
「少し話が戻るが、『勇者』はいないといったが、あれは嘘だ」
「ん?」
「まぁ『勇者』どころか、『勇者王』、いや、『英雄王』?、『救世主』?、いや、いや、『超英雄救世主勇者王現人神』みたいなのが数千年前にいたらしい……」
「は?」
なにを言ってるんだ、コイツは、という訝しげな目でハルスはイーウを見ると、
「百聞は一見に如かず。いや、この場合、結局は百聞か……? とにかく、これを読め」
分厚い本を渡されたのであった。
「これは……?」
「『ゼノリカの成り立ち』と『とある孤高な男の軌跡』が記された『聖典』だ」
次回、堂々の最終回…………!!
舞散「え? おれの出番は……?」
第2超最上世界「路地裏と事務所の一室しかでてきてないのだが……?」
元奴隷美少女「今回もセリフなかったよ……しょぼん……」
元奴隷美少女「でも、『原典』の『認知の領域外』で実は『わたし』って超重要人物だって明らかになったの。しかも、スタイル抜群だよっ! えっへん! 詳しくは『原典』の『3327ページ』を見てね! (成長すればわたしもこんな大人の魅力溢れる女性になれるんだ。これならハルスもイチコロだね……ぐへへへへへ……)」
テンプレ悪役勇者「まぁ、今のお前はその『しぼりかす』だがな……! ひゃははははっ!」
元奴隷美少女「オマエモナー。オカラ同盟結成シヨ?」
テンプレ悪役勇者「うぐ…………縛りプレイ上等だぜっ!」
呪鎖「チース!」
元奴隷美少女「あーん! わたしもハルスと一緒に縛って!」
テンプレ悪役勇者「やめて」
ハルスとセイラの組み合わせは、プラメモの因縁?




