10話 ゼノリカの『天下』に俺はなるっ!
「聖典教団の一員になれればワンチャンあるかもな」
「ゼノリカ…………だと?」
ハルスたちのいた世界では、ゼノリカが裏から支配の手を伸ばしており、それを知る者は基本的に各国の王族など権力者のみ。
しかし、実務で動くのは当然それらの部下たちなので、実は裏社会には初期の段階でその名は浸透していった。
ラムドに破れ、カースジェイルの呪いで魔人となったハルスは、以前よりも裏社会の情報の伝手が減ったが全くなくなったわけではなく、その中には勇者であろうが魔人であろうが関係なく、ハルス個人に心酔するものもいて、ゼノリカの情報もハルスは把握していた。
『そうか……サーナ王女のシワが一本増えただけか……元気そうでなによりだ……べ、別に心配なんかしてねぇ……』
『ねぇ……この後、空いてる? 一杯どぉ?』しなだれかかる
『むむっ……! ね、ねぇ……ハルスゥ♥』
ちなみに、その情報の伝手は女(フーマー大学園の知り合いにどことなく雰囲気が似ている、クレール、ルーパ、ルクレ、オパールという名前の女たち)が多く、魔人ハルスに言い寄ってくる姿を見るたびにセイラが、だっこと頭なでなでを要求して、『ハルスは年増に用はありませ〜ん、幼女にご執心なのよ〜』、と煽り散らかして、ハルスからしこたま叱られたりする。
ただゼノリカがあまりにもその正体を見せなさすぎるため、その実態は噂の域を出ないものだったりする。
「まさか知っているのか?」
ハルスの反応にもしやと訊ねるイーウ。
「ああ……名前だけだがな……」
ゼノリカに対する謎が解けるハルス。
異世界からの侵略者であればその本拠地を探し当てるのは不可能であるし、その侵略者がことごとく自分よりも強者であれば静かに速やかに侵略の魔の手を世界に伸ばすことも造作ないだろう。
「どうやらお嬢ちゃんたちの世界にもゼノリカが来ているようだな。帰還する手立てはありそうだな……」
ハルスは考える。
(もはや妥当ラムドどころじゃないな……異世界からの侵略者に対抗するには国同士で争っている暇はねぇ……! この世界の知識・技術・魔法・召喚術のありとあらゆるものを持ち帰って、異世界戦争に備える必要があるな! そのためにはラムドの才能は必須! この際、チャチな復讐心は捨てて、奴にはもっと強力無比な召喚獣を呼び出してもらうとするか……
ゼノリカ、感謝するぜ。これで世界は一つになれる可能性が見えてきた……!)
「おたくらが反目するその教団のどこまであがれば、異世界に行けるんだ?」
「どこまであがればいいのか分からんが、楽連、まぁ、天下になれれば、可能性はあるかもな。だが、お嬢ちゃんは、最上級世界か上級世界出身にしては、見どころがあるが……せいぜい愚連のB級武士止まりだろ……」
ハルスが17才時点では、愚連のC級相当であるため、イーウの評価はあながち間違いではない。
ゼノリカは大きく分けて2つの組織があり、『天上』、『天下』に分けられる。
『天上』は、神族(神の魂の系譜に連なったり、その実力を神に認められた者)から構成される、まさに雲の上に在る究極機関。
○天上
三至天帝:神を除く、世界の最頂天の3柱(存在値999!)。神の魂の系譜に連なる。魔王(兼重火器担当兼バ●ン兼老師)、勇者(兼剣担当兼弟子兼ダサい名前担当)、邪神(兼悲劇のヒロイン兼龍兼薄汚れたダッフルコート担当)枠のじゃんけんみたいな三竦み。
五聖命王:原作(9891話(3324頁))に未登場のとある超重要?人物とその娘の姦し三姉妹と???(『殿下』)からなる不可思議クインテット。神の魂の系譜に連なる。
九華十傑:神の魂の系譜に連なる者以外で最も優れた者が座する最高指導者の席。第4席は空席。第10席は25席ある。『存命者』では、魂の系譜に連なる者はいない。
『天下』は、『天上』からの命令を『実行する部隊』。つまりは、パシリの下部組織。
○天下
十人蒼天:楽連のトップ、百済のトップ、沙良想衆のトップ8からなる現世における最高の意思決定機関。
沙良想衆:第2〜9超最上級世界の神政府のトップ10からなる70名の組織。現世ぶっちぎりの絶対的な権力を有する支配者層である。
百済:第2〜9超最上級世界の暗部が集まった闇組織。100名からなる組織だが、だれもが太古から続く超エリートの暗殺一家の当主(ゾ●ディック家のシ●バが100人いるようなものと思ってくれればいい)。ゼノリカの腐敗を防ぐ役目もあり、『百済』のトップ『UV001』は、『なんでもあり』というルールであれば、現世の『武の最高峰』たる『楽連』のトップ『張強』を殺すことができるのが専らの下馬評。
楽連:第2〜9超最上級世界の『武の才能』トップ360からなる現世最強の暴力装置。360位でも愚連の10万人のトップよりも強い。
さらに『天下』の下部組織として、『愚連』という組織がある。
愚連:第2〜9超最上級世界の『武の逸脱者』が集まる治安維持機構であり、そこに属すだけで現世ではかなり栄誉なこと。
超最上級世界の住人からすれば、『愚連』もゼノリカの一組織として見られているが、『天下』の『楽連』からすれば、顔を真っ赤にして、「そんなわけあるかっ! 俺たちがどれほど『積んで』きたと思ってるんだっ!!」、としこたま叱られるので注意されたし……
愚連の中にも階級が無数に別れており、
※以下、『原作』から引用。
楽連・愚連の実力順位は次の通り。
上から、
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『楽連の武士』筆頭~360位
~~分厚い壁~~
『愚連S級武士』1位~100位
『愚連A級武士』101位~500位 ←ホルスド・シャドー、ここの真ん中。
『愚連B級武士』501位~5000位
『愚連C級武士』5001位~25000位 ←ハルス、ここの下の方
『愚連D級武士』25001位~50000位
『愚連E級武士』50001位~
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
つまり、要約すると、ゼノリカは、以下の構造となる。
※『原作』から一部引用
―――――――――――――――――――――――――
神帝陛下 (いるの? またまたご冗談を)
――――――越えられない壁(つーか、超えられるわけがない)――――――
○天上
三至天帝 (いちばんえらい)
五聖命王 (次にえらい。副大統領とか補佐官的な感じ)
――――――越えられない壁――――――
九華十傑 (ほぼ、上二つのパシリ)
――――――越えられない壁――――――
○天下
沙良想衆 (九華のパシリ。頭脳担当)
百済 (腐った身内を殺すのがメイン)
楽連 (能筋のあつまり)
――――――越えられない壁――――――
愚連 (ゼノリカですらない。ザコの集団)
―――――――――――――――――――――――――
超最上級世界では、存在値が100を超えれば、そこそこ才能ありとみなされるが、ハルスたちのいた中級世界での(『表の世界』での)人格以外完璧超人史上最強勇者と呼び名の高いセファイル王国の第一王子ハルス・レイアード・セファイルメトス(つまりは、ハルス!)が六代目魔王リーン・サクリファイス・ゾーンと一騎打ちした時点の存在値が96といえば、いかに超最上級世界と中級世界の開きが分るだろう。
ちなみに最下級世界だと、平均存在値は小数点二桁という驚きの低さである(そんな最下級世界出身のミシャ様は『三至天帝』の一柱に数えられ、彼女の偉大さ、業の深さに我々は只々声も出ない…………かわぃぃよぉ……)
とはいえ、ハルスたちの中級世界は、そんじょそこらの中級世界ではないのであるが……気になる方は、『原作』を是非一読を!!(というか、まずは『原作』読んでね!!)
「はっ……俺を誰だと心得る。空前絶後の完璧超人・勇者ハルス・レイアード・セファイルメトスとは、俺のことだ! ゼノリカの『天下』に俺はなるっ!」ドンッ!!
しかし、ハルスは、あの舞い散る御大に「その才能、嫉妬に値する」と言わしめたほど(ハルス以外にもけっこう言ってますけどね? 舞散閃光「…………黙秘権を行使するっ!!」)の超々々々天才、でかつ超々々々々大器晩成型の逸材!!
個人的には『九華十傑』のトップナインには食い込んで欲しいのであるが……(男ノ娘?「うう…………悪寒がするんだけど…………(外套パサー)あ、ありがと……猿顔に似合わず気が効くんだな…………」(後ろで暴れる猿を捕まえるロックな姐さん))
「はいはい、すごい物知りでちゅねー。おにいさん、『勇者』なんて単語、古文の時以来にきいたよー」
ゼノリカの統治する第2〜第9超最上級世界は、この数千年もの間、完全なる平和を実現できており(たまにモンスターが『壊れ堕ちる』ことがあったり、頭のイカ●たテロ紛いは後を絶たないが)、『魔王』の台頭はなく、『勇者』の発現もないため、第2〜第9超最上級世界の住人は、『勇者』という存在に馴染み深くない。
とはいえ、ゼノリカの実質的なトップである、『三至天帝』には、『勇者』も『魔王』もいるのだが、現世の人々にとっては、神話の神々みたいな遠大な存在であり、ゼノリカの熱心な信者が聖典をめくらない限り、小説や映画ですらもはや扱わない役職名なのである(つまり、『ニュー●イプ読者……ではなく、小説を読もう読者諸君』にとっての征夷大将軍みたいなものと言えばお分かりいただけるだろうか?)。




