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 気が付くと奇妙な世界に居た。


 聳え立つ巨大な建造物が立ち並び、金属で出来た乗り物が宙に浮いて移動し、大空を飛び回る世界。


 国と言う概念は無く、身分も、性別も、諍いすら無い平和な世界だった。


 しかし自我は有れど自分の自由になる身体は無く、見知らぬ人型の誰かに寄生する精神だけの存在、それが私だった。


 気が狂いそうだった。宿主の視界から見えるモノの全てが理解不能で、自分自身の存在すらあやふやで正気を保つ事に必死だった。


 落ち着けと言い聞かせながら周囲を観察し、最低限理解するのに数年の時を要し、ここが高度に発展した魔導具に満ち溢れた世界だと認識した。


 宿主は技術者で、その記憶を覗く事で様々な知識を得て自身の力と成した。


 三十年程経った或る日の事だった。突然宿主が亡くなり、私はその残った身体を利用し、宿主に成り代わり誰に気付かれる事無く日々を過ごし、慎重に事を進めた。


 私に屈辱と死を齎した存在に復讐するためだけにこの世界の全てを手中に収めた。争いなんぞした事も考えた事すら無い連中だ、多少時間は掛かったが大した障害も無く、拍子抜けする程だった。


 自身と信用の置ける部下の肉体に手を入れ、様々な魔導具を体内に埋め込み強化した。奴に対抗するための準備をしつつ星界を渡る旅に出て数百年。漸く奴を見つけ出し、監視を続け策を練り続けた。


 貴様は、貴様だけはこの身に代えてもこの世から消し去ってくれようぞ。


 後少し、後少しで全ての準備が整う・・・待っておれ




 パンドラよ!!




*


*


*


 領主様と睨みあい、一瞬でも目を逸らせば僕の負けだと気迫を込めた。流石だ、殺気こそ放ってはいないが僕の覇気に気圧される事無く睨み返してくる。やはり僕の主はこのお方以外に考えられない。


「・・・引く気は無いか・・・・・」


「御座いません。解雇なさると言うのならば、このまま王都へ向かい一暴れするつもりです。その結果が如何なるか、領主様ならばお解り頂けるかと」


 前世の僕の力だけでも王都を更地にする位造作も無い事だと知っている筈だ。アスタル様は僕、ケントとケイオス陛下の一戦を見ていたのだから。


「この私を脅すか。自分が何を言っているのか解っているのだろうな」


「勿論です。冗談や脅し等では御座いません。主従から解き放たれれば、私はこの地を守るためにこの国の中枢に殴り込みを掛けるでしょう。今この場において私の持つ強大な力を制御出来るのは私の認めた〝主〟だけに御座います。甚大な被害を出さぬためにも如何か御再考を」


 領都だけじゃない。モンタナ、ナック達孤児院の皆がやっと真面に生活出来るようになったんだ。何が何でもこの地を守る。喩え僕がこの世界で悪魔と呼ばれようともだ。


「領主様は御存じですよね?こいつの威力を」


 右掌に深淵門を、左掌に光弾を浮かべ薄笑みを浮かべた。


「・・・ハァ・・・仕方のない奴だ・・・その物騒な物を仕舞え。私の負けだ」


「御再考頂き有難う御座います、我が主よ」


 かなり卑怯なやり方だとは思うが仕方ないと、両手に出した魔法を解除した。


「王都へ出した書簡の返事が来るのは後二、三日掛かる。それまでは様子見だ、良いな」


「ハッ!」


「ど、同時に複数の魔法を・・・マルス殿、貴方は一体・・・・・」


 ゴクリと息を飲み驚愕の表情で僕に問うトーラン様に僕は


「使徒と呼ばれし地上最強の男、ジン・マキシマの弟子にして魔導師の『守護者』マルス・ガーランドに御座います」


 と、笑顔で答えた。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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