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 突発的に行われた任命式を無事に乗り越えて衛士達の指導を始めた。と言っても元々真面目に修練していた人達だし、特に問題が有る訳でもないので眺めているだけの時間が長いので僕は僕の訓練をする事にした。


 目を閉じて記憶の中の師匠と対峙する。両手の拳を顎の下に構え軽く腰を落として上体を振りながら間合いを詰める。お互い『朧』は使っていない。つい先日の手合わせの再現だ。


 少しでも師匠の間合いに入れば予備動作の全く無い長い射程の左が斜め下から変幻自在の軌道を描いて僕の前進を容赦なく止めに来る。真面に喰らえば右の追撃に襲われて一貫の終わりだ。


 身長差、リーチの差を速度で埋めなければ触れる事さえ儘ならないが、それ以上に経験の差が重く伸し掛かる。


「・・・・・フゥ・・・ダメだ・・・近付く事も出来そうにないや・・・・・あれ?皆さんどうしました?」


「・・・す、すげぇ・・・・・」

「・・・あれが使徒様の御業か・・・全然見えなかったけど・・・・・」

「ああ・・・なんかすげぇ事やってる位しか解らなかった・・・・・」

「こうしちゃいられねぇ、少しでも近付けるように俺達も頑張るぞ!」

「「「「「おう!」」」」」


 何か僕のシャドウに触発されて張り切りだしたんだけど・・・・・


「皆さん、やる気を出すのは良いですけど力み過ぎです。一旦深呼吸をして初めから通して型をゆっくりと動きを確認するようにして下さい」


「「「「「ハッ!」」」」」


 真面目過ぎると言うか固過ぎるんだよなと嘆息して気が付いた。もしかして自分にも言えるんじゃないかと。


 パンドラさんが僕に大した事の無い相手を選んだのも、領主様が常に余裕を持てと言ったのも、師匠と言う目標を、上しか見ていない、見えていない事が僕の視野を狭めていると言う意味が有ったのかもしれない。そう考えると何故かストンと胸に落ちる物が有った。


 これは良い機会だと皆と一緒に深呼吸をして槇嶋流護身術の型を初心に返って一から舞った。皆の手本になるように。


「「「「「有難う御座いました!」」」」」


「お疲れさまでした」


 午前の訓練が終わって館へと入った。午後からはメンバーが入れ替わっての訓練となる。


「領主様、ご依頼の件ですが先方から了承を頂きましたので領主様のご都合の良い日をお教え下さい。僕の転移魔法で送迎を致します」


 昼食の席でパンドラさんとの面会の件をぼかして話した。


「む、そうか。では今日中に予定の調整をしておこう」


「父上、どなたと御会いになるのですか?」


「ん?ああ、マルス殿の父君とその上役だ。我が領地の益になるやもしれんので時が来たら皆にも会わせるつもりだ」


「そうですか、解りました」


 ベルモンド様達が会う事あるのかなぁなんて考えてたら、食堂の扉が開いて執事さんが入って来た。


「お食事中失礼致します。ルクサイア家の方が面会を求めておりますが如何致しましょう」


「ふむ・・・食後に会うとしよう。応接室に通しておけ」


「畏まりました」


「ベルモンド、デカルド、少し長くなるかもしれんので執務の方は頼むぞ」


「「はい」」


「領主様、ルクサイア家とは?」


「ああ、其方は知らなくて当然か。ルクサイア家とはこの領地の東、ロードルデルフとの国境沿いの領地を頂く家だ。其方には後でこの国とその周辺図を見せておかねばならんな」


 ロードルデルフとの国境沿いって事は王都が消滅した件でって事か。領兵を送る事になるかもしれないんだよな。


「あ~、何か失礼が有っては知らなかったでは済まされませんし、最低でも国内の事は知っておいた方が良いですね」


「うむ、そうだな・・・ヒギンス、マルス殿の部屋に地図と国内貴族の一覧を用意しておいてくれ」


「畏まりました」


「宜しくお願いします」


 国内貴族の一覧か・・・前世でも子供の頃にジェイムスに叩き込まれたっけ。なんて思い出しながら食事を終えて訓練に向かった。今夜は覚える事が多そうだな。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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