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話を終えて表に向かうと訓練とは別の声がして何やら騒がしかった。
「何してんですか、母さん・・・・・」
「あ!マー君お帰り!何ってスズカちゃんに会いに来たに決まってるじゃない」
なんか母さんがスズちゃんに抱き着いてたよ・・・・・
「あ~ミーナさん、鈴華は師範代・・・今仕事中ですからその辺で」
「あら、そうなの?ごめんなさいね・・・・・そっちの子は?」
「その子もお預かりしている練習生ですからダメです」
「あら~残念だわ。ごめんなさいね、邪魔しちゃって。私はマルスの母でミーナって言うの宜しくね」
「わたしはイリス・オクタヴィスともうします。こちらこそよろしくおねがいします」
「まぁ!まだ小さいのにちゃんと挨拶出来て偉いわね~!」
「あ、ありがとうございます」
母さんがスズちゃんから離れてイリスちゃんの方へと歩いて行き挨拶を交わしながら頭を撫でた。マジで頭痛い・・・って言うか何時の間にここに来たんだ?あ、って事はフォルマ姉さんの所の転移陣使えるのか。ん?あれ?
「あの・・・師匠、ここに母が来ているって事はもしかして・・・・・」
「ああ、お前がバレリー領に行った後、両親揃って挨拶に来た」
「そ、そうですか・・・なんか済みません」
「別に謝るような事じゃねぇだろ」
「ここに来る楽しみが増えちゃったわ。今度はイリスちゃんにもお土産持って来なくちゃ」
「母さん、これから来るのは休みの日だけにしてよ」
「解ってるわ。今日はこの街を見に来ただけ。ジンさん、マー君は連れて行っていいでしょ?」
「ええ、構いませんよ」
「それじゃ行くわよマー君。案内して頂戴」
「ちょっ!引っ張らないで母さん!」
半ば強引に引き摺られるようにして母と街の散策に出かける事になった。
「こういう街並みも趣が有って良いわね~。私もこっちに住もうかしら」
そう言えば母さんを含めたパンドラ国の住民の殆どはパンドラ大陸から出た事すら無いんだよなぁ・・・モーリーさんが歪な平和が支配する国って言ってたけどその通りだと思う・・・・・
「父さんと家は如何するのさ」
「勿論ゲイルも一緒に引っ越すに決まってるじゃない。家は別に良いんじゃない?貴方がガーランドの名を継ぐ気が無いなら遅かれ早かれ無くなるんだし」
「ぅ・・・ごめん・・・・・」
「いいのよ、あなたの好きにして。ゲイルともよく話し合ったわ。あの人は頭が固すぎるのよね~、私達の役目なんてとっくに終わってるのにね」
母さんの言う通りガーランド家の役目なんてとっくの昔に終わってると思う。恐らくセレネ辺りが亡くなった頃にはもう殆ど意味を失くしていたんだろう。何しろライラが亡くなった時にパンドラさんが塞ぎ込んだ期間は僅か二十日間だったのだから・・・・・
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「つー訳で通信魔導具や転移陣も復旧したから」
「そうですか。態々いらっしゃらなくても宜しかったのに」
「ん~・・・まぁそうなんだけどな。序にブルート達の所にも顔を出そうかなと」
「そうですか・・・・・余り騒ぎは起こさないようにして下さいね」
「解ってるって。それじゃな」
「はい・・・・・少し変わった?何か心境の変化があったのかしら?」
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「さて、そろそろ帰えろうかしら。ジンさん、お邪魔しました」
「ん?何なら夕飯食べて行ったら?」
「魅力的なお誘いだけど、ゲイルを一人にする訳には行かないわ」
「そうか、それなら仕方ないか。それじゃまた」
「スズカちゃん、イリスちゃん、またね~」
母さんは夕方まで訓練を眺めてから帰って行った。イリスちゃんは母さんみたいな女性は苦手なのかちょっと戸惑ってる感じがした。いや、ほんとごめん。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




