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08

 狼と蜥蜴の相手をしていると更に森の奥から複数の魔物の気配を感じた。既に手が足りてない状況で追加かよ!敵さん勝負掛けて来やがった!!


 クソッ・・・師匠だったら何て事無いかのように一人で終わらせちまうんだろうな・・・・・


 剣を振りながら後ろを振り返ると北門前は乱戦になっていた。接近されて防壁の上から援護が出来なくなってるんだ。冒険者達は頑張ってる。けど、これ以上は―――


「グハッ!!」


 視界の隅に吹き飛ばされる冒険者の姿が目に入った。


「ブルートさん!!クッソオオォォ!済みません師匠!!禁を破ります!!」


 初対面の僕に優しくしてくれたブルートさんが吹き飛ばされるのを見て師匠からの言いつけを初めて破った。


 身体の奥に抑え込んでいた魔力と〝本能〟を解放する。全身を抑えきれない暴力的衝動が支配していった。


「アオオオォォォォン!!」


 全身から殺気と魔力が溢れ出し、隠蔽魔法が解除され本来の姿が露になって行く。犬獣人の象徴たる耳と尻尾が現れ金色だった髪が青銀へと変わった。


「クッソつまんねぇ真似しやがってよお!!てめぇ等一匹たりとも生かしちゃおかねぇぞ!!」


 俺の放った殺気に当てられ動きの止まった魔物達を次々と切り飛ばしていく。脳内麻薬に加え魔力身体強化との相乗効果で超人的身体能力を得た今の俺にとってこの程度の魔物なんて敵じゃない。


「お、おい、あれ!」

「すげぇ・・・あの小僧獣人だったのかよ!」

「あれってあいつがやってんだよな?何やってんのか解んねぇけど」


「俺のこたぁいいんだよ!目の前の敵に集中しやがれ!!」


 動き始めた筈の魔物が止まって見える程の全能感に支配され、本能の赴くまま一方的な殺戮に興じた。


「ハハハハハ!!こんな雑魚共じゃ俺は止めらんねぇぞ!隠れてないで出て来いやああぁぁぁ!!」


 俺を囲む魔物達が1/3を切った時、森の奥から強大な気配が迫って来た。


「「ウオオオォォォォン!!」」


「ヒッ!・・・何だよあれ・・・あんな奴見た事ねぇぞ・・・・・」

「双頭の犬?狼?」

「ば、バケモンだ・・・これからあんな奴相手にすんのかよ・・・・・」


 雄叫びと共に森から飛び出してきたのは漆黒の毛皮を持つ双頭の犬の魔物だった。確かオルトロスとか言ったな。


「クックックッ・・・漸くお出ましか。だが、ちょっと遅かったんじゃねぇの?てめぇ以外殆ど残っちゃいねぇぞ?」


「「グルルル・・・・・」」


 喉を鳴らし、頭を下げて俺の動きを伺うオルトロスを睨みつけた。


「てめぇのせいで使いたくねぇモンまで使わされたんだ!きっちり落とし前付けて貰うぜ!てめぇの命でなぁ!!」


「「ウオオォォォン!!」」


 お互いが叫びを上げて飛び出し、奴は右前足を、俺は左手に握った金色の剣を放った。


 ギャリイィィン!


 ぶつかり合う剣と爪が火花を散らし弾け合う。


「おらああぁぁぁ!!」


「「ガアアァァァ!!」」


 高速でぶつかり合う殺意と飛び散る火花に魅入られたかのように人も魔物もその動きを止め、二匹の怪物の決着を固唾を飲んで見守っていた。


「クッソ硬てぇなぁおい!やっぱ剣より拳!斬撃より打撃だよなぁ!!」


 敵の攻撃を交わしながら背中の鞄に剣を仕舞い両の拳を握ってオルトロスへと向かって行く。俺は師匠みたいなカウンターファイターじゃねぇ。だから―――


 前に出る!!


 小柄な身体と機動力を生かして死角へと回り込む。先ずは機動力を削る!


「おらあぁぁ!!」


「「ギャイン!」」


 俺を見失ったオルトロスの後ろ脚を殴り、蹴り飛ばしては移動する。頭が二つ有っても真後ろは見えねぇだろ?


「これで終いだ!!『ミラージュ』!!」


 光属性最上位の幻影魔法を使い、同時に『朧』状態へと移行する。


「これが俺の真羅流だ!喰らえ!『朧連撃』!!」


 次に師匠とやる時の為に考えた必殺技を試させて貰うぜ!!


 オルトロスを囲む俺の幻影に合わせて攻撃を放って行く。ほぼ全方向からの同時攻撃だ回避なんて出来やしねぇだろ。


「「ゴアアアァァァ!!」」


 全身を滅多打ちにされたオルトロスが沈む。まだ粗が有るが形にはなったな。


「「「「「うおおおぉぉぉぉ・・・・・!!」」」」」


 北門から鬨の声が上がる。俺はその声に応えるように―――


「アオオオォォォォン!!」


 遠吠えをしながら両の拳を高々と上げた。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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