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 朝食後に領主様御一家に挨拶をして聖都アブサラの東門近くに飛んだ。直接師匠の家に飛ぶのはなんか違う気がして歩いて街に入る事にした。


 ゆっくりと街を眺めながら師匠の家に向かう。商店の並ぶ表通りは賑やかで活気が有るが住宅街に入るとその雰囲気はガラッと変わり静謐な物に。


 そして暫く歩くと少し賑やかになって来る。エデン商会の売店に来る客と師匠の道場で練習に励む人達の声が聞こえてきた。


 壁に掲げられた『槇嶋流護身術』の看板の横にある門を開くと十人程の練習生達が型を舞っていた。


「只今戻りました師匠」


「おう、お帰り。どうだった?」


「全て問題無く済みました。三日後から武術指南役としてバレリー家に仕える事が決まりました。家の方は建て替えになるので完成まで二ヶ月位掛かるそうです。それで、その・・・あの子は?」


 練習生達の中に一人小さな女の子が混ざっていた。僕やスズちゃん以外に子供が練習生になるなんて珍しい。しかも他の練習生達よりも様になっていると言うか、モノになっているのが気になった。


「ああ、あの子はレスターの孫のイリスだ」


「オクタヴィス家の・・・なんて言うか〝血〟を感じますね」


 それならおかしくも無いか・・・レスター様には何度か会った事が有るけど、歳に見合わず結構な強さを感じた記憶が有る。国境を護る武闘派の家系だって聞いたし、その血を引いてるんだろうな。


「ん~・・・それも有るんだろうが・・・・・そうだな、お前手合わせしてみろ」


「えっ?!流石にあんな小さい子と手合わせなんて出来ませんよ」


「いいからいいから、お前は攻撃しなけりゃ問題無いだろ?それに、お前も何か気になる事が有るんじゃないか?」


「え、ええ、まぁ・・・・・」


「そんじゃ決まりだな。鈴華!イリス!ちょっとこっちにこい!」


 了承してないんだけど・・・・・まぁやれば解るって事なんだろうからやるしかないか。


「マルス君おかえり!」


「た、ただいまスズちゃん・・・その、師匠が怖いから離れてくれる?」


 スズちゃんが僕に飛び付くと同時に師匠から嫌な気配が漂ってきて背筋を嫌な汗が流れた。抱き着かれるのは嫌じゃないけど、せめて師匠の見て無い所だけにして欲しい。


「ジンさま、なにかごようでしょうか?」


「おう。イリス、こいつは俺の弟子なんだが、一つ手合わせしてみないか?」


「このかたが・・・・・はじめましてイリス・オクタヴィスともうします。みじゅくものですがおてあわせしていただけますか?」


「僕はマルスって言うんだけど、イリスちゃんさえ良ければ僕は構わないよ」


「では、よろしくおねがいします」


「お互い魔力の使用は無しだぞ。後、マルスは攻撃すんなよ」


「「はい」」


「では、始め!」


 師匠の掛け声と共にイリスちゃんの表情が真剣なものに変わる。この子・・・初めて会った時のスズちゃんを超えてる?


 イリスちゃんが独自の歩方で僕の周りを回り始め、僕の背後から攻撃を始めた。


「クッ!」


 僕が難なく回避するとイリスちゃんは悔しそうに短く声を上げ、また僕の背後、死角へと回り込もうと移動しつつ攻撃を繰り返した。


 そして十分程で彼女は動けなくなりその場で膝を付いた。それにしてもこの子・・・・・


「そこまで!イリスは休憩の後は型を続けとけ。マルス、話があるから来い。鈴華、少し頼む」


「はい、父様」


 師匠に呼ばれて屋内へと入り、師匠の部屋で向かい合って話をした。


「さて・・・あいつ、イリスの事如何見る?」


「師匠は初めから気が付いてたんですよね?あの子が既に別の武術を収めているかもしれないって」


「ああ、正確にはお前等と同じ転生者だろうって事もな」


「精神生命体に乗っ取られていると言う線は?」


「それは無いな。それなら俺が気が付かねぇ訳ねぇだろ。それと、イリスが収めている武術は地球の物だ」


「え・・・・・じゃぁあの子は元地球人って事ですか?」


「十中八九な。形意拳つってな、一般的には動物を模した十二形拳が有名な拳法だな、ありゃあ」


「そうですか・・・それであの子を如何するんですか?」


「ん?別に如何もしねぇよ。前世は如何在れ今はオクタヴィスの娘だ。俺の弟子にするかはまだ決まっちゃいねぇが、教わった武術を悪用しないと言ってたしな」


「あの子を信じると?」


「いや?まだ信用するだけの材料も無いのに信用するとか無いだろ。当面は鈴華に預けて様子見だな」


「そうですか・・・・・」


 師匠がそう言うなら僕も問い質すような真似はせずに黙って様子見だなと話を終えた。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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