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パンドラさんが地面に降り立つと円柱状だった結界が半球へと変わる。
「出せええぇぇぇ!貴様は!貴様だけはこの手で殺してやる!!ここから出せえぇぇ!!」
半狂乱で結界を叩く錬金術師を一瞥して鼻を鳴らしてパンドラさんは僕の所に歩いてきた。
「マルス、髪の毛一本貰うぞ」
「え?それは構いませんけど、何に使うんですか?」
パンドラさんは僕の問いに答えず髪の毛を手に取ると、結界の近くへ歩いて行った。あ、何時の間にか服が黒のTシャツとジーンズに変わってる・・・・・
「クックックッ・・・良い様だな・・・この程度の結界すら解除出来ねぇ奴が俺様を倒す?ハハハハハ!!笑わせんじゃねぇぞ!!」
「グオオォォォ!!ガアアァァァ!!」
「俺が何でてめぇ一人を閉じ込めるためにこんなでけぇ結界張ったか解るか?俺様は優しいからよ、今からてめぇの望みを叶えてやるよ」
パンドラさんは結界内で暴れる錬金術師に声を掛けると髪の毛を握った右手を前に出し目を閉じた。
握った拳から光が漏れ出し周囲を白く染め上げる。その光が収まった時に僕達が見た物はパンドラさんの横に並ぶ一人の男性だった。
「こいつが欲しかったんだろう?お前の、お前だけのために造られたこの身体がよ」
「おああぁぁぁ!!それだ!それを寄こせ!!それさえあれば私は全てを手にする事が出来るのだ!!」
あれが錬金術師の受容体?じゃぁ僕は?僕の髪の毛から造られたなら僕でも良いんじゃ?それとも何か僕とは違いが有るとか?
「そうかそうか。そうだよなぁ、こいつを造る為だけに気が遠くなる程の年月を使ったんだもんなぁ・・・クックックッ・・・・・そら、くれてやるよ」
「ちょっ?!」
「「「「「おい!!」」」」」
僕達が見守る中、パンドラさんはなんて事無いように受容体を結界の中に放り投げた。
「おお・・・・・素晴らしい・・・これで私は全てを手にする事が―――」
「出来やしねぇんだよ!!」
「ぐはぁ!!」
「これはアレスの分!こいつもアレスの分!全部アレスの分だ!喰らえやあああぁぁぁぁ!!」
「ぐああああぁぁぁああぁぁぁ!!」
錬金術師が受容体へと入り歓喜の声を上げた次の瞬間、パンドラさんの拳が錬金術師の顔面に突き刺さり、吹き飛ばされた錬金術師は結界に叩きつけられたままパンドラさんの連打で磔にされた。
やがてボロ雑巾のようになった錬金術師が解放され、パンドラさんの足元に転がり、錬金術師を見下ろすパンドラさんの身体から闇が噴出した。
「そら、立てよ・・・次は不意打ち無しで正面から相手してやるからよ。俺を倒してその身体で全てを手にするんだろ?」
回復した錬金術師が立ち上がり全身から光が迸る。
「・・・・・殺す!!」
錬金術師がパンドラさんへと飛び掛かる。両者の身体から発せられた光と闇がぶつかり合い、一方的に光が削られて行った。
「何故だ!!何故だあああぁぁぁ!!」
「・・・・・忘れちまったのか?あの時だって全力で放った光が俺に届く事は無かったじゃねぇか・・・言ったろ、俺の闇はお前を倒すために生まれたんだってなぁ!!」
「ぐあああぁぁああぁぁぁ!!」
「あの時は封印して永遠に苦しめてやるつもりだったが今回は違うぞ!!可能な限り苦しめながら消し去ってやる!二度と再生出来ない位分解した上でなぁ!!」
「ぎいいぃやああぁぁ!!ぐがああぁぁあぁ・・・・・!!」
「ハハハハハ!!いい顔だ!最高の気分だぜ!ハハハハハ!!」
錬金術師は闇に囚われた身体の末端部分から分解されて行った。僕は苦悶の表情で断末魔を上げる錬金術師から目を背けてしまった。
「・・・・・終わったか」
「見たいね・・・・・」
パンドラさんは錬金術師を消し終わってもその場を見据えて動こうとしなかった。
「・・・ハァ・・・やっぱ〝神〟なんていねぇな・・・・・俺と言う存在が〝神〟に使わされたものなら、奴を倒す事で役目を終えて消えちまうんじゃないかとも思った事も有るが・・・そんな訳ねぇか・・・・・」
「・・・・・私は居ると思うな・・・こうして転生前の記憶が戻ったのは偶然なんかじゃなくて必然だって思うし」
「僕も居ると思う・・・僕達が生まれ変わったように何時かアレスさんも生まれ変わってパンドラさんに必要な時に現れるんじゃないかなって・・・ひょっとしたらタニアさんも何処かで生まれ変わってるかも」
「・・・・・タニアか・・・あいつは残念な奴だったから、生まれ変わっても記憶が戻らなさそうだよなぁ・・・・・」
「あはは・・・今頃何処かでくしゃみしてるかも」
「さて、後始末も有るし、報告序に聖都に行くか」
「だな・・・・・鈴華、マルス、後で話がある」
「はい・・・父様」
「・・・・・はい」
パンドラさんの転移で聖都の北門前に飛んだ・・・・・師匠の話ってあれだよね・・・殴られる覚悟しておこう・・・・・
ここまで読んで頂き有難う御座います。




