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夕闇の中焚火を挟んでスズちゃんの作った料理を堪能した。
「懐かしいな・・・師匠と二人で山籠もりした時を思い出すよ。スズちゃん料理上手なんだね、とっても美味しいよ」
「・・・ありがとう・・・・・料理は父様や母様にも教わったけど、最初に教わったのは主様からなんだ・・・・・」
「・・・・・それって『試験場』での話?」
「ケント君には全部話したけど、マルス君にも全部話すね。私・・・前世ではコボルトから進化して獣人になったんだ・・・・・」
「そ、そうなんだ・・・・・」
「幻滅した?でも、この身体は正真正銘人間だから」
「驚いたけど幻滅なんてしないよ。そもそも僕にもその血が流れてるんだし」
モーリーさんから貰った本には書いてなかったからなぁ。著者の玄田さんは知らなかったのかな?それともライラさんに配慮したのかな?
「あ、そうだった。それで、当時主様は木箱だったから食事は出来なかったんだけど、私に調理の仕方を教えてくれたんだ。初めて料理を教わったのはゴブリンの集落を制圧した時で、お祝いだってお肉を好きなだけ食べさせてくれてね。それまで調理なんてした事が無かったから、塩胡椒で焼いただけだったけど・・・とっても美味しくて・・・嬉しくて・・・・・主様ぁ・・・・・」
「スズちゃん・・・・・心配だよね・・・あの人の事だから大丈夫だとは思うけど・・・・・」
昔を思い出して涙を流した彼女に僕は何と言って良いのか解らなかった。
「ごめんね・・・ちょっと懐かしくて寂しくなっただけだから。それで、その後は主様を背負って試験場を奥へと進んで行って・・・そう言えばアレスさんは?アレスさんが如何なったか知ってる?」
「あ・・・一年位前にモーリーさんにもう長く無いって言われてたのに会いに行くの忘れてた・・・・・ごめん・・・僕、自分の事しか考えて無かった・・・・・」
「それだけ父様に勝ちたかったんでしょ?ジン・マキシマに勝とうと思ったらそれ位でないと」
「いや、そんなの言い訳にもならないよ。実際こっちに来てから修行以外の事もしてたし」
「ふ~ん・・・アレスさんも生きてるなら会いたいな。アレスさんはね、元はオーガだったんだよ。私が主様と一緒にアレスさんの居た集落を襲った時に主様があいつは見所が有りそうだって言って仲間になったの。それからは三人で試験場を進んで行って―――」
食事の間中スズちゃんは昔話を続けた。モーリーさんから貰った本には書かれていないパンドラさん達の絆を感じた。
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「あんた達!何で帰って来たのにこんな所で屯してんのよ!!」
「お~ベル、あたい等暫くここから動けねぇからお前も一緒にここで野営しようぜ」
「嫌に決まってんでしょ!あたしはあんた等と違って繊細なんだから!それよりも話を聞かせて頂戴。話せる所だけでいいから」
「あ、そういや話せる所だけでいいからって言われてたな。色々驚かされ過ぎてすっかり忘れてたわ。済まんベル」
「ジン・・・あんた雑な所がフォルマちゃんに似て来たわよ。少し気を付けた方が良いんじゃない?」
「な、なん・・・だと・・・・・」
「おい、ジン!あたいに似て来たって言われてその反応はねぇだろ!!ベルも!雑言うな!!」
「雑が嫌なら大雑把って言い直すわ」
「酷くなってるじゃねぇか!」
「フォルマ、冗談に嚙みつくなよ。新手の痴話喧嘩か?でだ、宮殿での話なんだけどな―――」
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食事も終わり焚火を消した後に設営したテントで毛布に包まった。
「狭くてごめん。一人旅のつもりだったから大きなテントは要らないと思って・・・・・」
「ううん、大丈夫。野営は久しぶりだからちょっと楽しいし・・・そう言えば一緒に寝るのも久し振りだね」
師匠の家に居た時、疲れて道場でごろ寝した事も有ったなぁ。
「懐かしいな・・・・・あの・・・あんまりくっつかれるとその・・・・・」
「良いじゃない別に・・・ふ、夫婦なんだし?」
「いや、それは前世の話で、僕は思い出してもいないし?」
「そうだね・・・・・前世の話をしても思い出さなかったし・・・だから色々したら思い出すかなって」
「ちょっ!色々って何?!いや、ほんと止めて!」
「大丈夫大丈夫・・・怖くないよ~、痛くしないからね~」
「それは男の台詞、って・・・あっ・・・・・あ―――」
その夜、僕は前世の記憶を取り戻した。そう言えば前世でも同じようにライラに襲われたんだった・・・散々待たされたからもう我慢しなくていいよねとか言われて・・・・・
ここまで読んで頂き有難う御座います。




