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「フォルマ様は覚えていらっしゃいますか?私の兄、ヘリオスの事を」
「ああ、忘れるもんか。十八であたいを超え、二十で転移魔法を使って行方不明に、そして三十の時に妻と息子を連れて突然帰ってきやがった」
「そうです。そもそも兄様が帰って来なければこの事態は起こりませんでした」
「は?何でだよ?あいつは別に何もしちゃいねぇだろ」
「帰って来た事でガーランド家の直系が途切れる事無く続き、他家へと嫁いだ私の子孫との縁が依代としての適性者を生んでしまった」
「何でパンドラに言わなかったんだよ」
「兄様やその息子を追放するか殺すしか方法が無かったからです。運命を変えると言うのはそう簡単にはいかないのです」
「そういやカグツチが言ってたな『運命の強制力を甘く見るな』とか」
「はい。私の力で運命を変えられる分岐点を探り、見つけ出した答えがこの時間、この場所となります。ジン様と言う生き抜く力を持つお方とパンドラ様を引き合わせるためにパンドラ様に魔力精神生命体の討伐と救済の話を持ち掛けました」
「あたいらで倒しちまったらいいんじゃねぇの?」
「魔力総量がパンドラ様以上のモノをですか?依代を倒しても異空間に逃げられるだけです。マルス様を探すために憑依している今、依代と共に完全に消滅させるしか手が無いのです。その為にはパンドラ様のお力が必須かと」
「まぁ解ったわ。それじゃ俺達は自宅待機しときゃいいんだな?」
「はい。宜しくお願いします」
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「それでおぬし等揃ってここへ来たと言う訳か」
「そう。そう言う訳だからお前も協力しろ」
「晩飯抜きにしておいて良くそのような事が言えるな。我はこの街以外守らんぞ。そういう約定の筈だ」
「お前は時々頭悪いな。そいつを倒せなけりゃこの星ごと無くなっちまうんだって」
「星ごと?何だか知らんが、街を守ればいいだけであろう?」
「そこからかよ!!いいか、星ってのはこの街や陸地、海なんかをひっくるめた全部の事なんだよ」
「と言う事は、この街も?」
「無くなるに決まってんだろ」
「解った。そいつは何処だ、今直ぐ消し炭にしに行こうではないか」
「だから俺達じゃ時間を稼ぐのが精いっぱいなんだよ!パンドラが来るまで時間を稼ぐんだって言っただろうが!!」
「何だ面倒臭いのう。とっととパンドラ殿を連れて来たらよかろうに」
「だ・か・ら!別の星に住んでるから転移が出来なきゃ行けねぇって言っただろ!人の話をちゃんと聞け!!」
「解った解った。異常な魔力を感知したら知らせればよいのだろう?」
「おう。晩飯食わせてやるからしっかり監視しろよ」
「うむ!任せておけ!!」
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「お父様、これを各門の上とその中間に張り付けて来て下さいなの」
「解った。注意する事は有るか?」
「決して剝がれたりしないようにして欲しいの。出来れば見張りも付けて下さいなの」
「誰にも触らせないように見張りを二人つけよう」
「ありがとうなの。お母様、私達は中庭に参りましょう」
「ええ」
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「この程度の魔物を引き連れて何になる」
一人で行くよりはましだ。何より見つけた時に逃がさないためには囲む必要があるかもしれんだろう?
「気に入らんな。この私が取り逃がすような真似をすると?」
万が一に備える事に何の不満が有る。それにだ、奴は〝人〟だ。人は人里を離れて生きてはいけん。町や村を攻めるなら数は多い方が良い
「解らんでもないが、これだけの力があれば町所か国でさえ制圧する事は容易いだろうよ」
その時に何人死ぬ?間違っても奴が死ぬような事があってはならんのだ
「その時はまた探せばよいだろう?」
同じ者が存在する確率はほぼ零だ。もう一度一から創り直すには時間が掛かり過ぎる
「死なんのでは無かったのか?ならば・・・・・」
人の言う死とは違い、魔力的に消滅させられれば復活する術は無い
「解った、善処しよう。その代わり私の獲物にも手は出すなよ」
ああ・・・そう言う契約だからな・・・・・
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近くの町に買い物に行っていたスズちゃんが帰ってきた。
「ただいま、マルス君」
「お帰り、欲しい物は手に入った?」
「ある程度はね」
「そっか、それじゃ行こうか。次の町なら見つかるかもしれないし」
「うん」
女の子だし、聞いちゃいけない物かもしれないから聞かずにスズちゃんから荷物を受け取り収納に仕舞って移動を再開。森の中を北へと向かって暫く歩いて日が落ち始めた所で野営の準備をした。
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