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 憎い


 この状況を作り出した奴が憎い


 手足の腱を切られ


 魔力拘束を何重にも施され


 鎖で雁字搦めにされて暗闇に囚われた


 目の前の扉に付けられた覗き窓から漏れる僅かな光と憎悪だけが俺を現実に引き止めていた


 奴を引き裂く事を夢想するだけの時を過ごした


 だから俺は悪魔に魂を売った


 自身を神と嘯く奴は言った


 我が僕となれば其方の望みを叶えてやろうと


 今の私に否などなかった


 さあ


 力を解き放て!!


*


*


*


 街道を逸れて人目に付かないように北へと向かった。小高い丘に登ってリボルテの街の様子を覗った。


「良かった。今の所何かが起こってる様子は無いみたいだ」


 空を見上げ太陽の位置を確認。時刻は昼になろうとしていた時だった。


「なっ!何だあれ・・・光の柱が・・・・・」


 突然の閃光と共に東の方角に光の柱が立ち上がり、暫くしてから地面が揺れた。


「こんなに離れているのにここまで伝わって来るなんて・・・・・」


 魔力波も感じたし、おそらく魔法攻撃だと思う。あの規模だと爆心地は何も残って無いだろう。


「・・・ぅ・・・・・マルス君、下して」


「スズちゃん大丈夫?もう少しこのままの方が良く無い?」


「もう回復したから大丈夫。それに、ちょっと恥ずかしいし」


「あ!ご、ごめん。直ぐに下すね」


 スズちゃんを下ろし東を見ると、光の柱は消えていた。


「スズちゃん、何が起こってるの?色々聞きたい事が有るんだけど教えて貰える?」


「うん・・・でも先ずはここを離れよう」


「行く当てでもあるの?」


「北へ。海岸沿いを北へ向かえば山脈が有るの。あそこなら見つかり難い筈よ」


「解った、移動しよう」


*


*


*


「で、如何なってんだ?」


「如何って言われてもな。通常は周囲の魔力を吸って青白く光ってるもんなんだよ転移陣は」


「光ってねぇじゃん」


「でもほら、魔力を流すと青く光るじゃん」


「だから何なんだよ!壊れてんなら直せよ!」


「あたいが直せる訳ねぇだろ!魔導具なんて専門外だ!」


「チッ!使えねぇ奴だな。長く生きてる以外に取り得はねぇのかよ!」


「あぁ?!てめぇ喧嘩売ってんのか?!直せるもんならてめぇが直してみやがれ!!」


「あんたら何やってんのよ、こんな時に喧嘩?」


「あ、ベルお帰り~。って随分早いけど如何した?あたいに会いたくて早引けか?しょうがない奴だな~」


「馬鹿言ってんじゃないわよ、そんな訳ないでしょ。あんたら喧嘩してて光の柱が立ったの気が付かなかったんでしょ?」


「「は?なんだそれ?」」


「北東の方向に巨大な光の柱が立ったのよ。アルバートさんの見立てじゃ大規模な魔術じゃないかって」


「大規模魔術?パンドラ・・・な訳ねぇか」


「ああ、あいつが行き成り大規模魔術攻撃とか有り得ねぇ」


「それで自宅待機って事になったのよ・・・・・ふぅん・・・これ、向こうが壊れてるわね」


「お、流石魔導具職人。何処かの脳筋女とは大違いだ」


「てめぇ、覚えてろよ」


「嫌だね。で、直せんのか?」


「無理に決まってるじゃない。向こう側が壊れてるんだから、向こう側を誰かが直すか、誰かが転移魔法でも使って向こうに行って直すしかないわ」


「・・・・・よし。フォルマ、行ってこい」


「あたいが転移魔法使えるなら、ここに転移陣は必要ねぇだろ」


「だよな」


「「ハハハハハ!」」


「だあああぁぁ!笑っとる場合か!如何すんだよ!パンドラに連絡・・・あ、宮殿行くぞ!聖下も通信魔導具持ってる筈だ!」


「おう!」


「無駄だから止めときなさい」


「「なんでだよ!」」


「あの人が作った物が壊れる事が有り得ないのに、壊れたままにしているのは不自然だわ。きっと直す余裕がない事態が起こってるのよ」


「・・・・・おい、ベル。それはさっき言ってた光の柱と関係あると思うか?」


「有ると思うわ。偶然にしては出来過ぎてるでしょ」


「そう、だな」


*


*


*


「マルス君は何から聞きたい?」


 前を歩くスズちゃんが振り返りもしないで聞いてきた。


「僕が狙われている理由と、さっきの光の柱が関係あるのかって事かな」


「関係あると思うよ。きっと適性者が放った物だろうし」


「適性者?何の?」


「依代としての適性者。完全体じゃないけど」


「依代?その完全体が僕って事だよね?」


「そう。貴方は『救国英雄の子孫』で『王家の懐剣』の息子、『王国の守護者』の生まれ変わりだから」


「・・・・・何で・・・何でその銘を知ってるの・・・スズちゃん、君は一体・・・・・」


「私も・・・私も転生者だから・・・・・私の前世の名前は―――」




 貴方の妻、ライラ・ガーランドよ、ケント君




 振り向いた彼女は笑顔でそう言った。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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