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 上空の空間が歪んだまま時間が過ぎて行く。この感じは転移魔法の筈だが何故現れないのか不思議に感じていた。


「・・・・・あ、もしかして転移になれてなくて時間が掛かってる?」


 にしても誰が?この世界で転移出来る人なんて思い当たらない。可能性が有るとしたら師匠とカルヴァドスさん?後はフォルマ姉さんか。


 歪んだ空間から魔力が溢れ出し転移者の姿が現れた。


「え・・・・・スズちゃん?!何でスズちゃんが?!って言うか危ない!!」


 上空から落下してくるスズちゃんに向かって飛び上がり、空中で受け止めて着地した。


「マルス・・・君・・・・・」


「魔力欠乏症だから、今は兎に角休んで。事情は後で聞くから」


「・・・・・に・・・逃げ、て・・・・・ここから・・・離れ・・・て・・・・・」


「解ったから。目を閉じて、少し眠った方が良い」


「・・・うん・・・・・」


 眠りに着いたスズちゃんを抱きかかえたまま館へと運んだ。逃げろって一体何が起こってるんだ?師匠に何かあったのか?だとしてもスズちゃんが転移を使ってくる意味が解らない。


「ま、マルス様、そちらはもしかしてスズカお嬢様では?」


「ええ、転移してきたのですが僕に逃げろと言って・・・ボーロさん、もう暫く皆さんは避難したままにしておいて下さい」


「ハッ!了解しました!」


 館に入り部屋へと戻り、スズちゃんをベッドに寝かせた。如何しよう・・・今直ぐ逃げろって言われたけど、最低でも理由を領主様に言っておかないと。


 でもなんて説明しよう・・・街の住民を避難させといて何だか解らないけど逃げますなんて通る訳ないし。やっぱりスズちゃんが回復するのを待って事情を聴くしかないか。


*


*


*


「おい!如何言う事だ!」


「如何と言われてもな。只スズカが転移魔法を使っただけとしか言いようがないが?」


「ふざけんな!俺は言っておいた筈だぞ!鈴華に何かあったら許さねぇってな!!」


「それは我が何かをした場合の話であろう?我は何もしておらんよ。スズカはあの小僧への思いだけで自力で飛んだのだ。流石は其方とマリーベルの子と言った所か」


「・・・じゃあ何で止めなかった!あいつはまだ子供なんだぞ!」


「子供?確かに若いが子供ではなかろう?自力で生きて行ける力が有り、子も産める。一人前の女性ではないか。一人の女性が自分の意思で親を離れ、愛する者の元へと旅立った。それだけの事だ」


「この野郎・・・てめぇは晩飯抜きだ!少しは反省しやがれ!!」


「なっ?!それは理不尽が過ぎるであろう?!待てジン!何処へ行く!」


「うるせぇ!てめぇにゃ関係ねぇ!!」


*


*


*


「お、ジン。丁度そっちに行く所だったんだけど、今の魔力反応はなんだ?」


「フォルマ、パンドラに連絡を取ってくれ。鈴華が転移魔法を使いやがった」


「は?あの嬢ちゃんが転移?マジかよ・・・信じらんねぇ」


「いいからあいつに連絡を取ってくれ。あいつなら何処に飛んだか解るかもしれねぇ」


「お、おう・・・あれ?ちょっと待ってくれ・・・・・何だこれ?反応が全くでねぇんだけど・・・・・」


「は?なんだそれ?如何言う事だ?」


「いや、普通は魔力を流すと通信状態になるから・・・え~っと、環境音?だったか?周りの音とか聞こえるんだけど、一切聞こえねぇんだよ」


「って事は繋がって無いって事か?」


「おそらく」


「壊れたのか?・・・・・なぁ、他に何か連絡とる方法無いのかよ?」


「連絡っつーか、向こうと行き来する転移陣が奥にあるぞ。付いてきな」


「おう」


*


*


*


 何故だろう・・・魔力欠乏で青白い顔をして眠るスズちゃんを見ていると、悲しくて胸が張り裂けそうになる。今まで彼女を見てこんな気持ちになった事なんて無いのに・・・・・


「マルス殿・・・・・」


「領主様・・・僕は・・・・・」


「よい、私が悪かったのだ。あのような場で言うべきではなかった。マーガレットに叱られてしまったよ・・・『あれでは断れないではないですか』とね」


「済みません。お嬢様の事が嫌と言う訳ではないのですが・・・お断りさせて頂きます」


「其方の顔を見て気が付いたのだ。彼女の事が好きなのだろう?」


「・・・・・正直解らないんです・・・でも、失いたくないと言う気持ちで胸が痛いんです」


「そうか・・・ならば行きなさい。彼女に逃げろと言われたのだろう?何が起こるのかは解らんが転移魔法を無理に使う必要がある程の事が起こるのであろう。其方は彼女を連れてこの街を出るがいい」


「ですが・・・・・」


「この街で起こるとは限らんし、目的が其方であるならば姿を隠した方が良いとは思わんか?」


「あ・・・済みません、僕のせいで・・・・・」


「フッ・・・良いのだ。さあ、行くがよい。いつの日か約束を果たしに来る事を楽しみに待っておるぞ」


「は、はい!」


 未だ眠るスズちゃんを背負って領主様に頭を下げて館を後にした。街を出てから後ろを振り返り、必ずライエルさんの料理を持って会いに来ると誓いを込めてもう一度頭を下げた。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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