05
「一応確認しますけど、スタンピードが起こるって事で良いんですよね?」
「すたんぴ?なに?あ、いや、君の居た所では魔物の暴走をそう言うのか?」
「ですです。それって割と頻繁に起こるんですか?」
「この辺りは辺境だからな。冒険者の数が足りていない事も有って年に一度は起こるな。まぁ、住人達も慣れたものだよ」
アインさんの説明では増えた魔物達が餌を求めて争い、その争いに負けた魔物が山を下りて来るのだそうで、数こそ多いが個体としてはそう強くは無いのだそうだ。
北門に到着するとアインさんが数人の衛士に指示を出して衛士達が各門へと散って行った。直ぐに衛士達が集まってくるのだろう。
アインさんと防壁の上に上がって周囲を見渡した。防壁の高さは5m位で厚みも2m近い。防壁と森の間は300m位か、これなら大丈夫かな?
「アインさん門は大丈夫ですか?突破されるとしたら門が一番脆そうなんですけど」
「ああ、あれは一見木製だが内側に鉄板を仕込んであるから大丈夫だ」
アインさんと話しながら東門の方向へと移動して行く。備えは出来てるって事か。
「後気になるのは上と下か・・・空飛ぶ魔物はどうです?」
「飛行型の魔物で脅威に成るモノは居ないな。地中は防壁の基礎が私の背丈よりも深く掘り下げられていると聞いた」
「そうですか・・・済みません、その弓矢を貸して貰えますか?」
「え?あの隊長、この子は・・・・・」
「良いから貸してやれ」
「は、はぁ・・・・・」
近くに居た衛士さんから弓矢を狩りて矢を番えた。ん~、思ったより張力が強いなこれなら届くかな?
「よっと・・・・・当たりました。アインさんの予想より早く攻めて来そうです。避難と準備を急がせた方が良いかもしれません」
「あ、ああ、解かった、急がせよう・・・・・」
木々の間の茂みに潜んで居た狼の魔物を倒してアインさんに準備を急がせるように告げた。弓を借りた衛士さんが呆けた顔で倒した魔物を見ていた。
「僕は一回りしてくるのでお願いします。この弓矢はお借りしてても良いですか?」
アインさんと別れて防壁の上を歩いて行く。東門に着くまでに二匹の魔物を倒した。
東から南へ、南から西へと移動していくが潜んでいる魔物の気配は感じなかった。そして北門へと戻る途中で更に二匹の魔物を倒した事をアインさんに報告した。
「あれが敵の偵察だとすれば敵の狙いは北門って事になると思うんですけど如何思います?」
「て、偵察?魔物が組織立って動いていると言うのか?そんな話聞いた事が無いぞ」
「いや、狼や蟻の魔物は群れを作りますよね?つまり意思の疎通が出来て組織立って動いているって事です。それを纏める事の出来る魔物が居たとしても不思議じゃありませんよ。事実として、竜と呼ばれる魔物は人と変わらない、もしくはそれ以上の知能を持っていますよ。まぁ、彼等は他の魔物を従えるような事はしないと思いますから、別の魔物だと思いますけど」
あくまでも師匠の所に居たカルヴァドスさんはだけど、知能が高すぎて他の魔物を見下していると言うか餌としてしか見てない節が有るんだよなぁ。
「君は竜を見た事が有るのか?!竜とは架空の生物ではないのか?!」
「そっち?!いや、会った事と言うか話もしましたけど、今はそれよりも相手が何時もの魔物では無く、軍隊と変わらない相手だと思って防衛する事に専念した方が良いかもって話なんですけど」
「ぐ、軍隊と変わらない・・・・・すまん・・・ちょっとカインズと相談してくる・・・・・」
アインさんが冒険者に指示を出しているカインズさんの所へと歩いて行く。僕はそれを防壁の上で溜息を付きながら見送った。慣れてるんじゃなかったのかよ・・・何か心配になって来たんだけど・・・・・
ここまで読んで頂き有難う御座います。