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結局碌に寝る事も出来ないまま朝になり、建物の中から人の気配がしてきたので中へと入った。
「済みません、魔物を預けに来たんですけど」
「はい、マルス様ですね?準備できておりますのでこちらへどうぞ」
カウンターに座っていたお姉さんに話しかけると直ぐに奥へと案内された。
「お待ちしておりましたマルス様。こちらの倉庫を空けておきましたのでどうぞお使い下さい」
「・・・・・あの、支部長・・・倉庫の大きさは問題無いんですけど、何で領主様御家族が中にいらっしゃるんですか?」
「え・・・いや、その~・・・・・」
「ボーロさんも、そんな所に隠れても無駄だって解ってるでしょ?何やってるんですか」
ボーロさん達護衛は倉庫の外だからいいけど、領主様達は冷蔵倉庫の中で寒くないの?
「いやぁ、私は隠れて脅かすのは不可能だと言ったのですけど・・・・・」
「済まん済まん。私が使徒殿の御業をこの目で見てみたいと言ったのだ」
「領主様・・・そうですか、それで僕に何の用です?僕を捕まえに来た訳じゃなさそうですし、心配しなくても約束通り魔物は預けて行きますよ?」
「そのような心配などしておらん。私達は君を―――」
「父上、その先は私が」
「む、そうか・・・そう、だな。それが筋と言う物だな」
「マルス殿申し訳なかった。私達は改めて君を我が家の客人として迎えるためにここへ来たのだ。私のした事は許される物ではないが、どうかやり直す機会を貰えないだろうか」
「許すも許さないも有りません。僕が身分も弁えず領主様の好意に甘えた結果、デカルド様に誤解させてしまったのが原因ですから・・・ですから、もうこれ以上お世話になる訳には・・・・・」
「だめええぇぇぇ!!行かないで下さいマルス様!私マルス様ともっとお話ししたいですし収穫祭も一緒に回りたいのです!だから行かないで下さい!!」
「ちょっ!は、放して下さい!」
「嫌です!何処にも行かないと約束して下さるまで決して放しませんから!!」
「解りましたから!約束しますから放して下さい!!」
「約束ですよ!一緒に収穫祭も回って下さいね!!」
「行きますから!約束しますから!だから放してええぇぇぇ!!」
僕はこの時、またパンドラさんに録画されていたらなんて、そんな事ばかり考えていたんだ。
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「あら?スズちゃん、そんな所で何やってるの?」
「あ・・・ベル様、その・・・・・」
「それってジンにしか動かせないから大丈夫なんだろうけど、万が一が有るから乗らない方が良いと思うわよ」
「はい・・・・・解ってます・・・解ってるんだけど・・・・・」
「あ、あたしも解っちゃった。スズちゃんそれに乗ってマルス君に会いに行こうとしたんでしょ?」
「う・・・・・」
「気持ちは解らないでもないけど、それに乗ってって言うのは止めといた方が良いわよ。ジンでさえ『空を飛んだ方がまし』だって言う位だし。それじゃ行ってくるわね」
「はい・・・行ってらっしゃい・・・・・」
「全くアルバートさんったら何考えてあそこまで改造したのかしら。ジンにさえ乗れなかったら意味無いじゃない・・・・・」
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「中々面白い物が見れたな」
「はい。武術の達人と言えど、まだまだ子供と言う事でしょうか」
「マーガレット、よくやりましたと言いたい所ですが、はしたない行いなのですから今後は気を付けなさい」
「はい、お母様・・・マルス様申し訳ありませんでした。その、私、必死だったものですから・・・・・」
「いえ・・・・・それよりも場所を移動しましょう。話をするにしてもここでは人の目が多いですし」
「うむ、では館に戻るとしよう」
既に手遅れ感が半端なかったが、冷蔵倉庫に魔物を預けて組合員達に生温かい目で見送られて領主様達と馬車で領主館へと向かった。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




