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何とか一時的に魔力を完全に抑える事に成功はしたが、意識的にやっているようじゃ〝意〟を消したとは言い難い。〝朧〟を使うのと同様に無意識且つ自然に移行出来ないとと、瞑想しつつ魔力操作の訓練を続けた。
「フゥ・・・・・ヒギンズさんとデカルド様は上手く誤魔化せたかな・・・・・」
でも二人の事が気になって訓練に集中なんて出来きやしなかった。
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「何故だ・・・何故マルス殿は逃げたのだ・・・・・」
「ち、父上、毒を盛られたと嘘をついたのではありませんか?だからカップを持って逃げたとしか・・・・・」
「違います!マルス様が何故嘘など付かねばならないと言うのですか!きっと何か別の理由が・・・毒を盛られた事実を無かった事にする必要があったに違いありません!!」
「マーガレット!父上だけでなくお前まで懐柔されたのか!あいつは家を再興するために父上に近付いたのかもしれんのだぞ!!」
「何を言っているのだデカルド。お前は父上の説明を聞いていなかったのか?彼が父上に近付いてきたのではなく、父上が彼を呼んだのだぞ」
「それがあいつの策だったのかもしれないではありませんか兄上。大体何処の世界に何の見返りも無く数千万もの寄付をする平民が居ると言うのですか!!」
「お兄様は何も解っていません!使徒様の弟子と言う事が如何言う事か全く理解していないではないですか!」
「そうだ、彼は〝弟子〟であって使徒殿ではない。使徒殿であれば有り得る事だが、その弟子であっても使徒殿本人とは別の存在なのだ」
「やっぱり何も解って無いのですね・・・使徒様は創造神様に領地を賜ったのですよ?本来ならばメルクリウス聖皇国オクタビス領をマキシマ帝国として独立し、皇帝として教皇聖下と並び立つ事の出来る存在では有りませんか!その弟子であれば爵位なんて簡単に手に入れられる筈です!態々旅をして別の国で下らない謀までして手に入れる理由なんて有りません!!」
「もうよい、其方等そこまでにしておけ。全てが繋がった・・・ヒギンス、誰がマルス殿に毒を盛った?其方は知っておるのだろう?」
「い、いえ、私は・・・・・」
「ヒギンス!其方の主は誰だ!申してみよ!!」
「ぁ・・・お、御館様・・・いえ、エルドラ・バレリー伯爵様に御座います・・・・・」
「なれば汝にもう一度問う。マルス殿に毒を盛ったのは誰か、またその指示を出したのは誰か申してみよ」
「・・・わ、私めに御座います・・・指示を出されたのは・・・その・・・・・」
「ふぅ・・・誰の指示かは言わんでもよい。デカルド、マルス殿が何故逃げたのか良く考えてもう一度申してみよ」
「わ、私は・・・・・この家の、父上の為に・・・・・」
「そのような言い訳なんぞ聞いてはおらん。ベルモンド、マーガレット、其方等は解るか?」
「・・・私には見当もつきません、父上・・・・・」
「・・・・・あ、もしかしたら・・・犯人が解っていて庇ったのかも・・・・・」
「そうだ、おそらくは気が付いたのだ、犯人に。私に気を使ったのか、収穫祭前の目出たい雰囲気を壊したくなかったのかは解らんがな。故に私は其方等を罰する事が出来ん。良いか、命拾いしたのだ、彼に感謝するのだな」
「・・・父上・・・申し訳ありませんでした・・・・・」
「実害が無かったとは言え自らの命を狙った者を庇い助けるか・・・甘いと取るか、寛大と取るか・・・・・何れにせよ謝罪と感謝を伝えねばならんな・・・・・」
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「一人で野宿するのも久しぶりだな・・・街中では初めてだけど・・・・・」
夜空を見上げて呟いた。領主館が気になって訓練に身が入らないし眠れそうも無かった。
パンドラ国は身分の上下が無いから気が付かなかったけど、一般的な貴族の人からすれば平民の僕は差別対象で簡単には信用されないんだった・・・領主様の好意に甘え過ぎた僕のせいでデカルド様にあんな真似をさせてしまった・・・・・
ここまで読んで頂き有難う御座います。




