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昨日と同じで日の出と共に起きて部屋を出て侍女のお姉さんに挨拶をして館を出て屋台で朝食を摂って街の周りを走り始めた。
小麦畑では収穫が始まっていて、農民が手押し車を押して行くとパシュッっと音がして小麦が横に倒れ、別の人が拾って荷車に乗せて行く。
あれが収穫用の魔道具か・・・凄いな、ただ前に押して行くだけでどんどん刈り取られて行く。これなら五日で収穫が終わると言うのも納得出来るな。
街の周りを一周回るごとに遠ざかって行く農民と麦畑を見て、正直五日も掛からないだろうなと感心した。
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「試作三号は如何でしたか?ベルテール様」
「二号と比べればマシにはなったが、やはり反応が遅過ぎるのが気になるな。後は魔力消費もか」
「左様ですか・・・・・やはりもっと効率の良い魔導回路が必要か・・・・・」
「焦るでないぞ。其方等は十分に貢献しているのだ。戦いには使えずとも日常生活の不便は解消されたのだからな」
「ですが・・・・・」
「向上心が有るのは良い事だ。だが焦るな。其方等の代で完成せずとも次代に繋ぎ、慎重に事を進めるのだ。先ずは多くの民に行き渡るように価格を抑える努力をせよ。それが其方の得意分野であろう?」
「畏まりました。四号の開発と共に進めて行きます」
「うむ、頼んだぞ」
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夕方に館に帰り、監視されつつお茶を飲みながら本を読み、夕食に呼ばれて食堂へ。
「マルス殿、収穫を見て来たのであろう?」
「はい。見る間に麦が刈り取られて行く様は圧巻で、収穫の魔道具の事よりも農民達の手際が良くて流れ作業を見ているようで感心しました」
「あの動きは誰が言うでもなく、彼等一人一人が考えた物なのだ。我が領民は優秀であろう?」
「素晴らしいです。効率を求め、長い年月を掛けて無駄をそぎ落として行ったのですね。そう言う点は武術と似ています」
「ほう、武術とはそう言う物か・・・・・」
「マルス様!明日は商業組合に行かれるのですよね?私もお供させて頂けますでしょうか」
「え~っと、僕は構いませんけれど・・・・・」
「お父様、宜しいですよね?」
「ああ、構わんぞ。お前が居た方が滞りなく済むであろうしな」
「はい!マルス様、明日は宜しくお願いしますね」
「こちらこそ宜しくお願いします」
「・・・ふむ・・・・・マルス殿、武術に関しては素人の私が言うのはなんだが、効率を求め過ぎるのは余り良い事ではないぞ。常に余裕が無ければ足元を掬われかねん」
「御助言感謝します・・・本当に領主様は素晴らしいお方です。今の僕にその言葉は何にも代え難い物に御座います」
「そうか。少しでも其方に恩が返せたのならそれでよい」
「お話し中失礼します。御館様、本日王都よりアブリの実が届きましたので、食後にお出ししても宜しいでしょうか?」
あれ?この人・・・壁の中に隠れて僕を監視してる人だ・・・・・
「おお!今年は不作と聞いていた故、食べられぬと思っていたが良くやったぞ!ヒギンス!」
ヒギンスさんか覚えとこう。
「領主様、アブリの実とは?」
「王都の西でしか採れぬ木の実でな、我が国の特産でもあるのだが、今年は虫害で例年の三割程しか採れなかったそうなのだ」
「えっ?!特産品が三割しか採れなかったなんて大変ではないですか!」
「ああ・・・其方が気にしていた畑の魔導具、あれは虫害を減らす効果も有るのだが、生産が追いついておらんのだ。特産とは言え嗜好品故後回しにしていた事が裏目に出てしまったと言う訳だ」
僕に何か力になれないかと言い掛けたが、それは国でする事だと口を噤んだ。
「ぜひマルス殿にも食して頂きたいと思っておったのだ。ヒギンス、例のお茶を共に出すのを忘れるなよ」
「はい、畏まりました」
アブリの実を食べる時用のお茶も有るのか、楽しみだなと期待しながら夕食の時は過ぎて行った。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




