04
町の中央に有るドーナツ状の建物の一角が冒険者ギルドだった。この建物には町役場と商業、鍛冶、服飾ギルドなんかも入っているのだと言う。そして中央の広場は非常時の避難場所になるのだそうだ。
ギルドに入りアインさんがカウンターに居た職員に話し掛けると「奥でマスターがお待ちです」と言われて奥に通された。
「アインさんちょっと待って下さい」
廊下の突き当り、一番奥の部屋の扉をノックしようとしたアインさんを止めた。
「うん?なんだ?今更帰るとか言わんだろうな」
「いえ、室内に人が二人居て、片方が扉の横の壁に剣を構えて隠れてます」
「なっ!な、何故・・・まさか見えるとでも言うのか・・・・・」
僕を試そうとしたんだろうけど不意打ちなんてさせないよ?
「ハァ・・・アインさん、昨日言いましたよね?地上最強の男の弟子だって。この程度の事が出来なければ真羅流師範は名乗れませんから」
「感知系の技能か?だとしても壁越しに・・・・・」
「技能と言えば技能ですけど、アインさんが思っている物とは違うと思います。説明は面倒なんでしませんけど。それで、壁ごと隠れている人を吹き飛ばしても良いんですけど・・・どうします?」
「ま、待て!それはだめだ!・・・済まなかった、試すような真似をして。カインズ、入るぞ。レットは壁から離れておけ」
アインさんが室内へと声を掛けると不意打ちをしようとしていた人が剣を収めて壁から離れて行くのを感じた。
扉を開けて室内へと入るアインさんの後に付いて中に入ると中には四十歳前後の男性が二人居た。椅子に座っている人がギルドマスターのカインズさんで、その後ろに立っている人がレットさんかな?
「初めまして、マルスと申します」
「冒険者ギルド『ノルド支部』のマスターをやらせて貰っているカインズだ」
「私はレット、カインズの補佐をしている」
「そうですか。で、僕に何の用ですか?僕の邪魔をしなければ僕から騒動を起こすような事はありませんけど?」
「まぁ、そう睨まんでくれ。昨夜隊長から話を聞いたのだが如何にも信じられなかったのだよ」
「で、僕を試したと。要件はそれだけですか?それならもう十分でしょうから帰らせて貰いますね」
「待て待て、そんな訳なかろう。取り合えず座ってくれたまえ。レット、地図を」
「はい、マスター」
カインズさんに言われてレットさんが地図をテーブルに広げる。僕は溜息を付いてからカインズさんの正面の椅子に腰かけた。
「昨日君が倒したと言う魔物が何処に居たのか教えて貰えるかな?一日で倒したと言うには種類が多過ぎるので少々気になってね」
「え~っと・・・この地図の縮尺は何分の一ですか?それにこの町の大きさも解からないので教えて貰わないと正確な位置が示せないんですけど・・・・・」
「は?しゅくしゃく?なんぶんのいち?何だそれは?この町の大きさならば外壁を一周するのに凡そ半日と言った所だが・・・・・」
あ、やっぱり距離の単位が無かったか。手書きの地図だし、多分適当な物なんだろうなぁ。
「え~っと、もういいです。東門から街道を東へ、外壁が見えなくなった所から北へ真っ直ぐ言った山の中腹辺りから山頂近くまでの間になります」
移動速度なんて人によって違うんだから基準にならないし、そう言う世界みたいだしこんなもんで良いかな?
僕以外の三人の顔が険しくなる。戴して強い魔物でもなかったし、そんなに警戒する事も無いと思うんだけどなぁ。
「アイン、私の予想進路は北だが、君は如何思うかね?」
「私も北、と言うか北東だと思う。早ければ今夜、遅くとも明朝までには接敵するだろう」
「そうか・・・レット、町長に知らせて来てくれ。直ぐに避難指示が出ると思う。私は冒険者達に北門へ向かうよう指示を出して置く」
「はい、解りました」
「私は衛士隊を北門へ集めておく。マルス、君の力を貸して貰えないだろうか?」
「はぁ・・・話の流れからして大体何が起こるのかは解りますし、放って置く訳にも行きませんから手伝いますよ。その代わり、僕は僕の判断で動くのでそちらの頭数に入れないで貰えますか?」
「まぁ、君は冒険者でもなければこの町の住人でもないし強制は出来んよ。では付いて来てくれ」
と言う訳で、アインさんに付いて北門へと向かう事になったんだけど、これって絶対パンドラさん知ってたよね?
ここまで読んで頂き有難う御座います。